まずは、女性が輝く自衛隊に

女性が輝く日本をつくるための政策として、安倍晋三内閣は女性管理職の増加を掲げる。指導的地位に占める女性の割合を「2020年までに30%程度」にするのが数値目標だ。
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女性が輝く日本をつくるための政策として、安倍晋三内閣は女性管理職の増加を掲げる。指導的地位に占める女性の割合を「2020年までに30%程度」にするのが数値目標だ。2020年までに社会のあらゆる分野で、指導的地位に女性が占める割合を30%以上とする――これは、平成15年に当時の小泉純一郎内閣が決定した目標であり、昨年、自由民主党が総選挙で掲げた政権公約でもある。だが、3割(程度ないし以上)の目標達成は容易でない。

「全上場企業において、積極的に役員・管理職に女性を登用していただきたい。まずは、役員に、1人は女性を登用していただきたい」――今年4月19日、安倍晋三総理はこう、経済3団体に要請したが、いかんせん法的拘束力を伴わない。他方、強制力を伴う立法措置を講じれば、性別により差別されないと定めた憲法(14条)に抵触する。たとえ合憲と解釈されたとしても、実力ではなく「女性だから」登用されたとの批判は残る。

女性が輝く日本といった耳あたりのよい言葉を並べるだけなら意義が乏しい。具体的な数値目標を掲げても、達成できなければ意味がない。

ならば、どうすれば、よいのか。そもそも民間に要請する前に、政府自身の努力で実現できる具体策から始めるべきであろう。そこで以下、目標達成に向けた、ひとつの方策を提案しよう。すなわち、防衛大学校の「女子枠」撤廃である。

最新の募集要項をみると、一般入試に当たる採用試験(前期日程)で、人文・社会科学専攻(文系)の募集数は65名、うち「女子」は15名。理工学専攻(理系)は235名、女子は15名。合計すると300名の募集に対し、女子は30名。つまり1割に留まる。

後期日程に至っては、女子の募集数は「若干名」に過ぎない。同じく、いわゆるAO入試に当たる「総合選抜採用試験」も「若干名」。ともに昨年度の合格者数は1割台に留まる。

同様に、海上保安大学校の合格者数も、女子は1割台に留まる。他方、東京大学以下ほとんどの大学に女子枠などない。善かれ悪しかれ、入試の点数で合否が決まる。この際、防大もそうしてはどうか。これなら、憲法違反の疑義は生じない。むしろ現状こそ、能力が高い女子への差別的な制限枠ではないだろうか。

実際、前期日程(一般入試)で、理工学専攻の倍率を比較すると、男子が8・6%なのに対し、女子は25・9%と、3倍以上も高い。文系女子に至っては、倍率が28・8%に達する。全体の倍率を比べても、男子が10・3%、女子は27・3%。格差は歴然である(平成25年3月現在)。

しかも、男子より女子のほうが、入試の平均点は高いと伝え聞く。もし、女子枠を撤廃すれば、防大生の学力は飛躍的に高まるのではないか。

いや、それでは「防衛女子大学校」になってしまうとの懸念もあろう。女子枠の撤廃など暴論だというなら、せめて政府与党の政策に合わせ、女子枠を3割(程度ないし以上)に拡大すべきではないだろか。

もし、それも無理だというなら、せめて2割に倍増してはどうか。ちなみに、米陸軍士官学校(ウエストポイント)では、入校者の約2割が女性である。

防衛大学校の卒業生は幹部自衛官に任用される。しかも卒業生の相当数が将来、防衛省・自衛隊の指導的地位を担う。退官後も民間で指導的地位に就く者が少なくない。防大の女子枠拡大は、安倍自民党の目標達成に直接寄与する〝規制緩和〟となろう。

防大が変われば、自衛隊が変わる。自衛隊が変われば、海保も変わる、日本が変わる。女性自衛官が輝けば、日本が輝く。まずは、女性が輝く自衛隊に。いかがであろうか。