「仕事」を3つの要素から考える/もしくはフリーランスに必要な資質について

およそ「仕事」と呼ばれる経済活動は、大きく三つの部門に分解できると思う。すなわち、ビジネス部門、クリエイティブ部門、コーポレート部門だ。この3つの仕事を1人でこなせなければ、フリーランスとして働くのは難しい。人間は、分業すればするほど作業効率が高くなる生き物だ。だから多くの場合、「会社」を作って、少しずつ手分けして事業を運営している。
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 およそ「仕事」と呼ばれる経済活動は、大きく三つの部門に分解できると思う。

 すなわち、ビジネス部門、クリエイティブ部門、コーポレート部門だ。この3つの仕事を1人でこなせなければ、フリーランスとして働くのは難しい。人間は、分業すればするほど作業効率が高くなる生き物だ。だから多くの場合、「会社」を作って、少しずつ手分けして事業を運営している。

 ビジネス部門とは、売上げを伸ばして事業を大きくする仕事を指す。いちばん分かりやすいのは営業部隊だろう。より多くの人脈を広げ、商機を見逃さずにすばやく飛びつき、会社の売上げに貢献する。それがビジネス部門だ。渉外活動だけでなく、広告宣伝活動もここではビジネス部門に加えたい。

 クリエイティブ部門とは、端的に「ものを作る仕事」のことを指す。デザイナーやイラストレーターだけでなく、プログラマ、エンジニアなども、ここではクリエイティブ部門に含めたい。会社の業務として何かモノを作っていたら、それはクリエイティブ部門の仕事と言える。工場のライン勤務者であっても、ここではクリエイティブ部門に含めていいだろう。

 コーポレート部門とは、端的に言えば「回す仕事」だ。経理や財務、労務、CSRなど、現代社会のなかで「会社」が存続するための仕事を、ここでは「コーポレート部門」に含めたい。

 これら3つの部門は仕事の質から見た分類であって、実際の部署とは関係がない。

 たとえば広報の仕事を考えてみると分かりやすいだろう。会社の名前を広めるためはビジネス部門的な渉外活動をするし、広報記事を書くのはクリエイティブ部門の仕事だ。また、財務という部署は一般的にコーポレート部門だと見なされるが、資金調達の際には極めてビジネス部門的な仕事をする。もっとも有利な資金提供者を見つけて、人間関係を構築し、契約書に判を押させる。

 コーポレート部門の仕事の花形といえば経理や労務だ。しかし、会社が会社として運営されている限り、どんな部署でもコーポレート部門の仕事からは逃れられない。

 3部門のいちばんの違いは、その目的にある。

 ビジネス部門の目的は、第一に売上げであり、第二に利益だ。対して、クリエイティブ部門の目的は「よりよい製品/サービスを提供すること」であり、コーポレート部門の目的は事業の安定運営だ。

 三つの部門は、目的の違いによりしばしば衝突する。ビジネス部門の仕事に従事する人は、ときには顧客満足度を下げてでも売上げを伸ばそうとする。クリエイティブ部門は、その逆だ。そしてビジネス部門とクリエイティブ部門のどちらにとっても、コーポレート部門の仕事はうっとおしい邪魔者になりがちだ。

 部門ごとに仕事のやり方が異なるため、意思疎通に問題が生じやすい。コミュニケーション・コストを下げるには、お互いの違いを理解することが肝要だ。それぞれの仕事の目的を理解するだけで、仕事がちょっとだけ進みやすくなるかもしれない。

 個人的な経験から言えば、フリーランスで成功している人は上記3つの仕事をそつなくこなす術を知っている。エンジニアにせよ、クリエイターにせよ、まずクリエイティブ部門の仕事ができるのは当然だ。加えて、自分を売り込む手段に長けていたり(※ビジネス部門)、会計や税務についてもかなりの部分まで自分1人でこなしてしまう(※コーポレート部門)。

 そして普通の会社員として生活する場合、3つの部門のどこに自分の適性があるかを理解しておくとしあわせになれる、と思う。

(2013年10月25日「デマこいてんじゃねえ!」より転載)