さてさて、「ドイツ海賊党」への訪問レポートです。
そもそも海賊党(Pirate Party)とはなんでしょうか?
その期限は2006年、ACTA法(模倣品・海賊品拡散防止条約)に
反対するために結成された運動体・政治結社までさかのぼります。
海賊版に苦しむ日本発で検討されたこの法案ですが、
「表現の自由・通信の秘密を妨げるものである」
「新たなネット社会の可能性を阻む悪法」
として反対する人々がスウェーデンで海賊党を結成し、ヨーロッパ中を席捲します。
当初は自由なネット使用等を主張するに留まっていたものの、
やがてその政治的な主張を拡大して政党へと発展。
・政治や国家の透明性
・オープンアクセス、デジタル化
・間接民主主義と直接民主主義の融合
などを理念として掲げ、既成政党への不満や政治不信を背景に支持を広げ、
2011年にはドイツを中心として地方議会で多くの議席を獲得するに至りました。
その結成の動機となった表現・ネット利用の自由以外には固定された政策・理念をもたず、
都度サイトで党員や国民の意見を募り、政策や提案を作り上げていくその仕組は
「液体民主主義(Liquid Democracy)」
と名付けられ、「政治に声が届かない」「自分たちの手に政治を!」と訴える
若年層を中心に着実に定着し、最先端の技術と概念を用いた政治手法は
世界からも注目を集めるに至りました。
まさに、われわれ日本を元気にする会が目指すものを先取りした、
先輩政党とも言える存在が、この海賊党なのです。
参考文献:海賊党の思想
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しかしながらその海賊党も2012年をピークとして、
現在は厳しい局面を迎えています。二桁に迫っていた支持率は、
2015年現在は各種選挙で1~2%程度と低迷。
・ACTA法が欧州議会で否決され、反対運動が一段落してしまったこと
・海賊党議員がネットやデジタル以外の政策では「素人」であるのが露呈したこと
・海賊党の党員たちもネットやデジタル以外の政策に興味を示さず、ネット投票しないこと
などがその原因として挙げられています。
(ベルリン州議会議員・ヘルベルク氏に海賊党の投票システムの説明を受ける山田参議院議員と私)
せっかくの時間をいただいたので、厳しい質問も投げかけてみました。
例えば海賊党のネット投票・議論システムを使って、彼が議席を持っている
ベルリンの再開発問題について問うたとします。
すると「海賊党員全体の意向」と「ベルリン市民・ベルリン海賊党員の意向」が
異なる場合などが出てくるわけです。こうした場合の調整はどうするのか?
「...非常に難しい問題だが、対話だ。対話しかない」
直接民主主義を採用したからといって、
魔法のように利害調整がすべて済むわけではありません。
むしろ対立が可視化され、激化することすら考えられます。
また、せっかく党員たちとの議論や投票で
政策提案が出来上がったとしても、たった一議席しかベルリン州議会にないのでは、
政策実現ができないのではないか?そのことに党員は不満を持たないのか?と聞くと、
「他の野党を巻き込んで少しでも影響力を高め、
与党にプレッシャーを与えて実現に近づけていきたい」
とのことで、都議会の自分たちと一緒だなあ...と思ったりしました。
(ドイツ海賊党・ケルナー党首たちに元気会の理念と仕組みをプレゼン)
午後にお会いしたケルナー党首たちには、
システムの問題点や課題についてお聞きしました。
海賊党の投票システムには、「委任」というユニークな仕組みがあります。
自分たちが興味がない、わからない議題については
「私より詳しい◯◯さんに委任します!」
と自分の票を預けることができるわけですね。
ところがこの仕組みによって、海賊党内で人気の高い人物が非常に多くの票を
抱えるようになってしまい、結果に偏りが出るようになってしまったとのこと。
これは結局、党員投票における低投票率が原因となっており、
地味なテーマでは投票率が10%から20%程度に低迷することがあるそうで、
現実の選挙と同様、民主主義の根幹を揺るがす問題となっています。
「われわれはここ数年間、手を広げすぎたのかもしれない。
今後はテーマを絞って、海賊党への支持と関心を高めていきたい」
とケルナー党首。ネット活用や政治の透明性という
自分たちの原点に回帰をしていく方向を模索しているようです。
若干27歳のヘルベルク氏は、まさに才気煥発といった感じ。
議会内でも噂通りのスマートなカジュアルさでした。
ケルナー党首・ティンギロウティウス事務局長からは、
ドイツ国内で2万5千人まで党員を拡大した手法、党員以外にも議論を拡大するノウハウについて、
蓄積された彼らの経験から様々なアドバイスをいただくことができました。
彼らが引き続き与党の対抗勢力を保ち、
直接民主主義の火を絶やさずに活動できるよう、
今後も情報交換・連携をとっていきたいと思います。
※ケルナー党首にはFacebookでも紹介していただきました!
この期に訪れるスウェーデンでは、海賊党の創設者に会えるアポが取れましたので、
引き続き彼らの活動についてレポートしてきます。
明日はチューリヒでスイス大使館の公使とのブリーフィングです。
それでは、また明日。
(2015年5月2日「おときた駿公式ブログ」より転載)