観光客がシロクマの「ピッツァ」を見る。ピッツァが住むのはこの中国・広州のショッピングモールにある水族館だ。
「世界で最も悲惨な動物園」と呼ばれる劣悪な環境に閉じ込められたシロクマ「ピッツァ」にとって、事態はさらに悪い方向へと進んでいる。
ピッツァは、中国・広州にあるショッピングモール「正佳広場」内の動物園「極地海洋世界」中国のショッピングモール内にあるがらんとした囲いの中で、孤独で、いつも客の目にさらされ、逃げ場がない日々を過ごしている。
動物愛護団体「ヒューメイン・ソサイエティ・インターナショナル(HSI)」は、シロクマは精神機能が明らかに低下している兆候があると、ピッツァの新しい動画を10月25日公開した。
動物保護団体「チャイナ・アニマル・プロテクション・パワー」の活動家マイ・ジー氏は、9月下旬にシロクマの動画を撮影した。この動画では、青く光るコンクリートの部屋の中で、前後を囲われて、 激しく頭を振ったり、金属製の格子をかじったりする様子が見られる。
世界的に厳しい目が向けられるようになったが、極地海洋世界のスタッフは「シロクマは元気だ」と言う。
「ピッツァはとても健康だ」と、同施設はニューヨーク・タイムズにメールで回答した。ニューヨーク・タイムズによると、極地海洋世界は生物多様性を促進するための研究と教育を行っていると述べており、「こうした社会的利益と動物福祉を完全に分けることはできない」と主張した。
また、ロサンゼルス・タイムズに「常に動物を最優先にして運営している」とも述べた。
しかし、動物福祉の専門家たちの意見は異なる。
「頭を振ったり、繰り返し歩き回ったりするのは、欲求不満や劣悪な福祉環境が引き起こす典型的な行動です」と、獣医師のアラステア・マクミラン氏が説明した。「ストレスを抱え、不快な状況に耐えているのです。囲われて何もない部屋、退屈で、いるも観光客の目にさらされている状況であれば、こうなっても仕方ありません」
獣医は、このままでは、ピッツァは「どんどん精神状態が落ち込んでいくだろう」と警告する。
ショッピングモール「正佳広場」にある囲いの中のシロクマ「ピッツァ」、2016年7月27日撮影。中国・広州でたった1匹だけのシロクマだ。
ピッツァの飼育部屋はショッピングモールの6階にあり、広さはおよそ430平方フィート(約40平方メートル)。「シロクマが元気になるような要素はなく、水を張った浅いプールと、床に少し氷があるだけだ」と、HSIのピーター・J・リー氏はハフポストにメールで答えた。水族館には2頭のシロクマがいるという報告があったが、HSIが訪ねた時には1頭しかいなかったという。
この水族館は、1月に世界的な注目を集めた。動物慈善団体「アニマル・アジア」が、施設の悲惨な状況下で暮らす他の動物たちと一緒に、ピッツァの解放を求めるキャンペーンを立ち上げた時だ。動物の中には、ホッキョクギツネ、セイウチ、ベルーガも含まれている。
シロクマ「ピッツァ」、飼育部屋のドア前に立つ。
リー氏は、ピッツァやショッピングモール内に住む他の動物たちを心配する人々に、世界中にある中国の在外公館に「礼儀正しいメッセージ」を書くことを呼びかけた。リー氏はまた、施設が人々に対し、動物の扱いについて間違った考えを与えている恐れがあるとも述べた。特に環境客の中で高い割合を占める、幼い子供たちへの大きいという。
「この施設や、ショッピングモールの中にある動物展示施設は、野生生物について誤った情報を広めています。そして、訪れる人々は、動物に対する敬意のない態度をとっているのです」と、リー氏は言った。
ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。
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