心身の緊張をほぐし幸せな気分にしてくれる、フェミニンでエレガントな色、ピンク。さまざまなトーンや相性のよい色、使い方を知って、その効果を上手に取り入れましょう。
赤に白を混ぜてできるピンクは、赤と同じ前向きなエネルギーを持つ色ながら、赤ほど強さを感じさせない、マイルドな印象の色。心や身体の緊張をほぐし、幸福感を感じさせ、笑顔にさせてくれるなど、他の色に比べてマイナス面の効果が少ないのも特徴です。
可愛らしく優しげな雰囲気から、従来は女性の色というイメージがありましたが、今の時代は男性も実にファッショナブルに、スマートに使いこなしている色でもあります。今回は、そんな多様性のあるピンクのインテリア効果をご紹介します。
幸福感をもたらす前向きな色
「la vie en rose(バラ色の人生)」とは、幸せで希望に満ちあふれた人生。ではバラ色と聞いて、具体的にどんな色を想像しますか?
赤やオレンジがかった赤をイメージする方もいるかもしれませんが、おそらくここで指し示しているrose色、つまりバラ色は、明るさも鮮やかさも中程度、黄色っぽくも青っぽくもない「ど真ん中」のピンク色。ちょうど写真のバラの花びらのような色でしょう。
この色、見ているだけでちょっと幸せな気分になりますね。
また、日本人が愛する花、春の桜もピンク色です。ほとんど白に近い淡い色から、強く濃い色まで、桜の花にもさまざまな色がありますが、心を落ち着かせ、穏やかな幸福感を感じさせるのは、どのピンクも共通。
心や身体の緊張を優しくほぐしてくれるピンク色の効用は広く知られており、さまざまな社会施設でも利用されています。
緊張をほぐし、安心させる色
たとえば病院やクリニックでは、患者の緊張をほぐし、安心感を与える色としてインテリアや看護師たちの制服にピンクを取り入れています。
アメリカの刑務所や少年院では、壁や天井などにピンク色を使用したことで、暴力的なトラブルが減少したという報告もあるそう。また、小さな子供たちが集まる託児所や保育園でも多く活用されています。
女性性を象徴し、若さを保つとされる色
最近こそ男性にも好まれ、広く使われるようになったピンクですが、もともとは女性らしさを表す代表的な色といえます。
母性、恋愛、愛情を象徴的に表現するだけでなく、女性ホルモンの活性化やエイジングケアに効果が期待できるとする説もあるなど、「女子力」と深く関係する色として、幅広い年代の女性たちに愛され、注目されています。
さまざまなトーンのピンクを使い分けよう
住まいの空間において、ピンクの効果を上手に活用するにはどうしたらよいでしょう。ピンクはトーンを選べば、子供部屋のほかLDKや玄関など、あらゆる空間に使える色です。
リビングや寝室、廊下などの壁に使うときは、明るめのソフトなトーンのピンクを選ぶとよいでしょう。狭いトイレやドア、家具などには、思い切って鮮やかなピンクを取り入れるのもおすすめです。
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ガールズルームの定番、明るい青みピンク
写真のような、青み寄りの明るく鮮やかなピンクは、ガーリッシュな中にも快活な印象があり、女の子の部屋に向きます。ここでは、ピンクの反対色にあたるシアンブルーのアクセントカラーで壁色を引き立て、さらに元気なイメージに。大きな差のある色を同じ空間に取り入れると、アクティブな印象になります。
ベースカラーをもっと黄み寄りのピーチピンクにするなら、他のカラーも黄み寄りにし、全体のトーンを合わせるとよいでしょう。
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赤に近い効果のある、彩度の高いピンク
ショッキングピンクやローズピンク、フューシャピンクのような鮮やかなピンクは、彩度が高いため赤がもつ強いイメージに近づき、色としての強さが前面に出てきます。合わせる色は、モノトーンがおすすめ。明快な印象の組み合わせは、スマートな空間づくりに一役買ってくれます。
強いピンクをベースカラーにする場合、面積が大きくなるとやや威圧的な印象に。一面だけに抑えるか、腰壁くらいの高さで空間をセパレートすると軽減できます。でも、滞在時間が短いトイレや洗面室、ウォークインクローゼットのような狭く限られた空間なら、あまり心配はいりません。思い切って全面に塗り、ピンクの鮮やかさを楽しむのもいいでしょう。
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上品で用途の広い、スモーキーなミディアムピンク
鮮やかなピンクに少しグレーを加えて彩度を下げていくと、スモーキーなピンクへと変化。少し彩度が落ちることで、エッジの効いた鮮烈な印象から、品のある落ち着いた雰囲気になってきます。
写真のアクセントウォールに使ったピンクは、周囲のホワイト系の明るい色により、穏やかでシックな印象が強調され、品格や大人っぽさが演出されています。
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上の例とは反対に、周りが暗い色に囲まれていると、色の対比によりスモーキーなトーンでもピンクの鮮やかさが際立ち、見え方が華やかなイメージに変化します。
ミディアムトーンのピンクは、カーテンやカーペットに使っても素敵です。ただ、上記のようにピンクの印象は隣り合う色によって変わってくるので、選ぶときには周囲の色をチェックしてみてください。
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ピンクと組み合わせたい色とは
- グリーン系
ピンクと一緒に使う色についてもいくつか例を挙げて解説します。ピンクは暖色で、色相環の反対に位置する補色は、緑系統の色。ピンクとグリーンのコーディネートは、こうした反対どうしの色を合わせた補色配色です。この組み合わせはとてもバランスがよく、空間に大胆で明快なリズムをつくり出すことができます。
ひな祭りの飾りに使われるような明るいトーンのピンクとグリーンの配色なら、ガーリーな印象に。どちらも鮮やかなトーンだとハレーションを起こし目が疲れてしまうので、写真のようにどちらか一方の明度や彩度を下げて、コーディネートするといいでしょう。
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- グレー系
濁りのない澄んだ色(色彩用語では明清色、ティントカラーなどと呼びます)のピンクに合うのは、グレー。近年グレーはバリエーションが増え、インテリアの定番色として充実してきました。写真は白に近い、彩度が低めのピンクですが、彩度をもたないモノトーンのグレーがその色味を引き立てています(彩度対比)。同時に色差の少ない配色が、繊細かつ現代的な印象をつくっています。
このトーンのピンクはベビーピンクとも呼ばれ、多用すると子供っぽい印象になりがちですが、落ち着きのあるグレーと使うとそれが抑えられ、澄んだ色味が際立ちます。ピンクを使うときのテクニックとして覚えておきましょう。
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トーンと分量を考慮すれば大活躍
ピンク色のインテリア効果にはマイナス面は少ないですが、前に出て見える「進出色」なので、その点だけ注意が必要。たくさん使いすぎると煩わしく感じることもあるので、ピンクを使いたいときはトーンと分量のバランスに気をつけて、全体の色彩計画を立てましょう。
今回ご紹介したピンクの中で、気分にフィットするピンクは見つかりましたか? ピンクがもたらす幸福感や前向きな効果をぜひ住まいに取り入れて、愛情あふれるインテリアをつくり上げてください。
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(2017年8月22日 Houzz「優しさと幸福感あふれる愛情の色、ピンクのインテリア効果」より転載)