臨時国会がなかったせいで、全国の地方議会で公務員給与に関する矛盾が爆発中...

東京都職員の給与引き上げに関連する一連の議案には反対を致しました。

こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。

本日は都議会本会議最終日、議案の採決が行われましたが、その中の一つで

東京都職員の給与引き上げに関連する一連の議案には反対を致しました。

(あまり注目されることのない、都議会議事堂の天井)

私はなにも盲目的に

「公務員の給料は高すぎる!」

「身を切る改革で、公務員給与の2割削減を!」

と主張するつもりはありませんが、

何もこのタイミングで引き上げる意味はまったくないと思います。

参考過去記事:

東京都職員の給与、2年連続で引き上げ方向...。消費税増税を控えて、世間に「納得感」はあるか?

上記の記事でも問題点を指摘しましたが、民間の給与水準(大企業のみ)と比較して、

そちらが上がっているから公務員給与も上げましょうというのは、

いかにも前時代的な思考停止のやり方です。

今回の給与引き上げで今年度東京都が被る財政インパクトは、

合計でおよそ101億円にものぼります。もちろん、来年度以降も継続負担です。

現時点ですでに高い東京都の職員の給与を薄く広く0.1%引き上げても、

生活水準向上やモチベーションアップにつながる効果は期待できないと思います。

一方で、この101億円を子育て支援や介護などに集中投資するならば、

かなりリターンの大きな政策を実行することもできるはずです。

加えてもう一つ、引き上げに慎重でなければいけない理由があります。

それは今年は53年ぶりに臨時国会の開催が見送られたため、同じく引き上げ勧告が出ている

国家公務員の給与が現時点では変更されていないことです。

地方公務員の給与を考えるときに、

地方公務員法24条3項「均衡の原則」が非常に大きな意味を持ちます。

【地方公務員法24条3項】

職員の給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない。

今回、引き上げを示唆している人事委員会勧告は

「公民較差」の是正に関するものであって、国会公務員は比較の要素に入っていません。

しかしながら地方公務員の給与は、

「仮に民間給与が著しく高い地域であったとしても、公務としての近似性及び財源負担の面から、それぞれの地域における国家公務員の給与水準をその地域の地方公務員の給与の水準決定の目安と考えるべきである」

と、民間よりも国家公務員を優先基準とするべきことが定められています。

※「地方公務員の給与のあり方に関する研究会報告書(平成18年)」および

「地方公務員の給与制度の総合的見直しに関する検討会報告書(平成26年)」より

これまで地方公務員の給与が引き上げられる場合は、

まず臨時国会で国家公務員の給与引き上げが決定され、

それから後を追うように地方公務員の処遇が決められていました。

この順番であれば、「均衡の原則」を順守することができます。

ところが今年は、臨時国会がなかったため、国家公務員の給与が上がっていません。

来年の通常国会で審議されるものの、現時点では否決される可能性もゼロではないのです。

この状況下で地方公務員の給与を「見切り発車」でアップさせることは、

均衡の原則を揺るがす事態にもなりかねません。

人事委員会勧告は秋に行われ、冬の最後の定例会で議決されるのが、

地方議会の慣例です。なので、基準となるべき国家公務員の給与が定まる前に、

全国各地の自治体で地方公務員の給与が上がるという異常事態が発生しています。

...まあもちろん、国家公務員給与の引き上げ法令が否決される可能性は

極めて低いと言わざる得ませんが、安倍政権が臨時国会を見送ったせいで

こんなイレギュラーな事態も発生しているということです。

ささいな事象かもしれませんが、アリの一穴がダムを崩壊させることがあります。

逃げの姿勢で臨時国会を避けることが慣例とならないよう、

地方議会の立場から警鐘を鳴らしておきたいと思います。

ちなみに東京都議会では、職員給与アップに反対したのは

我々の会派「かがやけTokyo」3名の他には塩村都議と、

「東京維新の会」

(おおさか維新の会の東京支部)

を立ち上げた柳ヶ瀬都議の合計5名だけでした。

「身を切る改革」を主張していた維新の党は賛成に回ったようですが、

まあ公務員労組を支持母体とする民主党と合流するんだから当然ですかね...。

力及ばず一連の職員給与アップ条例は可決となりましたが、

引き続きブレずに政策提言を続けて参ります。

それでは、また明日。

(2015年12月16日「おときた駿 公式ブログ」より転載)