議会選挙の候補者男女均等法の成立を受けて思うこと

男女を問わず、問題行動をする人はいます。
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 5月16日、国会と地方議会の議員選挙を対象に、男女の候補者をできる限り均等にするよう政党に求める「政治分野における男女共同参画推進法(候補者男女均等法)が参議院本会議で全会一致で可決、成立しました。

 候補者数の男女の「均等」は、強制を避けたあくまでも努力目標とのこと。野田聖子・男女共同参画相の「日本の政治が大きく変わることを期待しているし、そうなるだろう」との談話も伝えられています。 水を差すつもりはありませんが、近い将来、今回の均等法を受けて当選した女性議員に対して、各方面で強烈なバッシングが起きることが既定路線のように想像されます。

「議員になる資格もないあんな女を候補にする(した)のか」

「あんな女を議員にしたからこういう問題が起きた」

「だから女の議員は・・・」

「欧米はともかく文化の異なる日本やアジアで候補者の均等は、しょせん無理な話だったのだ」などなど。

 問題を起こした「女性」議員に、雑誌やテレビ、ネットなどを中心に猛烈なバッシングが起きるかもしれません。しかし、そういうことが起きたら、どうぞ、一呼吸おいて考えてみてください。

 「なぜあの人が先生なの?」と首をかしげられたり、暴言・失言・あるいは妄言で謝罪や辞任に追い込まれたり、一般社会の常識からは遠く離れた言動をする男性議員がこれまでいなかったでしょうか。もしも有権者が、日本の政治はダメだ、日本の政治家には期待できない、そうした思いを抱いているならば、日本の有権者が失望したのは「政治家」ではなく「男性政治家」だったはずです。なぜなら衆議院では男女比は9;1。地方議会では、比率どころか、女性議員が全くいない、ゼロの議会が全体の2割もあるそうです。

 いやいや数は少なくとも女性議員の方が問題を起こす率が高かった、という反論が出てくるかもしれません。もしそうなら(実際の統計を持っているわけではないので、断言はできませんが)もしかしたら、女性議員は数が少なく、目立つ存在で記事やネタになりやすいという傾向があったのかもしれません。

 男性議員も同様に抱えている問題を女性議員の場合だけ、「女性」であるという属性に帰す風潮・構図は、少数者や他国籍の人々を排斥する構図と全く同じです。

 男女を問わず、問題行動をする人はいます。開き直って申し上げるなら、そういう問題を起こす女性議員がたくさん現れるようになって初めて、本当の意味での候補者男女均等法が実現するのかもしれません。日々、報道されるように、一定数の問題行動をとる男性議員がいる一方で、尊敬を集める、身を粉にして働いている、男性のすばらしい国会議員、地方議員、首長の方々を私は個人的に知っています。女性議員でそうした素晴らしい人材、逸材もまた個人的に知っています。しかし、まだまだ少数です。そうした「人財」を輩出するためには女性議員のすそ野を広げることがまず第一。その意味で、今回の法律の成立を心から歓迎します。

 そして、女性のみならず、議員や候補になりにくい障がい者、他の少数者、属性を問わず多種多様な人材が続いて政界に進出し、政治の世界により多様性をもたらしてくれることを念じています。

【報告者】

AAR Japan[難民を助ける会]理事長 長 有紀枝

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AAR Japan[難民を助ける会]

2008年7月よりAAR理事長。2009年4月より立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科教授。2010年4月より立教大学社会学部教授(茨城県出身)