気候変動による温暖化が、飛行機の離発着を困難にするとの研究結果が発表されました。気候変動による異常気象が世界中で航空機の運行の妨げとなる激しい天候を生みだすことはすでにわかっていましたが、今回の研究は気温上昇による飛行機の離陸能力への影響について調査しています。
この研究はコロンビア大学とNASA、Logistics Management Instituteなどによる、世界19の主要空港について調べています。この調査では「1日のうちで最も気温が高い時間帯に出発する便の10~30%が、最大離陸重量より若干厳しい重量制限を必要としていることがわかりました。そして、その制限重量は今世紀後半にかけて0.5~4%増加するだろうとのこと。
この原因は、空気の密度にあります。空気はその温度が上昇すれば膨張するのは理科の時間に習ったとおり。そして膨張すれば密度は低くなるため、離陸するときに必要な空気抵抗やエンジンの推進力が低下、飛行機は重量を軽くするか離陸速度を上げて対応しなければならなくなります。もちろん離陸速度を上げるには多くの燃料と長い滑走路が必要となります。
これは、立地条件的に長い滑走路を確保できない空港では致命的な問題になりえます。研究では、もし今後温暖化が進行すれば、航空会社は気温の高い時間帯の離陸をキャンセルしなければならなくなる可能性があるとしており、空港によっては滑走路の延長工事に着手しなければならないだろうと予測します(実際、韓国・仁川国際空港の第3滑走路は2008年の建設時、未来の温暖化を見越して4000mもの長さに設定されました)。
さらに、機体重量を軽くするためには荷物の重量制限や搭乗人数の制限が必要となり、登場人数が減れば航空運賃の値上げとなって利用者に跳ね返ってくる可能性もあるとのこと。
米国のパリ協定離脱もあり、世界的な温暖化対策は今後の見通しが難しくなりつつあるようにも見えます。ドイツ・ハンブルクで開催されたG20では「保護主義と闘う」として改めてパリ協定の重要さがアピールされたものの、このまま温暖化が進行すれば飛行機の利用者にも離陸キャンセルや延期など直接的な影響が増加するかもしれません。
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(2017年7月14日 Engadget日本版「温暖化で飛行機飛べず。 出力低下がまねく重量制限や滑走路延長〜コロンビア大、NASAら研究結果」より転載)