東京医大目指し2浪の女性「当事者として差別を受けたのは初めて」

「女性を手助けしたいと医師を志したのに、女性だから、という理由でチャンスが奪われるとは皮肉です」
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イメージ写真(本文の女性とは無関係です)
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東京医科大で女子受験生の点数を一律減点していたことが報道で明るみになり、波紋を呼んでいる。

ハフポスト日本版がこの問題について初めて報じた8月2日、同大を2度受験し、不合格になった女性からメールが送られてきた。

今回の問題について、「あからさまな性別による差別を当事者として受けるのは初めて」などと綴り、差別への無念さを隠さない。

同大の対応は、女子受験生の気持ちにどんな影響をもたらしたのか。内容を紹介する。

初めて受けた女性差別だった

わたしは現在20歳の浪人生です。

社会に貢献したいと思い、親類に医師はいませんが産婦人科医を志して医学部を受験し、現在2浪目です。今回問題となっている東京医科大も昨年度と今年度の入試を受験し、昨年度は1次で不合格、今年度は1次試験は通過したものの2次試験(面接と小論文、適性検査)で不合格となりました。

文科省幹部の子どもの「裏口入学」に関する一連の報道には「やっぱりね」と驚きも怒りも湧きませんでしたが、今回の女子受験生に不利になるような点数操作の報道には大きなショックを受けています。

男女平等、性差別をなくそうと言われている今日、このようなあからさまな性別による差別を当事者として受けるのは初めてのことでした。

医学部を受験するにあたり、医師の世界はまだまだ男性社会であるということは知っていました。

大学の教員をしているわたしの母から、小学校に入って間もない頃に男女の間で給与の格差があるなど、男性優位の社会で女性が対等に仕事をすることの難しさは聞いていました。しかしそれも15年ほど前の話ですが。

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女性を手助けしたいのに、女性がゆえにチャンスを奪われる

ここ数年では、医師にかかわらずどんな職業でも結婚や出産が女性のキャリア形成の障壁になっていることは問題だと、メディアなどで取り上げられていて、解消しなければならない問題であることは明白です。

そんな現状に一石を投じることができるならと思い、あえて男性社会に飛び込み女性と男性が対等に活躍できるような働きかけが自分にできればと意気込んでいました。

一方で私たち女性は身体の機能としてどうしても子孫を残すタイムリミットがあるのは認めざるを得ません。ですがそのリミットも医療の発展によって伸びてきています。

私自身、不妊治療や生殖医療に関わり、女性達が仕事も子供を持つこともどちらも諦めなくて済むような手助けをしたいとも思っていただけに、女性であるから、という理由でそのチャンスが奪われるような立場としてみられていたことは皮肉なことだと思います。

友人は花火や旅行...貴重な時間が無駄になった

私は高校時代からやりたいことをセーブして他の同級生よりも勉強に時間を割いてきたはずです。それなのに高校を卒業して1年以上たった今も未だに大学受験の勉強をしています。

現役時代に切磋琢磨した同級生はインスタグラムで昨日の花火大会の様子や旅行に行っている写真を載せています。なぜ、私は20歳にもなって友達も恋人も作れずにかつて親しかった友人とも疎遠になり、ひとりで勉強しているのだろうと虚しくなります。

今回私が点数操作によって不合格になったのかどうかは分かりません。単に実力が足りなかった、と言われてしまえばそれまでです。

しかしながら東京医大がとったそのような行為によって、不合格になった女子受験生は、1年間の努力が踏みにじられただけでなく、健康で体力もエネルギーもある貴重な1年間の時間を無駄にされたことになります。

地位や名誉や学歴はお金で買えるかもしれませんが、どんなにお金を払っても時間や若さを買うことはできません。そのことに憤りとやるせなさを覚えます。

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適性試験の「性生活に満足?」という質問に違和感

試験内容にも違和感を抱きました。

2次試験で、面接小論文と同時に行われていた適性検査ですが、自動車免許の適性検査よりも圧倒的に質問数が多く、その分の質問項目には健康状態を聞くものから、あくまで公的な入試の場面で聞くのはあまりにも不適切なのではないか?という質問が含まれていました。

「あなたは現在の性生活に満足していますか?」というようなセクシュアリティーに関わるような内容の質問が3問ほどあり、回答中に面食らったことを覚えています。

全てマークシート形式で答えていくので誰かに詳細に回答を見られるということはないのでしょうが、明らかに全ての受験生に対する「セクシャル・ハラスメント」ですし、そういったセンシティブな質問がなんの躊躇もなく入試で出る、というのは、東京医大のハラスメントやジェンダーに対する認識が世間一般のそれとは乖離していることを表しているような気がします。

ただ、適性検査の問題は回収されてしまっていますし、大学も詳しい内容は公表していません。

それでも来年も東京医大を受けざるを得ない事情

今回の件を受けて来年度の東京医大の受験を見合わせるかと問われればそれは複雑なところです。

私立医大の学費の相場は3000万円代半ばで、かなり高額です。そのうち東京医大は6年間総額で3000万円弱と比較的安いほうです。また私立医学部の入試の倍率は20倍30倍はザラで熾烈な競争です。

医者の子どもでもない医学部受験生は僅かでもチャンスをものにするため、学校を選り好みするという贅沢はできないというところが本音です。

今回の報道で明るみに出たのは氷山の一角にすぎないかもしれません。医学部では平然と行われている行為なのかもしれません。またそのような行為は一般的に就職活動の場面でも行われているという意見もあります。

不条理な状況に声を上げる

男女平等がうたわれているなかで育ち、あからさまな差別を受けたと自覚する機会もなく、「男女は平等であるべきだ」して扱われてきた私たちの世代は、男女差別に「鈍感」なのかもしれません。それか、仕方ないことだと割り切っているのかもしれません。

ですが私は不条理なこの状況に敏感になり、当事者として声を上げなければならないと思いました。

わたしたちの世代は主張や議論で対立することはダサいと思っている人が少なくありません。大人に反抗すること、権力にたてつくこと、社会問題に言及することはしらけるという風潮があると思っています。

それは、思考停止であり、自分が何をしても何も変わらないんじゃないかというあきらめがあるのかもしれません。ただ、こうした問題を他人事だと思って受け流し続けていくことが、問題の解決をさまたげていることになるのだと、今回の問題で気づきました。

思考停止をしてはいけないと、改めて思っています。