沖縄戦の経過を時空間表現する「沖縄戦デジタルアーカイブ 〜 戦世からぬ伝言」公開

今回のプロジェクトでは、オープンソースのデジタル地球儀の機能をフル活用し、1945年3月から6月の戦闘終結に至るまでの経過を可視化しています。
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渡邉研・沖縄タイムス・GIS沖縄研究室の3者で共同制作した「沖縄戦デジタルアーカイブ~戦世からぬ伝言」が本日、公開されました。

ジャーナリズム・イノベーション・アワードでともに受賞した、沖縄タイムスの與那覇里子さんとのご縁でスタートしたプロジェクトです。4月に初打ち合わせ後、実にスムーズに制作が進み、本日公開に至りました。GIS沖縄研究室の渡邊康志先生とも、研究者どうし、充実したやり取りをさせていただきました。本当にありがとうございました。

沖縄戦についてのデジタルアーカイブとしては、私が総合監修を務めた沖縄県事業「沖縄平和学習アーカイブ」が先行しています。今回のプロジェクトでは、オープンソースのデジタル地球儀の機能をフル活用し、1945年3月から6月の戦闘終結に至るまでの経過を可視化しています。

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画面下部のタイムスライダーを操作することで、1945年3月から6月に掛けての、人々の移動が可視化されます。

ある人は本島の北部へ、ある人は南部へと逃れていくこと。その傍ら、離島から別の離島に向けて、米軍の船で移送されていく人がいること。そして6月後半に掛けて、たくさんの人々が追い立てられ、摩文仁の丘周辺に集まっていくこと。6月23日に戦闘が終結したのち、本島南端に集まった人々はやがて、各地の捕虜収容所へ移送されること。こうした沖縄戦の「経過」が、デジタル地球儀上の「動き」で表現されます。

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この「生者」のデータに、読谷村出身の戦没者=「死者」のデータが重なりあいます。男性は白の、女性・子ども・老人は赤のアイコンで示されています。タイムスライダーを進めると、米軍が上陸した読谷村を境に、くっきりとした紅白の境界線があらわれます。南部と北部で、戦没者の傾向が異なっていることがよく分かります。

沖縄戦デジタルアーカイブ~戦世からぬ伝言」についてはすでに、学校における平和学習利用のオファーがあるようです。私たちはこのプロジェクトを、今後も発展させていく予定です。

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以下、プレスリリースからの転載です。

首都大学東京システムデザイン学部渡邉英徳研究室・沖縄タイムス社・GIS沖縄研究室は、1945年の沖縄戦(第二次世界大戦)終結から70年を迎える今年、沖縄戦の推移を時間軸で表現した「沖縄戦デジタルアーカイブ~戦世からぬ伝言」を制作し、本日6月19日に公開しました。首都大学東京システムデザイン研究科の渡邉英徳研究室、沖縄タイムス+プラス、GIS沖縄研究室、の特設ウェブサイトからご覧いただけます。

沖縄戦当時と現在の立体的な航空写真と地図に、沖縄タイムスの連載「戦世からぬ伝言(イクサユカラヌチテーグトゥ)」「語れども、語れども」で掲載してきた写真や証言を重ね合わせ、1945年3月から6月までの戦争体験者が避難した足取りを可視化しました。体験者へのインタビュー動画や記事もご覧いただけます。

また、米軍が最初に上陸した読谷(よみたん)村の村民はどこで死没したのか、米軍に追い詰められた具志頭(ぐしちゃん)村民はどこで亡くなったのかについて、比較検証することが可能です。さらに特設ウェブサイト全体を通して、沖縄戦の始まりから、2015年現在に至るまでの沖縄の歴史を知ることができます。

これまでに渡邉研究室が制作した「ヒロシマ・アーカイブ」(2011年7月発表)や、「東日本大震災アーカイブ」(2011年11月発表)などの「多元的デジタルアーカイブズ」の技術を応用し、戦前の航空地図や地形図については、GIS沖縄研究室(主宰・渡邊康志)が制作、沖縄県公文書館所蔵の米軍が撮影した沖縄戦当時の写真もふんだんに盛り込みました。今後、さらに追加していく予定です。

なお、読谷村と具志頭村出身者の戦没地の比較は、沖縄タイムスとGIS沖縄研究室が制作した「具志頭村~空白の沖縄戦」(2014年6月発表)の成果を生かし、制作しました。

このプロジェクトは、沖縄戦の継承を大きな目的としています。小中学校の平和学習の教材として、高校生や大学生向けとしては、実際に戦争体験者への聞き取り調査を行い、そのインタビューや写真、動画などを沖縄戦アーカイブに登録するなどして活用いただく予定です。また、修学旅行生向けの事前学習ツールとして利用することもできます。幅広い、参加型のプロジェクトとして発展させていければと考えております。

【お問い合わせ先】

  • 首都大学東京 准教授 渡邉英徳
  • 沖縄タイムス社 デジタル局デジタル部
  • GIS沖縄研究室 渡邊康志