不思議の国ニッポン 中国で「スゴすぎる」「どうしてここまで?」の論調しきり

2000年を過ぎたころから、中国で日本人の責任感、秩序重視などが注目されるようになった。日本の繁栄の基礎になったのは日本人の考え方や行動様式との見方が強まり、「中国が発展するためには学ぶ必要がある」との論調が強まった。
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View of man drinking coffee in front of Mt. Fuji at sunrise.
Steve West via Getty Images

中国人の多くはしばらく前まで、日本がアジアでいち早く近代化に成功した先進国であることは認めても、その理由としては「西洋文化の吸収に巧みだったから」程度の認識だった。日本人の発想や行動様式に注目することは少なかった。

ところが2000年を過ぎたころから変化した。日本人の責任感、秩序重視などが注目されるようになった。日本の繁栄の基礎になったのは日本人の考え方や行動様式との見方が強まり、「中国が発展するためには学ぶ必要がある」との論調が強まった。そのためか、「中国と異なる日本の特徴」の理由や効用を考える文が多くなった。日本人としては「なるほど、そうかも」と納得することもあり、「勘違いでは?」と思ってしまうこともある。

中国人にとって「不思議なる日本」の種は尽きない。生活面ではまず「家に入る時、靴を脱ぐのはなぜ」だ。人民日報系の人民網は「高温多湿なので日本では水虫が多いため、家の中では(足の)換気のためにスリッパを用いる」、「長期にわたり畳の部屋に布団を敷く生活習慣があった。床の清潔さを保つため」などの理由を挙げた。

日本人が外出時の足の蒸れに悩まされるようになったのは西洋風の靴を履くようになった明治以降なので論法に無理があると思えるが、とにかく懸命に考えていることは伝わってくる。

経済関連の情報を多く扱う華訊財経はさらに、木造建築の日本家屋では、雨に濡れて湿った靴で部屋に入ると、壁などにカビが生えやすいとの見方も示した。

「屋外にゴミ箱が少ないのになぜ清潔なのか?」との疑問も強い。大手ポータルサイトの捜狐は3月12日、中国人リポーターが大阪市内で日本人の通行人にインタビューした映像ニュースを掲載した。

ゴミが出てもゴミ箱がなかったらどうするのかとの質問に、日本人は異口同音に「ゴミが出たら持ち帰って家で捨てる」と回答。「ゴミ箱があれば街がかえって汚くなる」、「以前はこのあたりも汚かった。きれいにすることが習慣になった」と説明する人もいた。リポーターの日本語は流暢で、日本滞在経験が長いことをうかがわせるが、改めて驚いてみせた。皆の意識の持ちようで街の清潔さは保てると訴えたかったようだ。

中国人にとって、日本の若い女性が寒い冬でもミニスカートを好むことも不思議のひとつだ。ポータルサイトの正北方網は、日本の女性が外観に非常に気をつかうと主張。学生でも化粧なしで学校に顔を出すのは教師にとって非礼だと考えられているとし、日本の女性は「食事はしなくてもシャワーをしないことは許されない」と論じた。

一方、ニュースサイトの中金在線は、日本人は歴史的にも肌を露出する習慣があり、近代化の過程では若者には薄着をさせるべきとのフランスの教育思想が導入されたと指摘した。中国では、寒い季節に厚着をさせすぎる習慣が子どもの体を弱くしていると指摘する人も珍しくない。日本の子育てに学ぶべきとの意味も読み取れる論調だ。

社会問題では経済情報サイトの匯金網が「中国人は日本製品ボイコットをする。日本人はなぜ中国製品のボイコットをしないのか?」と題する文章を掲載した。

まず、中国ではしばしば日本製品ボイコットが発生していると論じた。しかしアップル社のiPhoneでは日本製部品のコストが33.9%で国別では最高と指摘。中国製携帯の「小米」でも、部品は基本的にソニーやシャープ、JDIなど日本のメーカーに頼っていると紹介し、ボイコットはそう単純にはできないと論じた。

一方、日本ではすでに中国製品であふれている状態で、日本の消費者は安くて品質が向上した中国製品を歓迎していると主張。日本のメディアが中国製品がなければ生活が成り立たないと紹介しているとして「ボイコットするのは無知を示すだけ」と論じ、中国には「新しくよい国産品を作ることに精力を集中することが、何にも増して重要」との考えを示した。

その他にも、日本と中国の違いについての発表は数多い。日本の技術については「人材育成の重視」や「伝統的な匠の精神」が基盤にあるとの見方が主流になった。また、駅構内や新幹線など列車内の表示の親切さの指摘も多い。「言葉が分からなくても理解できる」ように示すのが、日本のサービス精神と称賛。飲食店の外に展示されている調理品のサンプルも「注文に困ることがない」、「展示されている料理と実際に出てくる料理は全く同じ」と、やはり称賛の対象だ。

中国で発表される日本人や日本社会を紹介する文章の大部分は、日本を称賛するものだ。ただし「われわれも意識の持ち方と実際の行動によって日本と同等か、それ以上にすばらしい社会を築けるはず」との主張が目立つ。個別の「日本観察の結論」については異議を唱えたくなる場合もあるが、相手のよさを認めた上で、自らを高める参考にしようという精神は極めて健全なものと言えるはずだ。