組織は有機体であり、生き物や人体に例えられることがある。働く人の感情、組織の規律や風土、一人一人の能力、業務プロセス、組織のパフォーマンスなど、さまざまなものが複雑に組み合わさって運営されている。現象面で見える組織の問題も、要因は1つではなく、さまざまなものが複雑に絡み合って発生している。そのため、個別の問題だけを直接的に解決する手段を考えても通用しないことが多い。
働き方変革、風土改革といった、組織を現在の状況からあるべき状態へと変えていくプロジェクトにおいても同じようなことが起きている。
見えている問題や課題を直接的に解決しようとしてもゴールに到達しない。必要なのは、その解決策を検討するために、まずは現状把握から入ること。医療でいえば問診や診察、診断といった行為だ。
対象が会社組織の場合は、まず社員へのインタビューや社員意識調査、職場観察、業務ヒアリングなどを行う。そこから複雑に絡み合った問題を紐解き、どんな順番で何をしていくのか治療計画を作成していく。その治療計画もなかなか予定通りにはいかないが、PDCAを回し改善しながら進めていくことで、あるべき姿に近づけていくことが可能になる。
現状把握から導き出されるプランは企業や組織ごとに異なるが、調査段階で共通して見られる傾向もある。それは、老廃物が溜まっている、ということだ。
私たちがプロジェクトに入る以前からも、さまざまな形で課題に対して解決策が模索され、責任者が変わるたびに、新しい施策が打ち出される。しかし、その繰り返しでは、「どうせまた失敗するんでしょ・・・」「またやるの、意味ないよ・・・」「トップが変わるまでしばらく静観したほうがよいな・・・」といった感情面でのしこりが現場に溜まっていく。
また、もう一方で、「過去のあの施策は結果としてはどうなったの?」「新しいことするなら振り返りをして、やめるべきことはやめたらどうだ?」 「もういろいろありすぎて出来ないよ」といったプロセス上での疑問や不満も噴出してくる。
新たな施策を打ち出す前に、もしくはこれまでやっていた施策を例年通り実施する前に、阻害要因となっているものは何か、その中で捨ててもよいものは何かを整理整頓をしてみてはどうだろうか。前任者否定、自己否定にならないような配慮は必要だが、前へ進むためにあえて一歩引く、感情面のデトックス、プロセス面のデトックスも打ち手として検討したい。
text by. Hirota
2015年8月10日Sofiaコラムより転載