ねじれ国会といいますが、ねじれているのは自民党も民主党も同じです。自民党が勝った勢いに酔ってか、はや公共事業だ、官僚制度改革は反対だ、TPP反対だと、再び引きこもりの国家社会主義経済を堂々と主張する人たちもでてきています。普通で考えれば、それは成長戦略とは矛盾します。民主党は「労組系」と「非労組系」がうまく噛み合っていません。ひとつの党のなかに民主社会主義と新自由主義的な相容れない勢力が呉越同舟しています。そもそも考え方が根っこから相容れないような人の選挙互助会となっている政党を選ぶというのはここまでくるとはたして民主主義なのかと疑問に感じます。
最近は維新の会までねじれてしまい、その埋め尽くせない溝を埋めようとしたのですが、どだい無理な話です。しかし、今回の参院選の民主党の完全敗北と維新の会の失速は、野党再編の動き、またこういった不健全なねじれを解消する動きを誘発する絶好の機会ではないでしょうか。
みんなの党がもとの13議席から18議席に増えたので、あまり取り上げられていないようですが、党の勢いを示す比例区の獲得票数を見ると、2010年の参院選での得票数は794万票で7名が当選、今回の参院選では、維新の会の636万票に及ばない476万票で当選も4名と減らし人気が落ちてきていることがうかがえます。みんなの党も凋落が始まっているのです。
政局には興味がありませんが、野党で当然のように面白い動きがでてきています。どうなって行くのでしょうか。再編前夜の動きとなるのか、ウヤムヤで終わるのか、どちらでしょうか。
どう考えても、所属する党の違いよりも、党は違っても価値観や政策、また体質的にも近い人たちが多いというのが現実です。政党内のねじれの解消は政権を握っている与党からは、その動きはでてきません。
この政界のねじれを解消するためには野党が鍵を握っています。とはいえ、与党と対立するための野合では、現実に残っているねじれは解消出来ません。
野合ではない、野党再編の動きをつくりだすキャスティングボードを誰が握るのでしょうか。もはやかつての小沢さんの豪腕は期待出来ません。しかし、今手を上げた人が、今後の日本の政治を変える可能性を持つのではないでしょうか。
もはや「保守」とか「革新」といった55年体制の対立軸に意味がなくなり、日本の姿やカタチをどの方向に持っていくかのビジョンで対立軸が生まれてこないと、現実的ではありません。それが争点になってくれば、自ずと自民党も一枚岩とはいかなくなってきます。
なにがでてくるか分からない闇鍋のような政党を選ぶ選挙制度もどうなのかと思いますが、一票の格差すら解消できない国会議員に、小選挙区比例代表制の選挙制度を変えるというのは、期待するほうが無理です。
新しい強い野党が生まれること、政策で自民党が内紛を起こすこと、そこで離合集散が起これば、ダイナミックな政治の流れも起こってきます。そうなると日本の民主主義もすこしは成熟してくるだろうと期待したいところです。
(※この記事は、2013年07月24日の「大西 宏のマーケティング・エッセンス」より転載しました)