PHR(パーソナルヘルスレコード、生涯型電子カルテ)の普及について

私たちは自分のことをよく知らない。自分が好きな食べ物を知っていても、食物アレルギーがあることを知らない人が多くいる。

私たちは自分のことをよく知らない。

自分が好きな食べ物を知っていても、食物アレルギーがあることを知らない人が多くいる。食物アレルギーの検査を受けると、今までアレルギー反応が出ていなかっただけで、かなりの数のアレルゲンを持っていたことを知ることになる。昔、血液型占いが流行った日本では、血液型にはABO式血液型の4種類あることを多くの人が知っている。

しかし、血液型の分類には、他にもRh式血液型、ヒト白血球型抗原(HLA)、ダフィー式血液型があることはあまり知られていない。

アレルギー検査や血液検査を受け、その結果を病院からもらう。しかし、その結果をいつでも見られるように管理している人はどれぐらいいるのだろか?また、それらの情報を正確に医師へと伝えることができるのだろうか?

お薬手帳を持ち歩く人は多いが、血液検査やレントゲン写真などの検査結果を持ち歩く人はほとんどいない。私たちは自分の医療情報を把握しきれていない。

それなのに、検査で手に入れた貴重な医療情報も保管していない。そんな状態で、病気や怪我をした時、頼りない記憶による既往歴や症状を説明し、診断・治療を受けることになる。そこで大きな問題が出てくることがある。医療機関に必要な情報をすべて伝えきれなかったことで、診察の精度を落としてしまうことだ。

この問題を解決する手段としては、医者の作成するカルテを電子化し、全ての医療機関で共有化できるシステムの構築が必要となる。それを実現できるシステムがPHR(パーソナルヘルスレコード、生涯型電子カルテ)である。このPHR自体の構想は昔からあるものだが、未だに実現されていない。このシステムは全ての医療機関で導入されなければ成立しないものであり、そのシステム導入費用やセキュリティーの問題、また、患者側の同意が必要となることから中々実現されない。

今までは、実現の壁が大きかったこのPHRだが、似たような情報共有化システムであるマイナンバー制度の普及により実現可能となったと考えられる。もちろん、医療関係者の力だけでは実現できるものではない。マイナンバー制度のように国が積極的に動かなければ実現できないものだ。そして、その国を動かすのは政治家であり、有権者である私たち国民である。

PHRが普及すれば、患者が受ける検査も減り、肉体的にも経済的にも患者の負担は減る。おのずと検査時間も減るため、患者の待ち時間も減る。検査が減ることで医療関係者の負担も減ることだろう。

ただし、病院側の検査による収入も減ってしまう。しかし、国が補填する保険料負担はその分減ることになる。高齢化社会により今後も増えていくと思われる国が負担する医療費を減らすことは、国家全体、ひいては国に税金を納めている私たち国民にとっても大きなメリットとなる。すでに破たんしそうな年金問題のように、医療制度を破綻させないためにも、PHRを早く普及させてもらいたいものだ。