ビットコインの何が問題なのか

今月に入り、電子マネーのビットコインが、かなりややこしいことになっている。世界有数の取引所、東京・渋谷の「Mt.Gox(マウント・ゴックス)」が25日から機能停止に陥っているというのだ。
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今月に入り、電子マネーのビットコインが、かなりややこしいことになっている。

世界有数の取引所、東京・渋谷の「Mt.Gox(マウント・ゴックス)」が25日から機能停止に陥っているというのだ。

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400億円規模のビットコインがサイバー攻撃で失われた、との未確認情報もある。

著名投資家らが投資に動き、各国の金融当局を巻き込む騒ぎともなったビットコインの、何がまずいことになっているのか。改めて簡単にまとめてみたい。

●昨年から急拡大、相場は乱高下

ビットコインは、円やドルとも両替可能な電子マネーだ。マウント・ゴックスのような取引所がその両替手続きを担う。「サトシ・ナカモト」の名義による論文「ビットコイン:P2P電子マネーシステム」がそのシステムのベースになっているようだ。

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2009年から広がり始め、現在まで1244万BTC(ビットコイン)が発行されていて、円換算では7250億円程の規模になる。

ビットコインが注目を集めたのは、昨年3月のキプロスの経済危機。国境を越える電子マネーの手軽さから、利用は拡大し続け、投資家も乗り出す。

インターネット初期のブラウザー「ネットスケープ」の開発者であるマーク・アンドリーセン氏や、フェイスブック立ち上げを巡るマーク・ザッカーバーグCEOとの訴訟で知られるウィンクルボス兄弟も、関連ベンチャーに出資しているという。

各国政府も動き出す。昨年11月には、米上院でビットコインに関する公聴会が開かれ、米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長(当時)が書簡で「長期的な可能性」への関心を示した。

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2013年の初めには1BTC(ビットコイン)のレートは13ドル程度だった。それが、春先の200ドル超の小バブルを経て、11月末には最高値1124ドル76セントを記録するなど、乱高下を繰り返している。

一方で、監視機関がないことから、マネーロンダリング(資金洗浄)など犯罪目的の利用も指摘され、米連邦捜査局は10月にビットコインを使ったネットの闇市場「シルクロード」を摘発。今年1月末には米連邦検察が、推進団体「ビットコイン財団」の副会長をマネーロンダリングで訴追している。

また、中国政府は昨年12月、ビットコインの規制に乗り出している。

●ビットコインの仕組み

ビットコインの基本的な仕組みについては、「weusebitcoin.com」というサイトに簡単な説明用動画が掲載されている。

ビットコインには管理者というものがいない。そして、銀行のように送金を仲介する組織がない。専用ソフトを使い、ネット上で直接、相手に送金する。そのため手数料が安い、送金手続きに時間がかからない、などの利点がある。

ネット上で送金が正しく行われたことを証明する仕組みが、ビットコインの最も重要なカギになる。不正送金を排除するために使われている技術が、電子のカギで暗号をかけたり外したりする「公開鍵暗号」と、無数のコンピューターがデータ処理を分担する「ピア・ツー・ピア(P2P」)のネットワークだ。

ビットコインの送金データには、まず電子のカギによって「署名」が行われる。そして、その「署名」が正しいものかどうかを、P2Pのネットワークでつながった膨大な数のコンピューターが、やはり膨大な量の暗号処理を分担して行って、検証する。

この膨大な量の暗号処理が、ビットコインの安全性を担保している、と言われている。検証が終了すれば、ビットコインは支払い相手の手元に送金される。

●何がまずかったのか

だが、ビットコインにはこの仕組みそのものに欠陥があった、という。「取引展性(Transaction Malleability)」と呼ばれる欠陥だ。

ビットコインの送金では、「署名」と検証の間に、多少の時間がかかる。そして、その間に「署名」に関連するデータ(ハッシュ値)を偽造することが出来てしまうのだという。

この欠陥を突かれて、ビットコインの不正送金データを大量に送信するサイバー攻撃(サービス停止[DoS]攻撃)を受け、どれが正しい送金データかわからなくなってしまったのが、今回のマウント・ゴックスのトラブルのようだ。

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ただ、ビットコインの普及を手がける「ビットコイン財団」の説明によると、この欠陥は2011年から知られているもので、完全な修正には時間がかかるが、深刻な被害を回避する手立てはあるのだという。

そして、この「署名」の偽造が行われたとしても、取引が混乱するだけで、ビットコインの「所持金」そのものが盗まれるようなことはない、と説明している。

●ではマウント・ゴックスはどうしてしまったか

「ビットコイン財団」の説明がその通りなら、では、マウント・ゴックスはどうしてしまったのだろう。

そのホームページには、「当面の間、すべての取引を停止する」との告知が掲示されているだけだ。

取引のトラブルについて、同社は10日にプレスリリースを出している(※現在は削除)。ここでは、ビットコインの欠陥「取引展性」が問題だったことを認めている。

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そして、欠陥の修復方法も提示して、問題が解消され次第、取引を再開する、としていた。

●被害の行方は

真偽のほどはわからないが、マウント・ゴックスの「危機管理計画」と称する文書がネットで出回っているようだ。それによると、74万4408ものビットコインがサイバー攻撃関連で「失われた」という。

26日現在の相場を見ると1BTC(ビットコイン)が600ドル程度なので、計4億4664万ドル、日本円で約446億6400万円が消滅した、ということになる。

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同文書によると、55万人の顧客が110万の口座を持っていたようだ。

米連邦検察当局が調査に乗り出した、との米ウォールストリート・ジャーナルの報道もある。

ただ、金融機関としての確たる実態もないので、日本での監督官庁もはっきりしない。当面、その被害実態がわかるのは、マウント・ゴックスだけだろう。

※昨年11月に「ビットコインがすごいことになっていた」という投稿でも、やや専門的ながらビットコインの概要をまとめている。

【UPDATE:2月27日08:20】ビットコインをめぐる基本的な経緯などを追記しました。

※昨年11月に「ビットコインがすごいことになっていた」という投稿でも、やや専門的ながらビットコインの概要をまとめている。

(2014年2月26日「新聞紙学的」より転載)