現代の悪代官? 政治とカネ

政治献金は、本来見返りを求めてするものではなく、民主主義を機能させ、そのために政治家を育てるための「投資」として拠出すべきものでしょう。
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まるで時代劇!大臣室で「袖の下」

またぞろ政治とカネの話が出てきました。甘利経済再生担当大臣が千葉県の建設会社から100万円のカネを受け取ったことを認めて大臣を辞任しました。このカネは、UR都市機構と建設会社とのトラブルの解決に「口を利いた」謝礼の疑いがあり、もしそうだとするとあっせん利得処罰法(注1)に問われます。

週刊誌等では、大臣にカネを渡すのに、大臣室で木箱に入れた羊羹の脇に50万円を封筒に入れて渡したと報道されていますが、甘利大臣は記者会見で、羊羹の木箱の中の「のし袋」に50万円入っていたと証言しました。どちらの記憶が正しいのかわかりませんが、これは時代劇の世界ですね。悪代官の屋敷で悪徳商人(越後屋という名前がよく使われる)から「袖の下」(菓子箱の下に山吹色のものが入っている)を渡されるというシーンです。

政治とカネをめぐる事件は古くからあります。戦後だけでも主なものとして、昭電疑獄事件(1948年)、造船疑獄事件(1954年)、第1次FX選定(グラマン・ロッキード)事件(1958年)、共和製糖事件(1966年)、ロッキード事件(1976年)、リクルート事件(1988年)、東京佐川急便事件(1991年)、日歯連ヤミ献金事件(2004年)など、枚挙にいとまがありません。

カネを受け取ったのが、本人ではなく、「妻が」とか「秘書が」という弁解をした政治家もいましたが、責任を逃れることはできませんでした。そのたびに政治献金の在り方が議論され、政治資金規正法も幾度となく改正されてきました。

企業・団体献金は政治家育成投資として

常に問題になるのは、企業・団体献金の是非です。確かに、企業・団体にも政治活動の自由は認められており、もちろん献金の自由もあります。しかし、企業は利害得失によって行動するものですから、献金の見返りを期待すると考えるのが自然です。しかし、政治献金は、本来見返りを求めてするものではなく、民主主義を機能させ、そのために政治家を育てるための「投資」として拠出すべきものでしょう。

連合は、「政策・制度 要求と提言」の中で「政治資金は個人献金を原則とし、政党総支部など政党本部と各都道府県組織以外への企業・団体献金は廃止の方向で見直す」としています。政治家個人と企業との癒着の温床とならないような見直しの議論を進めてほしいものです。

悪代官: 越後屋、お主もワルよのう。

越後屋(悪徳商人):いえいえ、お代官様ほどでは...ふふふふ(笑い)。

時代劇では、最後は水戸黄門や遠山の金さんが必ず悪人を成敗してくれます。現代の悪代官も成敗してほしいですね。

 (注1) 政治家や秘書が公共工事などをめぐる口利きの見返りに報酬を受けることを禁じている

※こちらの記事は日本労働組合総連合会が企画・編集する「月刊連合 2016年3月号」に掲載された記事をWeb用に編集したものです。