米国司法省(の警察機関である FBI)とアップルの間で繰り広げられている『iPhoneロック解除をめぐる争い』で、FBI は第三者からロック解除方法を入手したとして22日に予定していた審問の延期を要請、連邦地方裁判所はこれを認めました。
本当にロックを解除できるかどうかはこれからの試験の結果次第とのことで、裁判所は4月5日までに結果を提出するよう命じたとしています。
この争いはカリフォルニア州で発生した銃乱射事件の捜査において、FBI が犯人の所持していた iPhone 5c に手がかりがあるとして、アップルにロックの解除を要請しているもの。
アップルのティム・クック CEO は「これまでにも何度も FBI からの iPhone ロック解除要請に応じてきた」としています。しかし今回の件に限って頑なに協力を突っぱねている理由は、FBI からの要望がほぼ自動的にロック解除可能なツールを作れというものだったから。
これは1994年に米国で成立した通信傍受支援法を根拠とするものですが、クック CEO はこの要請を「バックドアツールを作れと言っているに等しい」として拒否することを表明しました。またマイクロソフトや Google、Facebook、Twitter といった企業は、こぞってアップル支持を表明しています。
実は、iPhone 5c ならばロック解除はそう難しいものではないという話もあります。しかし、iPhone 5s が搭載する A7 プロセッサー以降では、パスコードや指紋情報を含むユーザ-のプライベートに関わる情報が Secure Enclave 領域へ「安全に」保管されるため、アップルでさえもアクセスはできないことになっています。FBI は今回のケースをきっかけとして、iPhone 5s 以降であっても自由にアクセスできるツールの製作をアップルに要求しているとも言われます。
裁判所は 3月22日に、この件についての審問を予定していました。ところが直前になって FBI 側がこれを延期するよう要請したことが明らかになりました。その理由は「第三者からロック解除の方法を入手できるかもしれないから」とのこと。
アップルにとって気がかりは、第三者が iPhone 5c のロック解除ができるだけなのか、それともiPhone 5s 以降でもロック解除可能な、アップルも知らない脆弱性を知っているのかということかもしれません。
もしそれが条件を満たすようなものなら、FBI は自前で iPhone のロック解除が可能となり、世界中の iPhone に自由に出入りできるようになる可能性があります。また、FBI のアップルへの要請も無意味となるため取り下げられ、逆にアップル側がその脆弱性の開示を求めることになるかもしれません。
一方、第三者の方法が有効でなければ再び裁判所に戻って、アップルとの審問を続けることになるはずです。
裁判所は FBI 側に対し4月5日までに経過を報告するよう指示しています。
(2016年3月22日 Engadget日本版「FBIがアップルとの法廷審問を延期。iPhoneのロック解除方法を第三者から入手か」より転載)
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