人権ウォッチ:安倍首相は、血塗られたフィリピン政府の「麻薬撲滅戦争」を非難すべき

ドゥテルテ大統領の訪日 「いつも通り」ではすまされない
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Philippine President Rodrigo Duterte and visiting Japanese Prime Minister Shinzo Abe shake hands after a joint statement at the presidential palace in Manila, Philippines January 12, 2017.
© 2017 Reuters/Erik De Castro

ロドリゴ・ドゥテルテ・フィリピン大統領の訪日を控え、日本政府首脳には、フィリピン政府が遂行中の血塗られた「麻薬撲滅戦争」に対する長い沈黙を破る好機が訪れています。

ドゥテルテ大統領の訪日は2017年10月29日~31日の3日間で、安倍首相との首脳会談も予定されています。安倍首相はドゥテルテ大統領に対し、「麻薬撲滅戦争」という名の殺害行為を停止し、殺害事案に関する法的責任の追及に向けた措置をとるよう、公の場で求めるべきです。

ドゥテルテ大統領の就任から1年3カ月ですが、この間に薬物常用者や売人と疑われた1万2,000人以上が超法規的殺害の犠牲となりました。米国と欧州議会はこのことを明確に非難していますが、日本政府はフィリピン政府に無批判な「普段と変わらぬ」姿勢で接し続けています。

大規模な人権侵害を目前に抗議の声を上げない日本の態度は、安倍首相の2017年1月12日~13日のフィリピン訪問の際にも示されました。訪問では「国造りに対する官民を挙げた協力を着実に実施していく」として、今後5年間でODA及び民間投資を含め総額1兆円規模の支援を行うことが表明されました。

この1カ月後の2017年2月、真部朗防衛審議官は日比防衛当局次官級会合で、フィリピンが2017年の東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国を務めることへの支援を表明しました。しかし、真鍋氏はこうした気前の良い支援表明の一方、野放図に広がる超法規的処刑には一切言及しませんでした。

国際協力機構(JICA)は2017年4月、フィリピン政府との間で、「違法薬物患者向け治療施設の整備や治療プログラムの改善」を目的とした18億5,000万円を限度とする無償資金協贈与契約を締結しました。しかしJICAもフィリピン保健省も、フィリピン政府の資金使途計画の詳細を明らかにしていません。

このためJICAの支援が、人権侵害を引き起きおこす可能性のある、非自発型の薬物更生プログラムに流れる危険性があります。東南アジア諸国でこうした非自発型プログラムは、重大な人権侵害を引きこしているのです。

安倍首相は、ドゥテルテ大統領がフィリピン国内で犯している惨憺たる人権状況に対し、日本など、普遍的人権と法の支配を重視するフィリピンの友好国の一致した対応が必要という点を、しっかり認識するべきです。日本がこうした価値観にコミットしていることを示すため、安倍首相はドゥテルテ大統領の殺戮作戦を明確に批判し、殺害事例に関する国連主導の国際調査への支持を表明するとともに、国際基準と人権原則に則り、当人の自由意志に基づくコミュニティ・ベースの薬物更生サービスに限った支援を約束すべきではないでしょうか。

(2017年10月27日「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」より転載)