厚生労働省が昨日発表した「保育所等関連状況取りまとめ(平成27年4月1日)」では、「2年間で約21.9万人分の保育の受け入れ枠拡大を達成」としている一方で、待機児童数が5年ぶりに増加したことを認めている。
なぜ、このようなちぐはぐな事態になるのか?
今回の厚労省発表の概要は次の通り。
(1)保育所等定員(保育所及び幼保連携型認定こども園(2号・3号認定)の定員):247万人
・前年比13万9千人増(昨年は前年比4万7千人増)
・幼稚園型認定こども園等と地域型保育事業(2号・3号認定)も含めた定員数:253万人
(2)保育所等利用児童数:233万人(前年比63,845人増)
・幼稚園型認定こども園等と地域型保育事業(2号・3号認定)も含めた利用児童数:237万人
(3)待機児童数:23,167人(前年比1,796人増;5年ぶりの増)
・待機児童のいる市区町村数:前年から36増の374
・待機児童100人以上増加:大分市(442人増)、船橋市(302人増)、加古川市(206人増)、倉敷市(152人増)、石垣市(146人増)など16市区
・待機児童100人以上減少:大田区(459人減)、広島市(381人減)、練馬区(311人減)、札幌市(254人減)、藤沢市(175人減)などの10市区
これに関して、共同通信ネット記事では、次のように報じている。
◎定員は前年から大幅に増えたが、希望者の伸びが上回った。
◎4月から始まった国の「子ども・子育て支援新制度」や雇用情勢の改善で、子どもを預けて働こうという保護者の需要を掘り起こしたとみられる。
◎都市部を中心に施設整備のペースが追いつかず、保育士の確保も課題。
下の資料1〜5は、厚労省による待機児童数の推移などを記したもの。待機児童問題が保育所等に申し込んだ者だけを対象とし、かつ、都会問題の一つとしてしか捉えられていないことが、年金・医療・介護なども含めた社会保障政策の中で待機児童対策が大幅に劣後している原因。
別の拙稿などで私はこれまでも何度も提起しているが、待機児童の数え方を最大限見積もるような算出方法を確立しないと、待機児童対策はいつまで経ってもニーズを満たさず、有効なものにはならないだろう。
私が複数の方法で概算出しただけでも、潜在的な待機児童数は100万~300万人台に上る。
待機児童解消加速化プランが順調に進みつつあると見られるのに、なぜか待機児童数は増えている。それは、待機児童の数え方が不的確だからである。保育予算が非常に不足しているので『真の待機児童数』を出したくないというのは、全く理由にならない。
このような政治的事情にかかわらず、社会保障財政の配分については、政府主導で、高齢者向け予算の幾分かを子ども子育て予算に振り合分けていくように努めていく必要がある。それこそが若年層など現役世代向けの『社会保障制度改革』の大きな柱となり得る。
安倍政権は、「新三本の矢」を放つのであれば、別の拙稿で提起したように、高齢者向け予算に偏重した財政配分を改め、若年層・子ども向け予算を拡大していく計画を立てるべきだ。
<資料1>
(出所:厚生労働省「保育所等関連状況取りまとめ(平成27年4月1日)」)
<資料2>
(出所:厚生労働省「保育所等関連状況取りまとめ(平成27年4月1日)」)
<資料3>
(出所:厚生労働省「保育所等関連状況取りまとめ(平成27年4月1日)」)
<資料4>
(出所:厚生労働省「待機児童の状況及び待機児童解消加速化プランの状況について(平成27年9月27日公表)」)
<資料5>
(出所:厚生労働省「保育所等関連状況取りまとめ(平成27年4月1日)」)