家は余ってるから買う必要がない、というのは本当? 慎重派のファイナンシャルプランナーに聞いてみた。(シェアーズカフェ・オンライン編集部)

4月15日、総務省が公表したデータは少子高齢化、人口減少をはっきりと示していました。人口減少が進む一方で住宅ローン減税を始めとして各種優遇措置もあり、家はどんどん建てられています。
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前年比で人口が約21万人、0.17%の減少、65歳以上の高齢者が人口に占める割合は25.1%。

4月15日、総務省が公表したデータは少子高齢化、人口減少をはっきりと示していました。人口減少が進む一方で住宅ローン減税を始めとして各種優遇措置もあり、家はどんどん建てられています。ここから出てくる答えは、将来家が余るという事......。

首都圏の空室率が20%に達しようとしている状況で、果たして家を買う意味はあるのでしょうか? 住宅購入で「慎重派」を自認するファイナンシャルプランナー(FP)の中嶋よしふみさんに話を聞いてみました。

◆家は本当に余るのか?

― 最初にずばり聞きますが、将来の日本は家余りになりますか?

中嶋よしふみ(以下、中)「なりますね、確実に。このまま何の対策も打たなければ、2040年には日本全体の空室率が40%を超えるという試算を野村総研が公表しています。空室率が上がれば治安が悪化したり、地域経済が地盤沈下したり、結果的にインフラも維持できなくなります。これによって全国で無人化する地域が沢山生まれます。これは国土交通省の試算です」

― これから家を買うのはやめた方が良い、ということですか?

中「空室率がそれだけ下がれば家賃にも下落圧力は加わりますから、そういう意味では持ち家でないと住まいを確保できない、という状況はほぼ無くなると思います。ただ、家余りという言い方はあまりに大雑把です。総数で余っているからと言って、50年後に丸の内の不動産の価値がゼロになるとか、銀座の一等地がタダ同然になっているとか、それはちょっとありえないですよね」

◆民間主導のコンパクトシティ化が急激に進む。

― 地域によって異なるということですか?

中「二極化が進むと思います。人口が減れば元々人口密度が薄い場所がまずはより苦しくなって、商売が成り立たなくなったお店や病院は撤退するでしょう。すると移動出来る人は不便な地域から逃げ出して便利な地域に移りますよね。つまり今の時点で人が少ない場所は人口減少に拍車がかかるわけです。その逆に人気地区にはより人が集まります。結果としてコンパクトシティは人口減少とそれに影響を受けた企業活動によって急激に進んでいく、と考えています。」

※コンパクトシティ......市街地のサイズを小さくすることで都市機能を集中させ、効率的な町作りによって各種インフラの維持費を低く抑える事等を目的とした都市政策。

― 本当にそうなりますか?

中「あくまで予想ですが、もちろんそうならない要因もあります。特に賃貸は不透明な要素が非常に多いんです。不動産価格は株価のように大きく上下しますが、家賃は価格の硬直性が海外と比べて異常に高いので、デフレになってもほとんど下がっていません。今後家余りになっても、家賃はそこまで下がらない可能性はあります。なんでそんな市場原理に反した事が起きるのかというと、土地は相続で優遇されるので、節税ツールとして使われている側面も大きいんです。税金で優遇される事が目的ですから、賃貸に出してしっかり儲けよう、という大家ばかりではないという事です」

◆土地の有効活用が進まない理由。

― 家余りが確実なら家賃が大きく下がっても良さそうですが、あまり下がっている印象はありません。

中「日本の法律では入居者の権利が強いので、モンスター入居者を入れて家賃未払いなどの問題が起こるくらいなら空室で良い、という大家も少なくありません。空室が長期間にわたっても家賃を下げない大家は多いと思います。あとはこれが一番のポイントだと思いますが、便利な場所にある家は価格も人気も高いんです。新築マンションが即日完売なんて事も普通にあります。代官山みたいな人気地区のマンションは中古のファミリータイプで7000万円とか8000万円とかはザラですし、築30年のマンションが家賃25万円といった価格設定も普通です。こういう所では需要が多いわけですから、家余りなんて話はほとんど関係ありません。まさに二極化です」

― 築30年で25万円!酷いですね。

中「酷いというか、土地の有効活用が進んでない事も原因です。日本は国土が狭いから土地の値段が高いと誤解してる人がいますが、実際には地方とか山奥の土地は安いですよね。問題は都市部の便利な場所が有効活用されていない、具体的に言えば高層化されていないことが原因です。建築基準を緩めれば実質的に土地が増えるわけですから、史上空前の規制緩和になるはずです。もちろん、様々なルール整備が必要なのでそんな簡単な話じゃありませんが」

― 先ほどコンパクトシティ化という話がありましたが......。

中「コンパクトシティ化は急務です。広く薄く住まわれると、今後人口減少が進めばインフラ整備などのコストに国もインフラ系の企業も到底耐えられません。かと言って強制移住は簡単に出来ません。先ほどの高層化も高層ビルの方が税金で優遇されるなど、インセンティブを与える形ならばコンパクトシティ化が進めやすいと思います」

◆有効活用で土地の価格は上がる?!

― 高層化が可能になってマンションの供給が増えると土地の価格が下がりそうですね。景気が悪化しないと良いですが......。

中「これをやるとかえって土地の値段は上る可能性もあります。大雑把に言うと今まで5階建てのビルしか建てられなかった所に10階まで建てられるようになれば、ざっくりと価値は2倍になるわけですから。ただ、供給される部屋は増えるので、一室あたりの価格は下るかもしれません。本当に雑な計算ですが、一室の価格が75%になる一方で供給可能な室数が2倍になれば、5階建てなら100☓5=500の価値だったものが、10階建てだと75☓10=750、と土地の価格と部屋の価格が逆に動く可能性があります。実際には土地と建物の価格を考慮しないといけないのでもっと複雑ですが、少なくとも需要の高い地域は高層化によってこういった効果が見込めます。これなら土地持ちの人もこれからマンションを買いたい人もハッピーです。すでにマンションを買った人はあまりハッピーではないかもしれませんが......」

― 家余りの話のはずがどんどん家を建てろという話になっていますが......。

中「都心部や人気地区など需要の高い場所の家は足りないんです。でも便利じゃない場所の家や耐震性など性能の低い家は余ります。2極化はシンプルに言うとそういう事だと思います」

◆購入予定の方に向けた3つのアドバイス ~家賃はもったいなくない?~

― 最後にこれから家を買う人にアドバイスを。

中「将来価値が確実に残る家、というのは株で言えば確実に成長しそうな企業みたいなもので、すでに価格が高いんです。なので高額な物件を買える人でなければ手が出ません。ではどう考えれば良いかというと、そこに根を下ろす覚悟が出来るまでは無理に買う必要は無いと思います。2極化を見極めるために購入を先送りしても良いわけですし、家余りが加速しそうな場所に住む予定ならば買わなくても問題はないはずです。ポイントは3点です。まずは支払いができるかどうかリスクを見極める、次に今・ここに・この価格で買うことがライフプラン上本当に正しいのかを考える、最後に賃貸と比較して損得をちょっと考える位でいいのかなと。家賃がもったいないという考え方は自分からすればほとんど冗談のレベルです。支払い総額だけで持ち家と賃貸を比較している時点で、支払いの継続性のリスクもライフプランとの整合性も無視しいるわけですから。もったいない、つまり損得ではなく、リスクを考慮した上で『欲しいから買う』と損得とは別の価値観で判断するのが住宅購入では正しい考えです」

― 本日はありがとうございました。

【参考記事】

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【取材協力】

中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー

2011年にファイナンシャルプランナーのお店「シェアーズカフェ」を開業。2012年開設の「シェアーズカフェのブログ」はFPとして日本一のアクセスを誇る。2013年は年間アクセス140万PV、ヤフートップに4回掲載。

保険の販売や住宅ローンの仲介は行わず、レッスン形式でサービスを提供し、客観的な立場から純粋なアドバイザーとして活動する。慎重派のFPとして特に住宅購入の相談を得意とする。

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