この夏、カリフォルニア州に住む夫婦エミリー・ステイリーとリチャード・ステイリーは、親として最も悲しい出来事を経験することになった。エミリーが身ごもった女の赤ちゃんは死産となってしまったのだ。
しかし、ある写真家がこの夫婦の悲劇を写真で伝えたことにより、ほとんど語られることのない死産の悲しみについて考えるきっかけになることだろう。
Fstoppersによると、エミリー・ステイリーは妊娠8か月が過ぎたころのある朝、元気いっぱいに蹴っていたお腹の赤ちゃんが、全く動かなくなったことに気づいた。病院へ行って超音波検査を受けると、悲しい現実が待ち受けていた。赤ちゃんが子宮の中で亡くなっていた。ショックと悲しみで動揺する中、彼女は死産となってしまった娘を帝王切開で出産することを、リチャードがそばにいられる翌日の早朝に行うことを決めた。そこで彼女は友人に、「家族」の大切な時間を写真に収めてもらおうと、写真家に病院に来てもらうよう頼んだ。
これは珍しいことではない。個人写真家や「Now I Lay Me Down To Sleep」のような団体が長年、悲しい思いに暮れる親たちに「思い出の写真」を提供している。
写真家で三児の母でもあるリンジー・ナジック・ビラトロは、末期患者や回復中の患者、さらには亡くなった人の写真などを撮影し、『Forever Loved』というシリーズを製作している。ステイリー家の友人が彼女に撮影を依頼をしたとき、リンジーはすぐにエミリーに電話をかけ、Facebookにも今回の撮影について記した。
出産の朝、リンジーは手術室に同席し、病院でステイリー一家と数時間を過ごした。リンジーは、夫婦と死産となった娘のモンロー・フェイス・ステイリーの写真を撮影した。彼女はFacebookに、「心に刻まれた光景すべてにシャッターを切りました。私が写真として残すことができる、娘さんの思い出すべてをこの家族に差し上げたいと思ったのです」と記している。
リンジーが写真とともに心揺さぶるストーリーをFacebookに投稿すると、すぐにネットで拡散した。モンローの葬儀のために設立された基金への寄付をはじめ、ステイリー家への支援が一斉に寄せられた。予想をはるかに上回る寄付が集まったため、この基金へのリンクは削除されたとリンジーはハフポストUS版に語っている。
リンジーはこれまでも死産になった赤ちゃんを何度も撮影している。しかし、彼女にとってこうした特別な体験はいつも身につまされるという。「本当につらかったです。この赤ちゃんが分娩されたのが、11カ月になる自分の子供を産んだのと同じ病院でしたから」とハフポストUS版に語った。「私の赤ちゃんを取り上げてくれた2人の看護師が、エミリーの赤ちゃんを取り上げたのです。 現実とは思えない経験でした。なんと言っていいのでしょうか……自分にも起こり得たことでもあるわけですから」。
リンジーは、この写真とステイリー家の経験が、同じように辛い経験をした家族への励みになればと願っているという。「私が写真を撮っている依頼主だけでなく、他の人の心にも訴えることができればと思っています。依頼主が、他の人たちと経験を共有することに前向きなら、私は他の人にも何かを感じ取ってもらえるように、光を当てたいのです」。
さらに、リンジーは自分の撮る写真が、死産を取り巻く沈黙を打ち破る助けになること、とりわけ死産した子供の親たちの支えになることを願っているという。「人はえてして死産の子供はそもそもこの世にいなかった、と思いがちです。そして夫婦には親になったという証が与えられません。しかし私は、死産で子供を出産したとしても、その人は母親であると強く信じています。子供が生きていないという事実とは関係なく、母親なのです」。
ここに紹介する写真は非常に繊細で、美しく、そして哀しい。
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