靴の木型師ってどんなお仕事なの?オーダーハイヒールブランドを作った木型師に話を聞いてみた

華奢なハイヒールが完成するまでには、木型を削るという力仕事があるなんて考えてもみませんでした。
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みなさん、ハイヒールってどうやって作られているか知っていますか?靴づくりの始点になるのは「木型」。木型は木型師と呼ばれるプロが削りだして作っています。オーダーハイヒールブランド「gauge(ゲージ)」のブランドディレクター兼木型師である五十石紀子(いそいし・のりこ)さんに木型師の仕事やご自身の経歴についてうかがいました。

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長瀬:早速ですが、五十石さんのお仕事である「木型師」ってどんなことをされているんですか?

五十石:木型師は靴のデザインの原型となるものをつくるお仕事です。木製の原型にパテを塗って形を大きくしたり削って小さくしたりして、それで靴の原型を作るんです。

木型、という名前なので木製のものを想像してしまうかもしれませんが、実際はプララストというプラスチック製のものを使って靴を製造するんです。木型を専門の工場で3Dスキャナーのような機械で形を読み取って、プラスチックで削りだします。

木製の原型もゼロから彫りおこすことはほとんどありません。ブランドさんやメーカーさんによってはそれぞれの特徴やルールもあるので、ブランドの求めている足入れ感に近いものを作るために、既存の原型を使うことが多いんです。

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長瀬:五十石さんははじめから木型師を目指していらっしゃったんですか?

五十石:もともとは靴に携わる仕事ですらなかったんです(笑)。新卒で入った会社では求人広告の営業をやっていました。そこでリーマンショックが起きて、会社が希望退職を募ったりして、自分も初めて「この仕事をずっと続けるのか」ということを考えたんです。そのときは私は辞めずに残ったんですけど、1年で本当に自分がやりたいことを探してそっちに進もうと決めました。

長瀬:全然違う業界からこのお仕事を始められたとは、びっくりです......!

五十石:もともと靴はすごく好きで、趣味として靴づくりの教室にも通っていたんです。だからちゃんと靴のことを勉強してみようと思って、1年働いてお金を貯めて神戸レザークロスの経営する専門学校「靴学院」に入学しました。

卒業後は手を動かして靴を製作する仕事がしたかったので、義足とかコルセットとか整形外科の「装具」と呼ばれるものを作っている義肢装具会社に就職しました。デザインとかアパレルではなくて、患者さんが医療保険で買う医療用の整形靴を作っていたんです。私がやっていたのは「吊り込み」という仕事だったんですけど、すごい力仕事でずっとは続けられないな......と。

そんなときに、ゲージを運営する「神戸レザークロス」が木型師を探していたんです。神戸レザークロスは幅広くいろんなことをやっている会社なので、吊り込みだけをやるとか、木型だけを作るということはありません。私のように木型師でもブランドをもてたりとか。いろいろな仕事があったので将来の幅が広そうだなと思って、木型師の道に進みました。

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長瀬:木型師って、日本にはどれくらいの人数がいらっしゃるんでしょうか?

五十石:神戸レザークロスには神戸と東京合わせて5名の木型師が在籍しています。全国でいうと、正確な数は正直わからないんですが、かなり少数だと思います。

そもそも木型を売っている企業が多くないんです。日本の靴産業は神戸の長田、東京の浅草、大阪の西成の3つの地域が主力で、その中でも私が把握している限り木型を作っているのは神戸で3社、東京で3社。把握していない企業さんがあったとしても10社あるかないかくらいだと思います。1社に1人しか木型師がいない企業さんもありますし、全国合わせても木型師として専門にやっている人は100人もいないんじゃないかな。

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長瀬:こういうお仕事って男性が多いイメージがあるんですが、実際は女性もたくさんいらっしゃるんですか?

五十石:女性の木型師は少ないです。東京に1人だけいらっしゃったんですが、その方も辞めてしまったんですよね。

女性の靴はトレンドの波が男性に比べて激しいので、サンプルだけでも結構な数の木型を作るんです。だけど、男性の木型師だと実際に作ったものを自分で履いて試すことができないんですよね。私は実際に作った靴に足を入れて女性にヒアリングできるので、重宝がられています。そこは、女性木型師であることの強みですね。

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華奢なハイヒールが完成するまでには、木型を削るという力仕事があるなんて考えてもみませんでした。男性が多い木型師の中で、女性木型師が女性のために作ったハイヒール。それが五十石さんが立ち上げた「gauge(ゲージ)」なんですね。