北海道小樽市にある「おたる水族館」では2頭のヒツジが飼育されているが、このヒツジたちを紹介する看板が「とってもユニーク」だとネット上で話題になっている。
ヒツジがいるエリアに設置された看板/おたる水族館
看板は4月28日、おたる水族館公式Facebookで紹介された。その後、来場客によってTwitterでも紹介され、約2万5000回もリツイートされた。Twitterでは「面白い」「割とホワイトな環境」「これより条件が悪い人間もいっぱいいるだろうな」といった声があがっている。
一体、どういう意図で看板は設置されたのか。ハフポスト日本版は、おたる水族館飼育部の獣医師、角川雅俊さんに話を聞いた。
――水族館でヒツジの飼育とは珍しいですね。なぜ、ヒツジを飼育されているのでしょうか。また、なぜこのようなユニークな看板を作成したのでしょうか。
水族館の敷地内には芝生のエリアがあり、その芝刈りのためにヒツジ2頭を採用しました。芝刈り機を使うと二酸化炭素を排出してしまうので、環境のことを考え、ヒツジに食べてもらうことで、芝の手入れをしています。「水族館になんでヒツジ?」と思われることも多いと思い、ヒツジがどんな役割を与えられているのか、お客様にわかりやすく伝えるために看板を作成しました。
――飼育しているヒツジは何頭ですか。
メスのヒツジが2頭います。名前などは特にありません。恵庭市の施設から、芝刈り要員として来てもらいました。
――ヒツジ2頭の身分は、有期の「契約社員」になるのでしょうか。
はい。およそ半年間の有期雇用契約になります。
――契約期間の延長はありますか?
そうですね…今のところは考えてはおりません。冬になると寒くなり、芝も無くなってしまうので芝刈りの仕事もなくなってしまいますし…。ただ、契約終了となる10月時点で、まだ芝刈りの必要があるようなら、雇用契約を延長する可能性もあります。
――正社員登用、有給休暇、昇給やボーナスはありますか。
正社員登用は考えていないですね…。昇給と有給休暇もありません。ただ、ボーナスはあります。飼育員が気が向いた時に、乾燥トウモロコシなどを差し入れています。また夏になると、イタドリという草も生えてくるので、それもボーナスとして食べてもらっています。
――労働時間は「一応9時から、だいたい17時まで」「休憩は好きなだけ」とありますが…。
はい。普通の労働者のように「一定時間、必ず働かないといけない」とは決めていません。特に残業もなく、ノルマも決めていません。指定したエリア内の芝を、数日かけて食べてもらえれば、それで業務を果たしてもらったと考えています。
――労働条件には「柔らかい芽だけでなく、固い茎も食べて」という要請もありますが、これは守られているのでしょうか。
これは、なかなか守ってもらえていないですね…。ただ、芝が伸びすぎてしまうと、どうしても硬い茎の部分は食べにくくなってしまうので、食べやすいところにヒツジを誘導できない僕らの責任でもあります。
――ネット上では「労働条件が明示されているホワイト企業だ」「就職したい」という声も。今後も同様の条件で採用枠拡大やヒツジ以外の採用は考えていますか。
今のところ、採用の拡大は考えていません。たまに野生の動物が館内に入ってくるのですが、その際は採用を考えたいと思います。
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