パトレイバーで考える、景気対策と住宅購入。

自分は普段、住宅購入の相談・アドバイスを提供しているので、家が沢山売れるほど客数は増える。しかし、住宅購入支援のカンフル剤は全くと言っていいほど歓迎できない。
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総選挙が終わり2014年度の補正予算が発表された。その額は3兆円を超える規模になるという。

中身を見ると、生活支援や消費喚起のために商品券・旅行券を配ったり、住宅市場の活性化を目的に住宅エコポイントの復活等を検討していると報じられている。

7~9月期のGDP成長率は予想に反して大幅なマイナスに落ち込み、急激な円安で物価高が進んでいる。このような状況では景気対策の話が出てくることは仕方がないのかもしれないが、金融緩和による円安誘導はそもそもアベノミクスの柱でもあり、ほとんどマッチポンプだ。

■税金による住宅購入支援は辞めるべき。

自分は普段、住宅購入の相談・アドバイスを提供しているので、家が沢山売れるほど客数は増える。しかし、住宅購入支援のカンフル剤は全くと言っていいほど歓迎できない。

消費税増税後の反動があったとはいえ、現在金利は歴史的な低水準にあり、円安・人手不足による住宅価格の上昇も一旦落ついたように見える。ローンの借入額に応じて所得税・住民税が減る「住宅ローン減税」も以前と変わらず続いている。

しかし、それにも関わらず首都圏の住宅販売は10ヶ月連続で前年同月比割れとなっている(不動産経済研究所・首都圏のマンション市場動向2014年11月度)。公表されている支援策は焼け石に水でしかない。しかもこれは家を買うだけの余裕がある家庭への公的支援であり、税金を使った再分配としては格差を拡大するものでしか無い。

本来税金は所得の多い人・企業から集めた税金を所得の低い人へ分配することで安定した社会を実現するために行われるべきだが、OECDの指摘によれば、日本では税金による再分配後に格差は拡大しているという。つまり貧乏人から集めた税金をお金持ちに渡していることになる。

■カンフル剤=ドーピング。

100歩譲ってそれで景気が良くなるのならまだ良いが、現実には景気対策にはなっていない。エコポイントで一時的な活況から大赤字に転落した家電メーカーを見れば分かるように、カンフル剤は本来ドーピングとでも呼ぶべきものだ。短期的に効果の後にやってくるマイナス効果は大きく、本来であれば禁じ手ということだ。

このような巨額の支援策が簡単に出てきてしまう状況を考えると、子育て支援に予算が4000億円足りないと言われていたのは一体何だったのか。3兆円も使う余裕があるのなら、子育て支援に全てつぎ込めば良い。

■家を買う人にとって必要なものは「安定した収入」。

家を買ってもらう事は最大の景気対策である事は間違いない。家自体が高額な買い物で、同時に購入される家具や家電なども経済的な波及効果は大きい。景気対策の視点から見れば何とか家が売れて欲しい、と考えるのも良くわかる。しかしやり方が間違っている。

普段の住宅購入相談で、一番ネックになるのが女性の収入・就労だ。多くの人は結婚して子供が生まれると家を買おうと考える。タイミングとしては女性が産休・育休や時短勤務中であることが多い。つまり、家がほしいタイミングは夫婦にとって今後のライフプランが最も不安定な時期と重なる。今後も働き続けられるか、収入は安定して得られるか分からないからだ。

もしこの状況で奥さんの側が確実に仕事へ復帰出来るのであれば、夫婦は安心して家を買うだろうし、予算についても500万円、1000万円と上乗せする事も出来るだろう。継続して仕事が続けられるのであれば、住宅ローン減税も住宅エコポイントも関係なく家を買うだろう。

夫婦の家を買いたいという願望は非常に強い。それでも家が売れないのは多額のローンを何十年にもわたって返済できるか不安を抱えているからだ。そんな不安が数十万円のエコポイントや数百万円の住宅ローン減税で解消できると思うのはとんでもない勘違いだ。

今後の住宅購入支援は直接的なものは全て廃止して母親の就労支援や保育園の完備など子育て支援に予算を回せば良い。4000億円なんて簡単に捻出可能だ。つまりドーピングをやめて体質改善を図るべき、ということだ。国の借金の増加や年金がもらえないのでは?という将来の不安が消費低迷につながっていることを考えれば、何もしないことが最高の景気対策と言っても過言ではないだろう。

もしそれでも、ど~しても直接的な支援や公共事業による景気対策をやりたいというのであれば、「バビロンプロジェクト」を実行すれば良い。

■バビロンプロジェクト、再び。

バビロンプロジェクトとはかつて人気を誇った「機動警察パトレイバー」という作品に出てきた巨大な公共事業だ。今年はパトレイバーの実写版映画が公開され、物語の舞台となった埋立地を意識したのか、今年3月には豊洲で実物大1/1のパトレイバーがお披露目されている。その後も全国各地でパトレイバーの目的情報が度々伝えられている。

興味のない人にとってはどうでもいい話題だろうが、パトレイバーファンにとってはガンダムがお台場に立った時よりも興奮するような事件だったに違いない。

そういえばそんなロボット漫画があったっけ?といった程度の認識の人はご存知無いと思うが、パトレイバーは非常にリアルな物語だ。

■パトレイバーのリアルな設定。

「機動警察パトレイバー」が漫画で連載されていたのはバブル絶頂期から崩壊を迎える1990年前後だ。

舞台は20世紀末の日本、異常な不動産価格の上昇と温暖化による水面上昇に備えて、東京湾を干拓・埋め立てることで新たに土地を作り、二つの問題を解消するという超大規模なプロジェクトが進められていた。それがバビロンプロジェクトだ。

この工事のために生み出された工事用の機械がレイバーだ。レイバーは非常に便利な一方で大量に生産・運用されることによって、レイバーを使った犯罪が多発する。それに対抗するために、警視庁が新たに創立したのがパトロールレイバー中隊、つまりパトレイバーだ。

バブル期の地価上昇や、当時から指摘されていた温暖化、そして海面上昇など、パトレイバーはこういった社会的背景によってロボットが存在する必然性を説明している。

さて、このような大規模な公共事業が今の日本で行われたらどうなるのだろうか。家余りで空室率が上がっている現在となっては意味のない工事に思えるが、実は案外悪くは無いアイディアだ。

今後家余りが起こることは間違い無く、何も手を打たなければ、新築住宅の増加と人口減少によって40%まで空室率が上がると言われている。一方で、人気の高い場所に建てられた新築マンションはあっという間に完売することは珍しくない。新築のファミリー向けマンションが1億円近くもするような地域もある。

つまり、不便な場所にある質の低いマンションが敬遠される一方で、便利な場所に建てられた質の高いマンションは供給があまりに不足している。

東京の湾岸地域は都心部に近く移動が便利な場所として、タワーマンションが林立し、需要は決して低くない。

住宅購入に関する記事は以下も参考にされたい。

もちろん、バビロンプロジェクトはあくまでフィクションであり、このような大規模な公共事業を今はじめてしまったら、人手不足に拍車がかかる。住宅地として使えるのも何十年も先だろう。しかし、東京の土地を何倍にも増やす現実的なプランはある。しかも明日から実現可能な簡単な方法だ。これは次回の記事で書きたい。