ソニーとSpotifyは、新しい音楽配信サーヴィス「PlayStation Music」を世界41カ国で開始することを発表しました。そして3月29日に現在世界19カ国で運営しているサブスクリプション型音楽サーヴィス「Music Unlimited」を終了します。
PlayStation Musicはサブスクリプション型音楽ストリーミングサーヴィスで世界トップの「Spotify」を独占パートナーとして、アメリカ、カナダ、メキシコ、ブラジルを含む41カ国で今春にスタートし、当初はPS4とPS3のPlayStation Network、Xperiaスマートフォンとタブレットで展開し、その後にその他のデヴァイスやプラットフォームに展開する予定です。
PlayStation Musicとは
ユーザーはPlayStationからSpotifyのサーヴィスにアクセスして音楽が楽しめるだけでなく、PS4をプレイ中にSpotifyを利用してバックグラウンドで好きな音楽を再生することも可能になります。
PlayStation MusicではまたSpotifyがキュレーションしたプレイリストや、Spotifyで作成されているプレイリストの再生も可能になります。PlayStation Networkユーザーは既存のIDと支払いシステムでSpotifyプレミアムアカウントに登録を行うことができるようになります。
ソニーはPlayStation Musicで3,000万曲以上の音楽と15億以上の音楽プレイリストがフィーチャーされると述べています。これは、Spotifyが発表している数値と同じになりますので、PlayStation Musicはソニーのレコードビジネスに限定される独自サーヴィスではなく、Spotifyの音楽カタログが制限なく使えるものと見ていいでしょう。
Music Unlimitedの有料ユーザーには2月28日から3月29日までの30日間フリーアクセスが提供されます。
Music Unlimitedをなぜ終了するのか、ソニーは理由を発表していませんが、サーヴィス開始以来サーヴィスの動向が発表されてこなかったことを含め、思ったような成長ができなかったことは想像できます。Spotifyといえば、音楽ストリーミングサーヴィスの分野ではライヴァル企業。そのSpotifyと提携した音楽サーヴィスを開始するとは、ソニーの音楽戦略も大胆に舵を切り直してきました。
2015年はアップルが定額制音楽配信Beats Musicをブランドしなおしてローンチし直す噂や、YouTubeの定額制音楽配信YouTube Music Keyが世界展開する話など、大手企業がSpotifyの後を追うように音楽ストリーミングの領域で本格的に勝負しようとしています。ソニーも乗り遅れる前にMusic Unlimitedでの勝負に見切りを付けて、Spotifyとのパートナーで勝負に来るためのクリエイティブな差別化を今回打ち出したことで、その波に一気に乗ってきたと言えます。
Spotifyにとってもソニーがすでに開拓してきたプレステ・コミュニティから簡単にアクセスできることは、膨大な新規ユーザー獲得のポテンシャルでもあります。ソニーはPSネットワークのアクティブユーザー数は6,400万人以上と発表しており、これまでどの音楽サーヴィスも成功していないゲーマーのコミュニティでトップのポジションを獲得することも現実的になってきました。
バルセロナで3月2日から始まるモバイルの世界的カンファレンス「Mobile World Congress」で何か新しい発表があるかもしれません。今後の動きに注目です。
ソース
(2015年1月29日「All Digital Music」より転載)