私は2016年、長男出産後に前妻を亡くしたため、産後の育児を夫婦で楽しむという経験ができませんでした。翌年に今の妻と再婚し、2018年4月23日、次男が無事に誕生しました。前妻とは成しえなかった、夫婦の共同育児を今度こそ満喫しようと思います。
育児を夫婦で満喫する絶対条件はお産に夫が立ち会うことだと思います。私は身を持って経験しているからわかりますけど、お産は命掛けです。家族のために女性が命を懸けてくれるわけで、育児のスタートラインに1人で立つか2人で立つかが問われています。私が留学していたスウェーデンとかでは90年代からすでにほとんどの夫がお産に立ち会うようになり、ごく当たり前のことだと思っていましたが、2年前に日本に戻り、日本ではいまだに4割の妊婦が一人で命がけの行為に挑んでいるという現状にショックを受けました。
夫が立ち会うべきと思う理由は以下の四つです。
1.夫は妊婦の精神安定剤
病院にいるから、常に医療スタッフが妊婦のそばにいると思ったら大間違いです。私の妻も実際入院してみて、2-3時間以上分娩室に放置されるのに驚きました。勿論、呼べば来てくれますが、妻の病院は助産師不足でかなり多忙な感じでした。妻の場合、午前6時に入院してから、午後11時に子宮口が9センチくらいになるまでの間は、2-3時間に一回、診察してもらう以外はほとんど放置でした。命がけの行為なのに、誰もいない部屋で、いつどんなペースで進行するかわからないお産に向き合うだけでも精神的負担は大きいいでしょう。夫がそこにいるかいないかで大分違うはずです。ちなみに産科医が現れるのは、長時間に及ぶお産の最後の最後だけです。
2.夫は妊婦の介護者
陣痛が始まったら、妊婦はあまり動くことができなくなります。スーツケースから携帯の充電器やホッカイロを取り出したり、靴下を履くことさえも難しくなります。病院内の店で飲み物を買いに行くなんて絶対無理です。「これ飲みたいから買ってきて」と言える人がそばにいるかいないかで、妊婦の精神状態は全く違うものになるでしょう。
3.夫は妊婦の広報官
陣痛が始まったら、両家の親らが頻繁に状況を知りたがってきます。私の両親なんか「今から様子を見に行くわ」とか言ってきました。しかし、妊婦はそれに対応するだけの余裕がありません。夫が妻の代わりに、「今はちょっと入らないでほしい」とか「現在、陣痛は何分おきになりました」と報告してあげるだけでも助かるでしょう。
また、私たちの様に上の子がいて、その子が病棟に入れない場合、その子の預け先のコーディネートも夫がしてあげましょう。私は叫び声を上げる妻の横で、家族や知人に電話をかけ、「じゃあ、何時から何時までお願いします」「オムツ足りなければ持っていきます」などとアレンジしました。
4.夫は妊婦のマッサージ師
体をさすってあげるだけで陣痛は大分やわらぐようです。妻の場合、背中をさすったり、テニスボールをお尻に押し付けるのがよかったようです。「さする」と簡単に書きましたが、10分、20分と普段使わない筋肉を使い続けるのは結構大変な作業です。
以上の理由から立ち会うメリットは明白なのに、なぜ4割もの人が一人でやるのでしょう?いくつかの理由をみてみましょう。
1.妻がもがき苦しむところを見られるのが恥ずかしい
確かに大声を上げるし、吐いたりするし、血も出るので美しいとはいえない光景もあるかもしれません。妊婦が嫌がることはすべきではありません。それでも、夫から一言「人生で一番大変な時間を一緒に共有したい。お願いだから立ち会わせてほしい」とお願いはしてほしいです。それでも妻が恥ずかしいというのなら、それは仕方のないことです。ただ、妻が「恥ずかしい」というのは、立ち会いたくない夫を気遣って言っている可能性もあるため、夫からしっかり寄り添いたい意思を伝えることが大事でしょう。
2.血を見たら失神する
病室で血を見た夫が失神したら、妊婦は困るでしょう。でも、陣痛の間、私はほとんど血をみることなく過ごせました。診察や出産の際は妻の頭部分の方へ行けば、すべてを見なくていいわけですから。「立ち会う」=「すべてを見る」とは違います。おそらく妊婦の大部分も夫にすべてを見てほしいなんて思っていないでしょう。その辺はしっかり夫婦で話し合っておくことが大事です。
3.長時間役に立ち続けられない
確かに長時間付き添う方も辛いです。正直な所、私は20時間付きっ切りで介護はできませんでした。約2時間分娩室内にあるソファで仮眠をとらせてもらい、30分ほど病院を出て散歩にも行かせてもらいました。ここも妻としっかりコミュニケーションがとれていれば大丈夫でしょう。無論、陣痛が絶頂の時に夫がスマホをいじって気分を逆なでしてしまうこともあるようですが、そこはしっかり事前にシミュレーションをしておきましょう。大事なのは、ずっと役に立ち続けることではなく、妊婦に「この人一生懸命助けようとしてくれているな」と思ってもらうことです。
無事出産後、妻は「私一人であれをすべてやるなんて想像できない。多分、できなかったと思う」と言ってくれました。私も同じです。子宮口の開きが止まったり、突然痛みが強まったり、吐き気に襲われたり、分娩室というのは、とにかく予想不可能なことが継続して起きます。子育ては共同作業です。しっかりしたチームワークがあるかどうかで、楽しめるかどうかが決まります。そして、予測不可能なことが起きるお産は夫婦のチームワークの礎を作る最大のチャンスなのです。どうかこのチャンスを逃さず、一緒に育児を楽しみましょう!