重い元素に中性子ハロー同位体はあるか

中性子が非常に多い原子核に現れる「中性子ハロー」と呼ばれる特異な構造が、中性子数の過剰な同位体のマグネシウム37(Mg)にもあることを、東京工業大学大学院理工学研究科の大学院生だった小林信之さん(現・東京大学、日本学術振興会研究員)、中村隆司教授らが理化学研究所(埼玉県和光市)の大型加速器、RIビームファクトリー(RIBF)の実験で発見した。中性子ハロー構造が実験で確認されているなかでは最も重い原子核となった。
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中性子が非常に多い原子核に現れる「中性子ハロー」と呼ばれる特異な構造が、中性子数の過剰な同位体のマグネシウム37(Mg)にもあることを、東京工業大学大学院理工学研究科の大学院生だった小林信之さん(現・東京大学、日本学術振興会研究員)、中村隆司教授らが理化学研究所(埼玉県和光市)の大型加速器、RIビームファクトリー(RIBF)の実験で発見した。中性子ハロー構造が実験で確認されているなかでは最も重い原子核となった。

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核図表(原子核の地図)。 横軸が中性子数、縦軸が陽子数(原子番号)を表わす。青色で表されているのがハロー構造をもつ原子核で今回新たに中性子ハロー構造が同定されたマグネシウム37(37Mg)はハロー構造が発見されている原子核の中で最も重い。

実験を重ねれば、もっと重い中性子ハロー原子核は次々と見つかるのではないか。中性子の数が極端に多い原子核では、中性子ハローが普遍的に出現している可能性を示す結果として注目される。理研、英サレー大学、日本原子力研究開発機構、米ウェスタンミシガン大、カナダ・セントマリー大、韓国ソウル国立大、フランス・カン素粒子原子核研究所、東京大学原子核科学研究センター、東京理科大学との共同研究で、6月18日に米国物理学会誌フィジカル・レビュー・レターズのオンライン版に発表した。

強力な不安定核ビームを供給する世界の拠点研究施設、理研RIBFで、中性子数が25と、陽子数の12より極端に多いMgをビームとして取り出し、核力とクーロン力という感度の異なる力で分解する手法を用いた実験で初めて解析した。中性子1個がコアの原子核から染み出して、大きく雲のように広がってハローを形成し、一方で、球形からラグビーボールのように変形していることも確かめた。このMgは不安定で、瞬間的にMgと中性子1個に分解する。

Mgは1996年に理研の実験で初めて同定された不安定核だが、それ以降、その生成の難しさから、半減期や質量などの基本的な量すら測定されてこなかった。96年にMgが初めて同定されたときには4日間で3個のMgを収集できたにすぎなかったが、RIBFの登場で、1秒間に6個の割合で収集できるようになり、今回の精密実験が可能になった。

同じ研究グループが4月に発表したネオン31に現れる中性子ハローの特異構造の解明に続く成果である。「中性子ハローが、中性子数の極端に多い原子核の普遍的性質となる可能性が広がった。中性子の非常に多い原子核は、宇宙で鉄より重い元素の合成で主要な役割を果たしたとされる。こうした宇宙での元素合成を探る手がかりになる」とみている。