2月21日、記者会見するマイロ・ヤノプルス氏
アメリカの極右ニュースサイト「ブライトバート・ニュース」の編集幹部マイロ・ヤノプルス氏が、小児性愛者を擁護する発言を写した動画が動画が流出した。ヤノプルス氏は2月21日声明を発表し、「ブライトバート・ニュース」の編集幹部を辞任したと明かした。
動画が流出すると、ヤノプルス氏は出版予定だった本の契約が取り消された。また、保守派の会合への招待も取り消された。
ヤノプルス氏はレイシズム(人種差別)、性差別、トランスフォビア(性同一障害やトランスジェンダーに対する嫌悪)的な言動を煽る寄稿者でもあった。
ヤノプルス氏は声明の中で、「ブライトバートニュースは他の人間が屈服しても、いつも私の側に立っていた」とした。
「ブライトバートニュースのおかげで、保守的で、自由主義的な考えをコミュニティに伝えることができた。もしこれができなければ、コミュニティはブライトバートニュースなど決して見向きもしなかっただろう。このサイトは、私が成功した重要な要因だ。このような自由を与えてくれたこと、そしてそこで紡いだ友情に感謝しています」
ヤノプルス氏は、「私の選んだ言葉により、同僚たちの重要な報道が傷つけられることがあってはならない」とし、辞任するのは自分の意思だと付け加えた。
■「小児性愛(ペドフィリア)をあからさまに擁護する発言」で波紋
問題となったのは、ヤノプルス氏はポッドキャスト番組「Drunken Peasants」でのインタビューだ。
インタビューの中でヤノプルス氏は、成人男性と13歳少年との小児性愛(ペドフィリア)をあからさまに擁護。 また、自分が未成年だった頃、神父からオーラルセックスのやり方を教わったとして、その時の様子について冗談を交えて話をした。
この発言が最近になって拡散し、攻撃的な言動で築かれた彼のキャリアが一気に崩壊した。
ヤノプルス氏は20日夜、Facebookで発言について「一部責任がある」と釈明した。
「私はゲイであり、児童虐待の被害者だ。もう一度、はっきりと言っておきたい。私は未成年を性的に虐待する大人たちを心の底から嫌悪している。小児性愛は恐ろしいものだし、児童虐待を暴くために、ジャーナリストとしてキャリアの大部分を捧げてきた」
ヤノプルス氏は、自らが児童虐待の被害者であることで「どんなに常識から外れたことであろうと、自分はこの話題について言いたいことを何でも発言できる」と考えるに至った、と主張している。
ヤノプルス氏は21日夜会見を開き、繰り返し「児童虐待を支持しない。ムカつくような犯罪だし、私も被害者だった」と繰り返し発言した。また、「承諾年齢(性交渉に合意できる年齢)の若い男性について言う時、「ボーイ」(スラングで「ペニス」の意味)という言葉を使ったこと、そして他の虐待の犠牲者の証言を『軽率で不注意だった』と説明したことを謝罪します」
それでもヤノプルス氏は、「ジョークでタブーに切り込むことは絶対に辞めない」と強調し、出版取りやめになった本について「関心がある出版社から出す」と語った。また、一連の炎上騒ぎは「長い目で見れば自分にとって良いことだ」と強がった。
「こんなことで私の経歴は傷つかない。もっと多くの人が、言論の自由というテーマで私が言わなければならないことを読んでくれると思う」
■ 「自分も児童虐待の被害者だった」と釈明
ヤノプルス氏は、保守派の扇動的な言動が原因でTwitterから永久追放されており、イスラム教徒、フェミニスト、トランスジェンダー、「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命も大切だ)」運動、リベラル派学生運動を中傷している。
大手出版社サイモン&シュスター傘下の「Threshold editions」と25万ドルの出版契約を交わしており、3月14日に著書『Dangerous』が発売される予定だった。
2月23日からはメリーランド州で開催される保守派最大のイベント「保守政治行動会議」)(CPAC)に招待され、講演する予定だった。
■ 保守派最大のイベントCPAC招待も取り消し
彼は影響力の大きい「保守政治行動会議」(CPAC)で脚光を浴びていた。
週刊誌「ハリウッド・リポーター」は、マイク・ペンス副大統領やウィスコンシン州のスコット・ウォーカー知事といった保守派のスピーカーに取って代わる存在になると報じたほどだった。
CPACではラインス・プリーバス大統領首席補佐官や、ブライバートの元幹部で現在トランプ大統領の首席戦略官を務めるスティーブ・バノン氏も講演を予定している。
ヤノプルス氏の発言が取りざたされると、ブライトバート・ニュースのアレックス・マーロウ編集長は21日、ヤノプルス氏の発言は「全く弁解の余地のない」そして「衝撃的なものだ」と声明を発表したが、停職や解雇処分にはしなかった。
一方でマーロウ氏は、ヤノポロス氏の発言を非難したものの、2016年のインタビューが最近再び世に出回ってきたのは、ブライトバート・ニュースを繰り返し標的としてきた3つの勢力(左派、共和党主流派、そして反トランプ運動の「組織的な攻撃」)によるものだと述べた。
マーロウ氏は、こうした反ヤノプルス勢力が「彼のキャリアやブライトバート、そしてトランプ氏やスティーブ・バノン氏のような人々に、最も打撃を与える機会を待っていた」と述べた。
バノン氏はブライトバート・ニュース・ネットワークの前会長であり、現在はトランプ大統領の首席戦略官と上級顧問を務めている。
2016年8月17日、ロンドンでイベントに参加するヤノプルス氏
■ ヤノプルス氏が巻き起こした騒動
ヤノプルス氏は、人種差別を煽る発言で批判を受けていた。
リメイク版「ゴーストバスターズ」に出演した女優レズリー・ジョーンズに女性蔑視の嫌がらせ(トロール)を繰り返し、Twitterを永久追放されている。
「ゴーストバスターズ」の主役が全員女性になったことで、黒人女優のジョーンズはミソジニスト(女性嫌悪の人間)、レイシスト(人種差別主義者)からサルと呼ばれ、尻の写真や卑猥なコラージュ写真などを送りつけられる嫌がらせを受け続けた、一時はTwitterの利用を断念するところまで追い込まれた。
またヤノプルス氏は、男性のゲーマーが女性のゲーム開発者を嫌がらせのターゲットにした「ゲーマーゲート」騒動で、反フェミニスト派としてSNS上で何千人ものフォロワーを集めた。
この騒動では、女性ゲームデザイナーのゾーイ・クインさんの個人情報が匿名掲示板「4chan」にさらされた。
クインさんと交際していたという元ゲームプログラマーは、ブログで「彼女はゲームニュースサイト『Kotaku』のジャーナリストと関係を持ち、提灯記事を書いてもらった」という真偽不明の情報が流した。これによりクインさんはTwitterアカウントを閉鎖してしまった。
また、「ゲームでの女性の描き方が性差別的だ」と批判していたアニータ・サーキシアンさんも嫌がらせを受けて。殺害予告が出され、講演会が中止になる事件も発生した。
ヤノプルス氏のコメントは、「自分たちの娯楽にポリティカル・コレクトネス(政治的に正しい言動)を持ち込もうとするフェミニストの陰謀が存在する」として不満を抱いていたゲーマーを煽ったのは間違いない。
「ブライトバート」の編集幹部として、ヤノプルス氏は2016年、同サイト上で作家のアラム・ボカリ氏と連名でオルタナ右翼(オルト・ライト)を擁護する声明文を公開している。
ヤノプルス氏とボカリ氏は声明文で、オルタナ右翼運動が「スキンヘッドの極右活動家よりもはるかに知性あふれるものだ」と述べている。
金儲けに目がくらむ既存の保守層とは異なり、オルタナ右翼の「自然発生的な保守運動」の狙いは、自分たち白人男性の国家主義的価値観を守ることにあるという。「本能的な保守的思想とは、多様性よりも同質性を好む傾向があり、過激な平等的主義より階層社会と秩序を志向する」と、声明文には書かれている。
カリフォルニア大学バークレー校では1日夜、共和党支持者団体「バークレー校共和党クラブ」が企画したヤノプルス氏の講演に反対するデモ隊が暴徒化し、講演が中止となった。ヤノプルス氏が「ダディ」と呼ぶトランプ大統領は、彼を擁護し、大学への連邦資金拠出を取りやめる可能性を示唆した。
もしカリフォルニア大学バークレー校が言論の自由を認めず、見解の異なる無実の人たちに暴力を振るうなら……連邦政府の補助金は必要ないってことだろうか?
ヤノプルス氏はテレビでの発言も物議を醸している。彼は17日夜HBOのトーク番組「リアル・タイム」に出演し、仲の良い司会者のビル・マーハー氏からのインタビューを受けた。
ヤノプルス氏は女優レナ・ダナムやコメディアンのエイミー・シューマーといった「頭のおかしい、どうしようもない」リベラル派を攻撃し、2人が「フェミニズム」に「感染」していると発言した。
また同番組の「オーバータイム」というコーナーで、トランスジェンダーは「精神疾患の患者」だと発言。この発言は2度目になるが、コメディアンのラリー・ウィルモアは「消えろ」と応じている。
ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。
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