パリの路上で、難民は寒さに震えて眠る 受け入れ体制が整っているはずの街で何が起きているのか【ルポ】

センターに入れる難民とそれ以外の人々の落差は凄まじいものだ。
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ボランティアによれば、パリの高速道路の下にあるこの野営地には約60人が住んでいるという。WILLA FREJ/HUFFINGTON POST

【パリより、ウィラ・フレッジ記者のレポート】フランス北部のカレー市で、難民キャンプが膨れ上がって「ジャングル」と称された木造の建物が燃え、その中で移民が狂ったように逃げ惑うイメージは、過去のニュースの記憶となった。だが、フランスの移民や難民の闘いが緩和されたわけではなく、その多くはまだ悲惨な生活を送っている。彼らは移転させられたばかりで、その窮状は過去数カ月の間、人々の目からは隠されている。

パリ、より具体的にはポルトドゥラシャペルと呼ばれる市北東部にある地区は、2016年10月の「ジャングル」の解体以来、フランスの難民危機の新たな中心地となっている。そこは、他に行き場がない人が集まる場所で、現在も活動を続けるボランティアグループの活動の中心となっている場所でもある。

特に、ベースキャンプとして機能する場所は、サーカスのテントのようなドームがある、黄色と白の難民受付センター「Centre Humanitaire Paris-Nord」に隣接している。このセンターは、男性の難民や移民を数日間だけ一時的に収容するためにパリ市が建てたものだ。他に、女性や子供向けの施設もパリの他の場所にある。センターは、彼らをより長期的な収容施設となる全国のオリエンテーションセンター「Centre d'Accueil et d'Orientation(CAO)」に移動させようと働きかけているが、センターの最大収容人数はわずか400人だ。

センターに入れる難民とそれ以外の人々の落差は凄まじいものだ。ボランティアが「ライン」と呼ぶ、センターに入れない難民たちが占拠する場所は、幅60センチほど。難民や移民はその入所申請ラインに一列になり、寝袋や毛布を設置して並び、センターに入所できるのを待つ。

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「ライン」の生活は、寒さに耐え、ボランティアによる食料や毛布などの配給を待つことだ。WILLA FREJ/HUFFINGTON POST

パリの屋外で生活する移民や難民の数は数百人に増えたと、「ジャングル」で生活する難民を支援するために設立された「Care4Calais」の創設者クレア・モゼリーさんは語った。ここには難民認定を受けたものの、住居がまだ見つからない人々も含まれる。

そして数字は膨らみ続ける。

「毎日50人から100人の人々が到着してきます」と、過去5カ月にわたりボランティアをしているイギリス人のヘザー・ヤングさんは言う。「カレーからも、CAOからも、他のセンターからも、ドイツ、オランダ、イタリアからも来ています。ここ数週間は、主にドイツとオランダからです」

彼らの命運は完全に、ボランティアと、少ない食料、暖をとる道具、それに集めることのできた薬などを配給する支援団体にかかっている。

配給が行われるのは夜間だとモズリーさんは言う。彼女と「Care4Calais」の他のボランティアが、サンドニ郊外にある中国の倉庫管理会社に注文した大量の手袋を車で取りに行った。

「安い手袋を見つけるのに苦労しました」と彼女は語った。 「ここでは一組50セント(約57円)です」

「自分たちの番を待って立っている難民の男性たちはそれまで比較的落ち着いていたのに、日が暮れるにつれ、攻撃的になっていくのです」と、ヤングさんは語った。道路の片側にアフガニスタンの男たちが座り込み、その反対にはスーダン人がいた。

「昨日も、警察がここを離れた直後、真夜中に喧嘩が起きました」と、ヤングさんは言った。

「私たちは今朝5時までここにいて、喧嘩を仲裁しようとしました。ここには棒やナイフ、木のかけらがあったんです」と、ヤングさんは話した。「警察がいないから、私たち6人で暴動に対処したのです」

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難民や移民が寝ている野外の区域は、巨大なゴミ箱と化している。WILLA FREJ/HUFFINGTON POST

市の役人は、屋外で生活する難民の数について反論し、「責任をもって状況を管理している」と主張した。

「9日の時点では、橋の下で143人が寝ていましたが、彼らは全員センターでの面会を待っていました」と、パリ市報道官のイスマイル・マンソーリ報道官は語った。「国と市の当局は、施設外の難民の世話をし、CAOや地域の移民緊急避難所に送りました」

当局は毎日到着する入国者の数が増えていることを認識し、迅速にセンターの面会者数を増やしたとマンソーリ報道官は反論した。また、屋外生活者のために、事前に面会時間を設定できるシステムも作っているという。

「パリ市は謙虚さと慎ましさをもって、ここまで多くの人々のために場所を見つける努力を重ねてきました」と、マンソーリ報道官は付け加えた。「奇跡的な解決策ではありませんが、我々の目標は、こうした路上生活の代替策にすることです」

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難民の男性たちは、食べ物を受け取れる夜のとばりが下りるのを待っている。運が良ければ毛布が受け取れるかもしれない。

次の場所に移るのを待つ移民や難民が、温かい食事や寝袋を求めて集まってくる場所は、パリだけではない。「カレーにもまた人々が集まり始めています」と、モズリーさんは指摘した。「でも、私たちボランティアは、ここにしかいません」

フランス当局は、「ジャングル」解体の理由は、環境が極めて劣悪化し、イギリスに密入国しようとする難民にとってあまりに危険だったためだと言った。

結果、彼らを収容するインフラがなくなり、警察は不法占拠の撲滅活動に乗り出した。「難民たちは森の中に身を隠し、日没を待っています。少数のボランティアが食べ物、時には毛布を持って来るのを待つ難民もいます」と、モズリーさんは語った。

「先週、警察は2回にわたって立ち入り、彼らのテント、寝袋を取り上げ、全ての所持品を没収しました」と、モズリーさんは付け加えた。

モズリーさんは、イギリスが3000人のシリア難民の子供を受け入れる「ダブス修正案」を撤回したため、成人の同伴者がいない子供が最も危険にさらされていると指摘した。イギリスは350人の子供しか受け入れなかったため、残りの子供たちはみんなフランスにとどまっている。

「フランス政府が『ジャングル』を閉鎖した時、多くの子供たちは『バスでイギリスに行けますよ』と説明されました」と、モズリーさんは語った。「彼らはもうシステムを信用していません。だから、フランス国内のセンターから逃げ出してカレーやパリに集まってくるのです。でも、カレーには彼らのための場所はどこにもないのです」

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

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