賀正 でございます。
2013年を始めるに当たって、2012年を振り返るブログを、1年前に記しました。
2012年はぼくにとって、新機軸の年でした。ネット炎上対策「ニューメディアリスク協会」、「オープンデータ流通推進コンソーシアム」、「ソーシャルゲーム協会」(JASGA)の設立。10年目を迎えた「CANVAS」の新体制発足、「デジタルえほん」の実質離陸。J-Pop海外展開の「Sync Music Japan」や「海外マンガフェスタ」の開始。
ネット、キッズ、ポップの3本柱について、いずれも矢継ぎ早に新しい軸を植え立ててまいりました。
2013年は、その土台作りと定着に努めました。だから、あまり派手さはありませんが、重厚な年になりました。もちろん、ネット選挙やらクールジャパン対策やら、新しい動きもありましたから、新機軸も加わっています。展望かたがた総括してみます。
1 ネット
デジタルサイネージは恒例「デジタルサイネージジャパン」に13万人を超える来客をお迎えし、産業として深化。IPDCは地上波放送だけでなくケーブルにも広がりをみせ、スマートテレビとの融合が進んでいます。V-Lowマルチメディア放送も商用化が間近となりました。東京五輪に向け、マルチスクリーン+クラウドネットワークの新企画を構築していきます。
これらメディア界の課題は提供から利用へのシフトが鮮明になりました。炎上、オープンデータ、ネット選挙、デジタル教育というテーマです。
ネット炎上は、コンビニやピザ屋の冷蔵庫入りなどバイトテロと呼ばれる事案が多数勃発、民事だけでなく刑事に発展する事態となり、新局面を迎えました。ニューメディアリスク協会の活動も拡充しています。
オープンデータは政府が世界一の利用環境を目指すことを鮮明にし、2年目にして産官の取組が本格化しました。もはや具体的な成果を出すべき段階となっています。
ネット選挙に関しては、参院選での解禁に当たって政府・総務省のキャンペーンに協力し、啓発ビデオの審査をしたり、啓発アプリのコンテストを開いたりしたのですが、同時にその課題も抽出し、今後の制度改正に活かす所存です。
2 キッズ
設立10年を経たCANVASが総務大臣表彰を受けたり、参加者10万人を超える世界最大の子ども創作イベントに成長した「ワークショップコレクション」がグッドデザイン賞を受賞したりするなど、石戸理事長を先頭とする活動の評価は定着してきたと感じます。
Googleエリック・シュミット会長と石戸さんとの共同会見により、プログラミング教育にも力を入れることとなり、MITメディアラボでの研究を契機に始めた運動が、ここにきて原点を見つめ直しながら新展開に転じる時期に来たと感じます。
デジタルえほんは、これも石戸社長のもと躍進しています。DNPとともにプロデュースした「デジタルえほんミュージアム」が市ヶ谷にオープン。tap*rap へんしん展、ふねくんのたび展、ことばともじ展などを開催しています。ARを駆使した「魔法のえほん ピーターパン」もリリースしました。
デジタル教科書は2012年、知財計画で正規化のための法改正を「検討する」と定められたのですが、2013年は一歩進み、「必要な措置を講ずる」と明記されました。ところが政府はまだ検討も始めていません。実証予算も仕分けに遭っています。
一方、大阪市、荒川区、武雄市の3自治体が2014-15年度にかけて小中学生に一人一台タブレットを配布する方針を表面。自治体から動き始めました。国会でも超党派の勉強会が発足、政府をプッシュしています。自治体と国会を両輪に、政府というエンジンを働かせる構図。ぼくらはそこにガソリンを供給しています。
3 ポップ
「ソーシャルゲーム協会」の活動は、コンプガチャ対策から青少年の安心利用対策へとシフト。74社の会員と活動しています。音楽業界と連携して海外向けデータベースとプラットフォームを構築する「Sync Music Japan」は、1800組、ほぼ全てのJ-Popアーティストの情報を網羅するに至りました。ぼくのKMD研究室が請け負っています。
第二回「海外マンガフェスタ」は、松本大洋さんやちばてつやさん、駐日フランス大使がお越しになり、文科省マンガアニメ人材育成事業もカリキュラム開発に駒を進めました。
今年のハイライトは「Tokyo Crazy Kawaii Paris」。政府クールジャパン政策と連携する形で、ポップカルチャーやファッション・食と組んで海外展開を図る試みを始めたものです。ぼくが実行委員長で、稲田朋美クールジャパン担当大臣にもパリにお越しいただきました。
さて、2013年は政府の仕事に変化がありました。設立10年を迎えた知財本部は、過去10年を総括しつつ、今後10年を展望する「知財ビジョン」を策定、そのダイジェストを閣議決定することとし、その座長を仰せつかりました。また、クールジャパン戦略の一環として「ポップカルチャー分科会」が設置され、その議長として、短期的な輸出戦略を練りました。
合わせて、IT本部の規制制度改革分科会にも参加しました。こちらは座長ではありませんが、かねてから知財本部とIT本部の結合を主張していただけに、こちらで成果をあげることはぼくにとっては重要でした。
このように内閣官房・内閣府での仕事は重みを帯びましたが、おかげさまで総務省、文科省、経産省の委員会仕事は1、2件に減少したので、その分、他の領域に割り振りました。
その一つが学会。ぼくは産官との連携を重視していて、アカデミズムとの関わりは薄いのですが、唯一理事を務める国際公共経済学会の総会を実行委員長として「2025年のICT」なるテーマで差配しました。ま、これは特例。
対外プレゼンの面では、本は知財戦略・クールジャパン政策を描いた「コンテンツと国家戦略」を上梓したのをはじめ計4冊。テレビはNHKクールジャパン、とくダネ!、有吉ゼミほか月イチペースで例年並み、寄稿も日経「経済教室」その他例年並みです。
ただし、Paid Media、Owned Media、Shared Mediaの活用ポートフォリオは変わってきました。読売新聞(紙)、音楽事業者協会メルマガ(メール)、Yahoo!個人・日経BPコラム(ウェブ)などの新規連載を始めたほか、自分のブログをアゴラ、BLOGOS、ハフィントンポストに転載してもらいつつ、Twitter、FacebookなどShared Mediaでの共有も組み合わせるなど、拡散の手法を広げてみました。
このあたりは、2014年、さらに仕掛けてみたいと思います。
(この記事は1月1日の「中村伊知哉Blog」から転載しました)