沖縄の米軍普天間飛行場のオスプレイ訓練の一部を大阪府の八尾空港に移転するという日本維新の会の橋下徹・共同代表の提案は、依然として関係者の間に波紋を広げている。麻生太郎副総理は7日の会見で、「選挙前の打ち上げ花火みたいな話」と一蹴。朝日新聞デジタルは以下のように報じた。
麻生太郎副総理は7日の会見で、(中略)移転案について「(周辺は)人口密集地だ。地元のOKが取り付けられる前提があるのか。簡単な話じゃない」と述べ、実現性に疑問を呈した。
(朝日新聞デジタル 「副総理、オスプレイ移転に疑問「選挙前の打ち上げ花火」より。2013/06/07 11:52 )
この提案は地元沖縄ではどのように受け止められているのだろうか。橋下氏と日本維新の会幹事長の松井一郎大阪府知事が6日、首相官邸で安倍晋三首相、菅義偉官房長官と会談し、訓練の一部受け入れを表明した際、維新と政策協定を結ぶ地元沖縄の政党そうぞうの下地幹郎代表も同席した。沖縄タイムスの報道では、下地氏は会見後に、「大阪府のように検討してほしいという自治体が増えることを沖縄は望んでいる」と述べている。
ただ、沖縄では、橋下氏が先月、米軍普天間飛行場の司令官との会談で地元の風俗業の活用を提案したことで県民の激しい怒りを買っている。「風俗発言」の後すぐ、県内25の女性団体が「すべての人間の尊厳を傷つけるものだ」と発言の撤回と謝罪を求める抗議声明を発表。地元紙の沖縄タイムスは5月16日の社説で、「およそ公人が公の場で発言する内容ではない。論外だ。女性に対する人権感覚を著しく欠いており、公党の共同代表としても公職の市長としても、失格である」と強烈に批判した。同県議会は発言に対し、政党代表や首長に対して行うのはきわめて異例だという「抗議決議」を採択している。(沖縄タイムス2013/6/7 10:30)
そうした「前科」があるために、今回のオスプレイ受けいれ発言も県内では冷ややかな受け止め方をされているようだ。
地元紙の琉球新報は、5日の社説で以下のように断じている。
今回の提案は、参院選挙をにらみ、沖縄の基地問題に取り組む姿勢を見せることで、維新の党勢衰退の窮地を抜け出す足掛かりにしたいという政治的思惑が色濃い。沖縄の負担軽減とは別次元の狙いがあり、成算も見えない。腰が据わっていないように映る。
( 琉球新報「大阪訓練移転案 本質から目を背けるな」2013/6/5)
また、普天間基地の移設候補先とされている沖縄県名護市の稲嶺進市長は6日の会見で、基地負担が軽減される点では一定の評価をしつつも、「肝心の地元(八尾市)が反対しており、(市民の)頭の上で無責任な発言をしている」と指摘した。
橋下氏の提案について、受け入れ先に挙げられた八尾市の田中誠太市長は3日に反対を表明。かつて八尾市でヘリコプターや民間航空機の墜落事故があったことを踏まえ、「(オスプレイは)危険性が非常に高い機体ではないかと判断している。米軍のテスト訓練で多くの犠牲が払われていると聞き、不安が残る」と懸念を示した。(朝日新聞デジタル 「八尾にオスプレイ」強まる反発 「近くに小学校も」 2013/06/04 14:43)
市民の暮らしに直接的に影響する重大事を、地元の頭越しに決めてしまう――。
今回の一連の出来事は、基地をめぐる日本政府と沖縄県との関係の縮図のようだといえないだろうか。
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