ソーシャルビジネスの発展つれづれ

年末に若手社会起業家でだらだら飲みました。いつ会っても楽しい志の高い奴らで、ほんとNPOとかやってて良かったなぁと思ったわけです。最高です、やつらは。で、彼らと話していた中で思ったのが、NPO/ソーシャルビジネスの発展形態について。
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年末に若手社会起業家でだらだら飲みました。いつ会っても楽しい志の高い奴らで、ほんとNPOとかやってて良かったなぁと思ったわけです。最高です、やつらは。

で、彼らと話していた中で思ったのが、NPO/ソーシャルビジネスの発展形態について。

普通ベンチャーは、スタートアップ→売上10億以上くらい→マザーズ等上場して資金調達→拡大に投資、みたいな流れがあるような気がします。

でもNPOはIPOっていう制度がないし、上場メリットの一つの知名度向上もあんまり関係ない。なぜなら普通のスタートアップに比べて断然メディアには取り上げてもらいやすため。資金調達ニーズも、意外にもあんまり無い。というのも、M&Aも研究開発も海外支社づくりもしないから。(海外支社は、お金の掛からないライセンス契約で広げていくのが一般的)

また、サービス業であることから多いから、例え大量の資金を得て人を採用しても、結局一気に100人とか採用すると組織が壊れちゃうことが多いから、組織ケイパビリティが採用のボトルネックになるわけで、資金ではないわけです。

なので、売上を基軸にした規模拡大という直線的な発展にブーストを掛ける意味での上場(=資金調達)っていうのは、NPOの発展には馴染まないし、もし制度があったとしても(今のところは)有効に機能しないと思う。

(創業者が大株主として上場利益を得る、っていうのも、金銭ベースのモチベーションが低い人達が比較的に多いので、あまり有益に働かない)

ではどうやって、規模を拡大していくか、というと、それは売上や組織の拡大というよりも「インパクトの拡大」になるのではなかろうか、と。つまりはスケールアウトの議論なのだけど、そこでやはり考えねばならないのが、政策化。

例えばティーチ・フォー・ジャパンなら、民間の非教員免許補助者でも、熱意と能力があれば教壇に立てるようにする、っていうのが変革の鍵になり、彼/彼女らの大量養成と拡散が問題解決に資する(と思う)わけです。

また、引きこもり中退者向け受験塾のキズキであれば、公教育の中で課題を抱えた児童を、少人数でケア・指導する仕組みを創るか、そうした児童を学習塾が率先して教育したがるようしむけるバウチャーのようなものを政策化することによって、問題解決モデルが拡散します。

あるいはワンコイン健診で有名なケアプロであれば医師法と薬事法を改正して、簡易健診市場を創ってしまうことが、健診弱者を救っていくことになるでしょうし、児童養護施設向け学習支援の3keysなら養護施設児童向けバウチャーを政策化し、既存の家庭教師派遣事業者や塾が熱烈に養護施設の子ども達を教えたがるようにしむけていくことがミッション達成に近づくことになるでしょう。

だとするなら、運動による市民運動のオルタナティブとして出てきた我々ソーシャルビジネスも、運動論を学んでいかねばならない、ということを意味します。しかし、ソーシャルセクターにおいても、運動を主体にするグループ(比較的高齢)と、事業を主体にするグループ(比較的若い)には大きな文化的・コミュニケーション的断絶があるように思います。

よって、日本的運動論は我々若手NPO経営者には伝達されていない場合が多く、むしろオバマ大統領選挙を先導したマーシャル・ガンツによるコミュニティ・オーガナイジング論やネット・ロビイングのようなものが先に、あるいは親和的に浸透しつつあるような気がしています。

僕の役割として、世代が上の方々の運動論も成り行きで教えてもらっていることや、自身も半年とはいえ官僚として働いたことや、ガンツ等の海外の手法を知ったことから、こうしたメソッドを「草の根ロビイング技法」として統合しつつ、同世代に対しその技法をシェアしていくことかな、と考えています。

そうすれば、NPOの新たな発展過程、すなわち、スタートアップ→1億くらいの規模→草の根ロビイング→制度化→全国にモデルが展開(社会変革)というパターンを創造し、「万民による社会変革」が可能になるのではなかろうか、と考えるわけです。

というわけで、今年も社会問題の戦場において、マニアックにゲリラ戦を闘っていきたいと思いますので、宜しくお願い致します。

(※この記事は、2014年1月3日の「駒崎弘樹公式ブログ」より転載しました)