韓国の朴槿恵大統領は10月24日、自身の任期中に憲法改正を実現することに意欲を見せた。大統領の任期を、現在の最長で1期5年から、2期8年に伸ばすことが主眼にあるとみられる。
この日、国会での施政方針演説で「任期内に憲法改正を実現するため、政府内に憲法改正のための組織を設置し、国民の意向を汲んだ改憲案を準備する」と、約1年半を残した自身の任期中に取り組むとした。
ハフポスト韓国版が伝えた演説内容によれば「韓国の政治は大統領選挙の翌日から、次の大統領選挙が始まる政治体制のため、極端な政争と対決構図が日常となり、国民生活より政権奪取を目的に闘争する悪循環が繰り返されている」「政策の連続性に欠け、持続可能な国政課題の推進の結実が難しく、対外的に一貫した外交政策を展開するのも難しい」と述べており、大統領の再選を認めない現行規定を見直したいとみられる。
■再選禁止の規定でレームダック化
韓国ギャラップによる、1988年以降の歴代大統領の支持率(朴槿恵氏がオレンジ線)
1987年の民主化で改正された韓国の大統領の任期は、1期5年で再選を認めていない。このため任期の折り返し点となる3年目になると、求心力が急速に低下し、レームダック化することが繰り返されてきた。
朴大統領も例外ではない。10月20日時点での支持率は25%、不支持65%(韓国ギャラップ)となった。ハフポスト韓国版は「レームダックの危機に瀕した朴槿恵大統領は、改憲カードで政権の当面の危機を反転させることができるようになった」と、改憲論議で残り任期の国政の主導権を握る狙いがあるとみる。
改憲案は大統領または国会の過半数の議員が発議でき、国会の3分の2以上の賛成で改正される。仮に再選を認める改憲案が可決されても、現職大統領には適用しないと現行憲法に規定されているため、朴大統領が2017年末の大統領選に立候補することはできない。
■実現へのハードルは高い
大統領の意向だからといって実現するとは限らない。与党・セヌリ党は国会の定数300のうち129議席に過ぎず、過半数に満たない。その与党内も一枚岩ではない。
与野党の有力者には現行の大統領制の問題を指摘する人は多いが、再任を認めるのか、それとも議院内閣制に移行して大統領の権限を分散するのか、意見は割れている。
1977年、投票する朴正熙大統領(右)と、娘の朴槿恵氏
朴大統領の父の朴正熙・元大統領は、当初禁じられていた3選を可能にする改憲や、直接選挙をやめて間接選挙に変更する改憲を強行し、1979年に暗殺されるまで約16年にわたって大統領に君臨した。こうした歴史があり、任期延長につながる改憲自体にも抵抗が強い。
実は2007年1月には、任期満了まで約1年となった当時の盧武鉉大統領が、同じ趣旨で改憲を主張したことがある。しかし「選挙目的の改憲論」と激しく批判したのは朴槿恵氏だった。2016年4月の報道機関幹部の懇談会でも「この状態で改憲をすれば、経済をどうやって回復させるのか」と否定的な見解を示していたが、景気回復の道筋が依然として見えない中での突然の改憲の意向表明は、以前の言行との整合性を問う声も出そうだ。