■『火の鳥』のお守り&絵馬
茨城県石岡市に鎮座する神社・常陸國總社宮(ひたちのくにそうしゃぐう)は、史上初のコラボレーションで注目を集めています。世界的な漫画家・手塚治虫さんの超大作『火の鳥』をモチーフにしたお守りや絵馬を頒布しているのです。
漫画とお守りのコラボと言うとよくあるキャラクターものと思われがちですが、さにあらず。手塚治虫さんとこの神社には深い御縁があるのです。
常陸國總社宮は常陸国(現茨城県に相当)の神々を中心地である国府に集めて祀った千年の歴史を持つ古い神社です。その最重要の祭りである9月の例大祭は石岡市民総出で祝われる大祭典。関東三大祭の一つとの呼び声も高く、県内外から多くの参拝者が訪れます。寛永4年(1627)建造の本殿や湧水を引き込んだ禊場など、見所が多い境内の中でひときわ異彩を放つのが「日本武尊(ヤマトタケルノミコト、以下ミコト)の腰掛石」です。
■『常陸国風土記』とヤマトタケルノミコト
東国で唯一現存する風土記『常陸国風土記』は千三百年前にこの地で編纂された書物。その中には皇子であるミコトの活躍が各所に記されています。常陸国はミコトの伝説が数多く残る土地で、常陸國總社宮もその一つ。本殿の目前に置かれた直径50センチほどの石は、なんとミコトが腰かけた聖なる石だと言うのです。
歴史の里として最近マスコミにたびたび取り上げられている石岡市の中でも、特に注目なのが手塚治虫さんとの御縁です。手塚さんの先祖である手塚良庵は江戸時代の石岡市に置かれた「府中藩」の藩医。お墓も同市の清凉寺にあります。手塚さんはふとしたきっかけで石岡市と自らのルーツの関係性を知り、先祖良庵と府中藩士が活躍する名作「陽だまりの樹」を描きました。平成24年にNHKのBS時代劇として放映されたのでご存知の方も多いかと思います。
実はこの年は『常陸国風土記』編纂千三百年という記念すべき年。常陸國總社宮では記念事業として何が出来るか検討している最中でした。そこで同宮の神職・石﨑貴比古さんの脳裏にひらめいたのが『火の鳥 ヤマト編』でした。
過去から現在、そして未来にわたり、不死の生命体・火の鳥をめぐる遠大なストーリーが織りなす同作の中でヤマト編にはミコトと思われるキャラクターが登場。しかも常陸國總社宮の腰掛石を思わせる石に彼が座っている場面があるのです。
石﨑さんは手塚治虫さんが描いたミコトをモチーフにしたお守りと絵馬を作るべく手塚プロダクションに直談判したところ、同社は快諾。神社と手塚治虫さんとの世界初のコラボレーションが実現したのです。
■神主さんと『火の鳥』を読むワークショップ
実は『火の鳥 ヤマト編』は日本神話の登場人物や名シーンを彷彿とさせる場面がたくさん登場します。そこで今回、寺社フェス「向源」では石﨑さんを講師として迎え、「神主さんと読む『火の鳥 ヤマト編』」と題したワークショップを企画しました。手塚治虫さんが描いた名作を読みながら、日本神話についてあれこれ語ろう!というわけです。ワークショップの最後には話題の『火の鳥』絵馬に、参加者全員で神様へのメッセージを書き、皆さんの思いを石﨑さんに届けていただきます。
日本を代表するクリエイターである手塚さんの名作を味わいつつ、「ニッポンの神様」について皆で考えてみませんか?