米津玄師が紅白で歌った礼拝堂が注目集める。大塚国際美術館ってどんなところ?

陶器で名画を再現した徳島の美術館。紅白歌合戦の中継場所となったシスティーナホールは、実物の礼拝堂を完全再現している。
|
Open Image Modal
大塚国際美術館のシスティーナホールで演じられた演目の数々
時事通信社

12月31日の紅白歌合戦、初出場となる米津玄師さんは徳島県内から中継映像で参加した。大量のキャンドルと壁画に囲まれた礼拝堂のようなステージに登場。ドラマ『アンナチュラル』の主題歌として知られる「Lemon」を歌い切った。その荘厳な様子に「どこで歌っているのか?」とネット上で注目を集めている。

中継で使われたのは、徳島県鳴門市の大塚国際美術館にある「システィーナ・ホール」。バチカンのシスティーナ礼拝堂を原寸大に立体再現した建物だ。

高さ16メートルの位置にある800平方メートルの天井を彩るのは、旧約聖書の「創世記」の物語や、「最後の審判」などの名画。ただし、紙やキャンバスに描かれたものではなく、陶器の大きな板に原画に忠実な色彩・大きさで作品を再現した「陶板名画」となっている。

なぜ陶板名画なの?

大塚国際美術館には、システィーナホールだけではなく、ダ・ヴィンチ「モナリザ」やミレーの「落穂拾い」、ゴッホ「ひまわり」など、約1000点の陶板名画が展示されている。

キャンバスや紙の絵画ではなく陶板名画であるのは、美術館のある鳴門市ゆかりの素材・白砂が、美術という分野で使われているためだ。

うず潮などで有名な鳴門市は、もともと建材として利用される白砂が採取される土地だ。この白砂をタイルにすることで砂の価値が上がり、地元経済の活性化にもつながると考えたのが、地元発祥の企業、ポカリスエットなどを販売する大塚製薬だった。1971年のことだ。

しかし、オイルショックで石油価格が高騰。工場を稼働できなくなる危機に。そこで、白砂を建材としてのタイルではなく、美術用のタイルとして使おうと決めた。

美術館の広報担当者によると、初代館長は大塚グループを率いていた大塚正士氏。彼は大塚グループ発祥の地である鳴門市に教育や文化の分野で恩返しがしたいと考え、美術館を建てたのだという。広報担当者はハフポスト日本版の取材に、「小さいときは陶板名画で名画に親しむ。大きくなったら、 原画を自分の足で見に行きたいと思えるように、という考えがあったようです」と話した。

なお、名画は陶器で出来ているため、近づいたり触ったりして鑑賞することができる。また、陶板名画にすることで、名画を約2000年以上にわたってそのままの色と姿で残すこともできるため、文化財の記録保存のあり方にも貢献したいという。

システィーナホールでは、歌舞伎などのイベントも行われる

米津さんが歌ったシスティーナホールは、普段は観賞用に使われており、ルネッサンス期の音楽が厳かに流れる中を自由に見て回ることができる。 また、多目的ホールとして利用することもでき、イベント時には照明の色が変わったり、舞台装置が建てられたりするなど、一風変わった使われ方もする。2月には片岡愛之助らが出演するシスティーナ歌舞伎が開催される予定だ。

2017年度は約38万人が訪れた

美術館は地下3階から2階までのフロアからなる。システィーナホールのように、古代遺跡や教会などの壁画を環境空間ごとそのまま再現した作りが特徴で、鑑賞距離にすると約4キロになる。

広報担当者によると、同美術館には2017年度は年間約38万人が訪れた。単純に365で割ると、1日1000人を超える計算だ。例年、年末年始も開館しており、この期間中は帰省客や観光客などで賑わいを見せる。米津さんの影響もあり、元旦の今日も、通常より訪問者は少し多い感じだという。

※2019年1月は1〜6日まで開館するが、7〜11日が休館になるなど不規則なので、訪問の際は公式サイトのスケジュール情報で確認を。

--

【訂正】2019年1月の美術館の開館スケジュールについて、「7〜15日が休館になるなど」と表記しておりましたが、正しくは「7〜11日が休館になるなど」でした。(2019年1月3日00:17)