パリジェンヌがスレンダーな理由 (後藤百合子)

ある年代になるとどの国でも体型の悩みを抱える人が増える傾向にあると思います。ところがフランス人、特にパリジェンヌに目を向けるとずいぶん事情が違ってきます。
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Vincent Besnault via Getty Images

■中年以降もなぜか太らないパリジェンヌ

仕事で数年おきにパリに行きますが、そのたびにパリ女性に痩せてる人が多いことに驚かされます。

日本でも「中年太り」という言葉があるように、ある年代になるとどの国でも体型の悩みを抱える人が増える傾向にあると思います。ところがフランス人、特にパリジェンヌに目を向けるとずいぶん事情が違ってきます。

たとえばクリスティーヌ・ラガルドIMF専務理事、福島原発処理で来日したアンヌ・ロベルジョン元アレバ社長、オランド大統領の元パートナーで政治家のバレリー・トリルベレールさんなど、中年から初老にかけて一番太りやすい年代なのに、みな驚くほどスレンダーなのです。ひょっとしたら、この年代の平均的な日本人より痩せているかもしれません。

■スリムの秘密は粗食にあり

その理由は一言でいうと「粗食」にあるのではないかと思います。パリジェンヌが日常摂っている質素な食事が結果的にほどよいダイエットになっているのではないか、というのが私の推論です。

まずパリにはレストランが少ない。きちんと調べて予約をしていけばもっとあるのかもしれませんが、ただ街を歩いているだけでは探すのに苦労するくらい少ないという印象です。逆に「犬も歩けば」と思うほど多いのがパリ名物のカフェ。1杯のコーヒーやグラスワインを片手に、何時間もおしゃべりに興じているにもかかわらず、食事をしている人はほとんどみかけません。

そのわけは、とにかく外食費が高い、ということでしょう。以前パリに住んでいた友人が連れていってくれたレストランの料理は同じような東京のレストランと比べ1.5倍から2倍ほどの値段で驚きました。彼女によると、パリの一般人は記念日やお祝いを除き、普段は節約のため外食はほとんどしないとか。

■食事は質素に、時間は贅沢に楽しむ。

では、彼女たちは自宅ではいったい何を食べているのでしょうか? レストランに比べ食料品店ではそれほど物価が高い感じはしませんが、パンとチーズを除けば品揃えはさほどよくもなく、やはり質素な感じがします。最近のフランス映画を見ていても、親子で囲む食卓で食べているのが豆や野菜の煮込みとパンだったり、シンプルなスパゲッティとサラダだけだったり、簡単に調理できてカロリーが低そうなものばかりです。

ホームパーティーなど特別な機会を除いて滅多に料理の腕をふるうことはせず、普段の食事は質素が基本。一昔前に学校で高校生が料理を習っていた頃とは違い、フランスの女性就業率は2013年で76%(日本69%)と比較的高く、管理職も39%(日本11%)と女性の社会進出が進んでいますから、自然と料理にかける手間も省くようになっているのでしょう。

またフランスでは子供の約半数が結婚せずに産まれた婚外子でシングルマザーも少なくないにもかかわらず、合計特殊出生率は2013年には2.01となり(日本1.43)先進国の中では最高レベルになっています。これにはベビーシッター制度をメインとした子育て支援政策が大きく貢献していますが、同時に、家事にもさしてこだわらず、個人の自由時間を大切にするフランス人の気質が大きく影響しているように感じます。

料理に手間をかけたり外食に贅沢をしたりするのは特別な楽しみにとっておき、日常はできるだけ負担をかけずに仕事も生活も楽しむのがパリジェンヌ風。おまけに苦しいダイエットもせずにスレンダーなボディをキープできるのなら、まさに合理主義の国フランスらしいライフスタイルといえるでしょう。

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後藤百合子 経営者