経産省がやっている総合資源エネルギー調査会原子力小委員会というものがある。この小委員会のメンバーから、運営がでたらめすぎると声が上がっている。
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経産省がやっている総合資源エネルギー調査会原子力小委員会というものがある。

この小委員会のメンバーから、運営がでたらめすぎると声が上がっている。

要するに、発電と小売りの自由化ならびに料金規制が撤廃されるとコストの大きい原発を維持できないから電力会社に補助をしてくれという電力業界からの声に呼応する小委員会だ。

補助を受ける側から直接の利害関係者をメンバーに入れてしまうだけでなく、委員が資料を配布しようとしてもそれを制限し、ビデオ中継はせず、議事録が出てくるのは一か月後、委員の発言は一人3分に制限するという昔ながらの結論ありき審議会のよみがえりだ。

電力業界が再稼働、再稼働と叫ぶのは、ひとえに再稼働しないと電力会社の経営を直撃することになるからだ。

電力会社の原子力関連資産がどれくらいの大きさになっているかみてみよう。

事業者 純資産 核燃料 原子力発電設備

北海道 1467 1296 2372 億円

 東北 5746 1535 2911

 東京 15774 7853 5920

 中部 14372 2451 1949

 北陸 3248 998 1926

 関西 12132 5290 3348

 中国 6065 1829 747

 四国 2874 1396 1048

 九州 4942 2815 2112

 原電 1645 1165 1640

 合計 68265 26627 23972

廃炉が決定すると、資産に計上している核燃料と原子力発電設備が資産から落とされるので損失が計上されることになり、電力会社によっては債務超過になるところもあった。

そこで2013年10月に経産省が勝手に省令変更をして、原子力発電設備は廃止決定をしても一括償却しなくてよいことになった。

原子力発電設備を「廃止措置資産」とそれ以外にわけ、「廃止措置資産」なるものは一括償却せず減価償却してもよいことになった。

会計上、資産というものは利益を生むもののはずだが、「廃止措置資産」は利益を生むどころか、廃炉にするための費用がかかってくるものだ。

それを資産として計上し減価償却を認めるというのは、企業会計原則から逸脱したむちゃくちゃなルールで、電力会社の財務諸表はインチキだということになる。

福島第一原発の5、6号機の場合は、残存簿価1564億円のうち88%にあたる1368億円を廃止措置資産に分類された。

核燃料資産についてはこうはいかない。だから困った電力会社が経産省に泣きつき、では原子力小委員会で補助策を、ということになった。

さらに再稼働しても自由化された電力市場では原子力を維持できないと、経産省は、原子力発電の電力を固定価格で買取するか、原子力だけ総括原価を維持するかなどというむちゃくちゃな議論をしている。

原発は、バックエンドのコストを入れても安いなどとうそぶいていたのはなんだったのか。

さらに日本原電の原子力発電所が再稼働できず廃炉になると、株主であり、債務保証をしている電力会社は大きなダメージを受ける。これについても電力会社は泣きを入れている。

電力自由化を進めるといって旗を振っておきながら、原子力は別ですという経産省の姿勢では、アベノミクスの三本目の矢は的に当たらない。

(2014年10月17日「ごまめの歯ぎしり」より転載)