南アフリカ共和国の北東部に位置するクルーガー国立公園で、ドニーという名の母親を亡くした赤ちゃんサイが、通りがかった車に近づいてきた。
ドニーは車の後をついて歩き、車が停車するとまるで親の愛情を期待するかのように車に身体をすり寄せた。
母親をなくした赤ちゃんサイのドニーが、母親の代わりを求めて車にすり寄っている。
この写真を撮ったのは、獣医学科4年生のデビー・イングリッシュさんと、この地域のパークレンジャーをしているデビーさんの父親だ。
ドニーは、推定生後1カ月から2カ月程度の赤ちゃんサイで、母親を密猟者に殺されたとみられる。ドニーの行動は、親をなくした幼い動物によく見受けられる、刷り込み(インプリンティング)だと考えられている。刷り込みとは、生後間もない哺乳類や鳥類などが、動くものを親だと思って追いかける行動だ。
デビーさんはフェイスブックに「この小さな赤ちゃんサイは、母親をなくした後、ずっと歩いて観光用の道路にたどり着きました。そして、そこで見た車を母親だと思ったのです。とても胸が痛みます」と書いている。
写真が撮影された後、ドニーは鎮静剤を打たれ、野生動物の治療とリハビリを専門に行う「ケア・フォー・ワイルド」に向けて搬送された。
鎮静剤を打たれて搬送されるドニー
ところが、搬送中にトラブルが起こった。デビーさんは、その時の様子を次のように書いている。
「父と獣医が赤ちゃんサイを鎮静剤で落ち着かせて、新しい住まいに飛行機で運びました。ところが搬送中、赤ちゃんサイの心臓が停止してしまい、パイロットは、緊急着陸しなければなりませんでした。3分間にわたって、蘇生などあらゆる手を尽くしました。その結果、赤ちゃんサイが息を吹き返して心臓が再び動き始めた時には、全員が感動しました!中には涙を浮かべている人もいました」
そして、無事に「ケア・フォー・ワイルド」に到着した。
ドニーは回復に向かっているという
「大変な道中でしたが、赤ちゃんサイはようやく新しい家にたどり着き、ぐっすり眠れたはずです。今ごろは落ち着いているといいのですが」
「こういった成功例を聞くことは少ないので、今回の出来事をみなさんとシェアしたいと思っています。そして、サイの密猟と闘う、パークレンジャーや獣医、その他すべての人々を支援するようお願いしたいのです」とデビーさんはフェイスブックに書き込んでいる。
密漁により多くの動物が絶滅の危機に瀕している。中でも、角が漢方薬の原料に使われるサイの状況は特に危機的だ。そのため、多くの動物保護団体が、密猟対策に取り組んでいる。
動物実験をなくすことを訴える「ヒューメイン・ソサエティー・インターナショナル」(HSI)の推定によれば、2007年以降、南アフリカのサイの密猟はおよそ93倍増えている。
サイを守る上で障壁となるのは、地域があまりにも広大なため、密猟に気づいた時には遅すぎる場合が多いことだ。
そこで、HSIと動物保護団体「プロテクト」は2015年7月、サイの角にカメラを取り付けるプロジェクトを新たにスタートさせた。このカメラを使って密猟者を捕まえ、サイの密猟を減らすことが期待されている。
サイの角に取り付けられたカメラの映像
角に装着されたカメラは動画を撮影できるだけでなく、心拍数を測るモニターやGPS付きの首輪もついている。このシステムを使ってサイだけでなくトラやゾウといった他の絶滅危惧種たちを救うことができるかもしれない。
この記事はハフポストUK版に掲載されたものを翻訳しました。
[日本語版:遠藤康子/ガリレオ]
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