主体的に休日とる「雇用環境」「ワークスタイル」に欠ける日本社会
先日、8月11日を「山の日」とする祝日法改正案が衆議院本会議で可決された。今国会中に成立見込みで、2016年から実施される見通しだ。この記事を読んで、祝日の意義とその数について考えてみた。
祝日については、「国民の祝日に関する法律」(昭和23年法律第178号)に規定されており、第1条に『国民こぞって祝い、感謝し、又は記念する日を定め、これを「国民の祝日」と名づける』と書かれている。現在、1月1日の「元日」に始まり、12月23日の「天皇誕生日」まで年間15日の祝日がある。
今回、祝日に加えられる「山の日」は、『山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する』という目的で制定される。「海の日」は『海の恩恵に感謝するとともに、海洋国家日本の繁栄を願う』とあり、「緑の日」は『自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心をはぐくむ』とある。
いずれの日も自然に恵まれた国土に暮らすことに感謝の念を表わす祝日だが、国民の価値観が多様化する中、「国民の祝日」として国民全体がその意義を認識し、本当にその価値を共有できるかどうかが重要だろう。
次に祝日の数についてみてみよう。
日本の祝日は「山の日」を加えると16日になる。これは諸外国に比べるとかなり多いのではないか。OECD諸国をみても、アメリカ10日、イギリス8日、フランス11日、ドイツ9日など、多くの国が10日前後である。しかし、日本は祝日が多いにもかかわらず、OECD諸国の中で長時間労働者率が高く、極めて余暇時間が少ないのはなぜだろう。
それは労働者の有給休暇の取得率が低いことが一因だ。平成24年一年間に企業が付与した年次有給休暇日数は、労働者一人平均18.3日、取得日数は8.6日、取得率は47.1%だ(*1)。旅行会社エクスペディアの調査によると、日本の有休取得率は世界最下位(*2)で、取得率の向上が大きな課題となっている。
そこで「国民の祝日」を追加し、労働者の余暇時間を増やそうという政策意図かもしれないが、国の主導で休日を一斉に取得すること自体が成熟社会の在り方として望ましいことなのだろうか。
また、日本社会の幸福度を低下させる主たる要因のひとつが、ワーク・ライフ・バランスの欠如であるが(*3)、その解決には個人が主体的に休日をとれる就労条件の改善が必要だ。有給休暇の取得率を高めるためには、仕事のマネジメントスキルや労働生産性の向上も欠かせない。
日本の祝日数が多いことは、個人が主体的に休日をとることが難しいことの表れではないだろうか。我々は成熟した時代の新たな日本の「雇用環境」と「ワークスタイル」の実現を目指さなければならない。
私には「祝日過多社会」はこのような日本社会の現状に対し警鐘を鳴らしているように思えてならない。
株式会社ニッセイ基礎研究所
社会研究部 主任研究員
(2014年5月19日「研究員の眼」より転載)
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