崩壊に近づくナイジェリアの素顔――腐敗した政府はここまでする

BRICsに続くNEXT11、VITAMINのひとつと持ち上げられる西アフリカの産油国ナイジェリアですが、100人規模の死者が出たテロや事故があっても、日本ではほとんど報道されません。外からは窺い知れない地域大国の素顔を、ここでお伝えしていきたいと思います。
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BRICS(※1)に続くNEXT11(※2)、VITAMIN(※3)のひとつと持ち上げられる西アフリカの産油国ナイジェリアですが、100人規模の死者が出たテロや事故があっても、日本ではほとんど報道されません。外からは窺い知れない地域大国の素顔を、ここでお伝えしていきたいと思います。

詐欺が多い、治安が悪い、空港のイミグレ(出入国管理)で賄賂を要求する、路上で警官が賄賂を強要する、といった危険情報はネットで見かけますが、ナイジェリアはそもそも政治家や政府機関がまるで犯罪組織と化しているのです。

政治家の不正蓄財は中国を上回るほどで、州知事で200億円前後、元大統領は兆円単位。インフラ整備そっちのけで、報道によると上院議員は歳費2億円、議長は6億円だそうです。おかげで道路はえぐれまくり、大穴があいても何年も放置され、電気もほとんど来ません。

日本が2000億円以上の債務を軽減した時期にも、裏では大統領が1兆円以上の電力予算を使途不明にしていました。こんな産油国ですが、日本は現在も小学校の校舎や井戸、予防接種費用などを寄付しています。

ナイジェリア政府は外国からの投資を呼び掛けていますが、税関が盗みを働き、犯人を起訴してほしいと各方面に直訴すれば車で襲撃し、被害者に毒を盛って口封じを図ります。民事裁判で訴えれば弁護士を買収して公判をエンドレスに引き延ばし、家には放火し、ラゴス州政府が後押しをして在庫をすべてかっさらう。身辺を調べ上げ、トラブルを起こして裁判攻めにし、近しい人を罠や刺客に送り込んでくる様は、秘密警察のようです。

ラゴスにバイクと船外機の販売店を持つナイジェリア人の夫ですら、政府の凶悪な素顔に気づかなかったのです。

ビアフラ戦争(1967~1970年)(※4)で大量の餓死者を出して独立し損なった油田地帯のイボ民族は、イスラム勢力に石油収入を持って行かれ、抑圧されて犯罪者や難民を出し続けています。私たちはそこへ組み立て工場を作り、若者に雇用を提供しようとしたのです。

2004年、財務省の認可が下りて、関税の優遇措置を得ることができ、中国メーカーに自社ブランドのバイクを発注しました。それが軌道に乗れば、次は日本メーカーの船外機を導入するはずでした。

ところが、バイクの初荷がラゴスの港に届いてから、様子がおかしいのです。通関手続きが一向に進みません。港での超過料金もかさんできます。

異変を察知した夫が東京からラゴスに戻ると、「関税の優遇措置は取り消された。追加で213万ナイラ(当時のレートで200万円強)払え」という通達が税関から出たと、通関士が言ってきました。税関に確かめに行くと、そんな通達は出ていません。詐欺だったのです。

その時期、妙に地方での結婚式など行事に招待されましたが、全て断りました。すると、式後に新郎が蒸発したというのです。我が家に出入りする独身女性にアプローチし、金に物を言わせて結婚に持ち込み、ラゴスから夫を遠ざけようとした人たちがいたのです。

目的は、留守中に空のコンテナを配送し、予め買収したマネジャーに書類にサインさせ、配送後に盗まれたように演出するためでした。

2005年12月末の夕方、コンテナがようやく配送されましたが、通関業者は鍵を開ける前にまず書類に受け取った旨のサインをするよう懇願してきました。何やらクチャクチャ噛んでいます。ナイジェリアにはチャームという媚薬のようなものが各種あり、相手の判断能力をなくすと信じられています。どうも噛んでいたのはその一種のようでした。

サインを拒否して積荷を確認し、夜遅く2つ目のコンテナを開けると、中身がごっそりなくなっていました。通関業者の姿は見当たりません。

立ち会っていた中国メーカーの駐在員の目には、涙が光っていました。