郵便の戸別配達を廃止するカナダ

日本郵便の国内郵便取扱量は2008年度の212億通が2012年度には189億通に減少している。ここから年賀状を除くと183億通が163億通に減った。取扱量の約15%が年賀状だから、郵便局員に年賀状の販売を強制する自爆営業が頻発するわけだが、そんなことで傾向を転じるのはむずかしい。
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共同通信が「郵便の戸別配達を廃止、カナダ、今後5年間で」と伝えた。記事の元となったのは、今後5年間の行動計画に関する、カナダ郵便公社の12月11日付報道発表である。

報道発表には5つの計画が書かれている。第一は報道された戸別配達の廃止。カナダではすでに3分の2の世帯(過疎地)で戸別配達を廃止し集合型郵便箱が利用されているのだが、これを残りの3分の1(都市部)にも実施して、年額400億円から500億円の経費を削減する(1カナダドル100円で換算)。第二は手紙の料金見直し。シートで購入すると85セントだが、1枚ずつ買う場合には1ドルとする。世帯当たり毎月2枚程度しか購入しないので家計には影響しないが、国家全体では年160億円から200億円の増収となる。

第三は町の商店への郵便局業務の委託。40億円から50億円の節減。第四が業務の効率化。高速仕分け機の導入、集配拠点の集約、燃費の良い配達車両の導入など、効果は100億円から150億円。そして最後は人件費の節減。5年間に15000人程度の自然減が見込まれるので、それを利用して最大8000人の従業員を削減する。

電子的手段への移行が進み郵便市場が縮小する中での生き残り策が、カナダの5か年計画である。翻ってわが国ではどうなのだろう。日本郵便の国内郵便取扱量は2008年度の212億通が2012年度には189億通に減少している。ここから年賀状を除くと183億通が163億通に減った。取扱量の約15%が年賀状だから、郵便局員に年賀状の販売を強制する自爆営業が頻発するわけだが、そんなことで傾向を転じるのはむずかしい。

日本郵政の「グループビジョン2021」を読んだが、戸別配達の見直しはうたわれていない。しかし、取扱量の減少が進めば、近いうちに戸別配達制度継続の是非も俎上に上るだろう。その際、住民によるピックアップが容易な都市部では集合型郵便箱を利用し、過疎地では戸別配達を維持しようと考えるだろうか。それともカナダのように、経費がかさむ過疎地を先に集合型郵便箱にして、今度は都市部も戸別配達を廃止するというように、経済原則に基づく決定を行うだろうか。「郵政民営化は地方の切り捨て」論は根強いので、前者となる恐れもあるが、経済原則は度外視すべきではない。

カナダの5か年計画には実は興味深い記述がある。郵便市場は縮小しているが、ネットショッピングが急増し小包市場は拡大しているので、今後は小包市場に重点を移すというのだ。もちろん、集合型郵便箱までの配達だが。わが国でも、経済産業省の調査結果によれば、2012年度のB2C市場規模は9.5兆円(前年比12.5%増)で、全取引のうち電子商取引化された割合は約3.1%と前年比約0.3ポイント増加しているという。

小泉改革から約10年が経過し経済社会環境は大きく変化した。ユニバーサルサービスとしての郵便事業、特に戸別配達や信書の配達制限といった根幹をも、大胆に見直すべき時期が近いのかもしれない。