「それでもクールか!?」 レポートその1

クールジャパンという言葉が生まれて10年。政府、内閣官房に知財本部が置かれて、これも10年になるんですね。政府はそのコンテンツの政策を推進してコンテンツ立国の旗を掲げています。しかし、国内のビジネスに目を転じると非常に苦しい状況にあります。
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2013年10月11日、慶應義塾大学KMDポリシープロジェクトがニコ生番組「それでもクールか!?」をスタートさせました。「クールジャパンを斬る!」がテーマです。

初回は、総論と題してゲストお二方をお招きしました。稲田朋美クールジャパン戦略担当大臣とホリプロの堀義貴社長。政府と民間、官と民のツートップです。

その模様は以下のURLでご覧いただけますが、ちょいとかいつまんで、5回に分けてレポートしましょう。

中村

クールジャパンという言葉が生まれて10年。政府、内閣官房に知財本部が置かれて、これも10年になるんですね。政府はそのコンテンツの政策を推進してコンテンツ立国の旗を掲げています。更にコンテンツだけではなくてファッション、あるいは日本食、観光といったものを合わせて、複合的な政策に拡大をして、全部海外に持って行こうとしています。海外展開を深めていこうというのが今の政策の方向性です。

安倍政権になって、そこに力を強く入れて、所謂クールジャパン基金をつくりました。正確に言うと海外需要開拓支援機構というものです。政府として500億円もの巨額なお金を投じて、海外展開を支援します。そのための法律も通しました。政府としても本気になっています。

しかし、国内のビジネスに目を転じると非常に苦しい状況にあります。コンテンツ産業は全体的に見て縮小傾向にあるんですね。

そうした状況をどう見るかというのが今日のテーマで、テーマを4つ用意しました。

1)クールジャパンってのは何なの?

2)日本現状はどうなっている?

3)日本の政策はどうなの?

4)じゃこれからどうするの? 

では、早速最初のテーマ。クールジャパンとはなんだ?

稲田大臣

私も最初クールジャパン戦略担当大臣になった時に、よく大臣室に来られる方がクールジャパンとクールビズをごっちゃにされて、クールジャパン戦略担当大臣の部屋だからきっと涼しいね、とか、クールジャパンで温暖化に資する建設資材とか言う方もいらっしゃったんですけど、クールジャパンってかっこいいとか素敵って意味ですよね。自分がクールって思うことじゃなくて、外国人からクール、素敵って思ってもらえるっていうのが戦略なのかなと思っています。

日本人が思うクールと外国人が思うクールはちょっと違っていて、麻生大臣が仰っていたけど、外国人から見たら鬼押出しにある自動販売機がクールなんだ、みたいなね。そういう外国人から見たクールってのをやっぱり意識しないといけないって思います。

堀社長

自分がクールだって言って回るってことはまずないわけです。恐らくクールブリタニアの流れで来ていると思うんですけど、英国病って言われていたイギリスの80年代は本当に街も暗かったですよ。で、普通に街中でテロがあって経済も逼迫して、そこを明るく変えていこうとか、食べ物を美味しくしようとか、観光地として人を呼んでいこうっていう政策があったお陰で、歴史的な街も非常に斬新なデザインの建物ができたし、食べ物は美味しくなったし、映画産業も良くなったし、音楽も良くなった。

その流れで、クールジャパンって話になってると思うんです。じゃあ現地のニーズとして、何をクールかってことをまず日本の側が知っていないと、なんでもかんでも売り込むのは難しいと思います。ニーズに合わせるということと現地化するということですね。

中村

マンガ、アニメ、ゲーム、音楽もあれば映画もあればファッションもあれば食べ物もある。どの辺りにチャンスや強みがありますか。

堀社長

20年以上前から演出家の蜷川幸雄さんは、シェイクスピアの演劇を本場イギリスの地でやってきて、蜷川って名前は今となってはロンドンに住んでいるイギリス人の間では大変なブランドなんです。まさに蜷川幸雄さんはクールジャパンだったわけです。

その前も日本の工業製品も含めてクールだったと思うし、ただそれが現在アニメーションであったり、ビジュアル系のロックであったり、ファッションであったりします。それも何故っていうのをちゃんと見極めないといけないんじゃないかなと思います。

稲田大臣

やっぱりコンテンツですね。マンガやアニメは世界で人気ですよね。今回のクールジャパン戦略も、ファッションや食などいろいろありますけど、全部をいっぺんに売りだしていくっていう点が重要かなと思っています。これがクールだっていうことを国で決めるのではなくて、それぞれのクールっていうのを発信していこうとする国民的な運動のようなイメージでとらえていいんじゃないでしょうか。

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中村

先月大臣とパリにご一緒しまして、Tokyo Crazy Kawaii Parisっていう、コンテンツと食べ物とファッション、色んなものを日本から持って行こうっていうイベントをやってきました。大臣がゴスロリ姿で会場を練り歩かれて、あの人だれ、ってフランス人に結構聞かれたんですけれど、大臣だよって教えたら、ダイジンかわいいー!って叫んでました。多分、大臣って意味がわからないでみんな見ていたと思います。評判はどうだったんですか?

稲田大臣

パリでは全然クレイジーでもなんでもなかったというか全然おかしくない。みんなが楽しむ、日本の人もフランスの人もパリジェンヌもみんなして楽しむってイベントで、中村先生も和服着て来られて色んなブースを回って、すごく楽しかったし、私はそこで一人だけ黒いスーツを着ているってよりもずっと良かったと思うんです。まあ日本に返ってくるとちょっと散々な事を言われたりですね、娘にもママがクレイジーよ、って言われたんですけど(笑)

中村

それは褒め言葉じゃ?

稲田大臣

そうですかね?そうやってみんなで参加するっていう意味からは良かったと思ってます。

中村

マンガ・アニメが前面に出て、コスプレが多いかと思っていたんですけど、それよりもロリータが多かったですね。ロリータって元々はヨーロッパの文化を日本の若い人たちが発展をさせていって、日本が本場になったのが逆に向こうに出て行っているものですね。高級な和食よりもたこ焼き屋さんに列が並んでいるというのも面白かった。

稲田大臣

あと私も串かつとラーメンを試食させて頂いたんですけれども...。

中村

いや、がっつり完食していたと思います(笑)。

稲田大臣

そういうのがとても受けているってのが、ちょっとびっくりしましたね。

中村

まだまだぼくたちが気づいていない日本の良さ、クールなものが海外に出ていくチャンスがあるって感じがしましたね。

(つづく)

(この記事は11月13日の「中村伊知哉Blog」から転載しました)