必要のなくなった従業員を企業が退職に追い込むために、全くそれまでの労働環境の違う部署に異動させる「追い出し部屋」が問題になっている。3月11日の朝日新聞デジタルの記事によると、「追い出し部屋」の定義は以下の通り。
会社から戦力外とされた社員を受け入れる部署は最近、こう呼ばれています。退職させたい社員をここへ異動させ、まったく仕事を与えなかったり、本人の意に沿わない仕事をさせたりして、会社に残る気持ちをなくさせ、自主的に退職させようとするものです。
(朝日新聞デジタル (働く人の法律相談)「追い出し部屋」は違法? )
同サイトの4月9日の記事では、パナソニックグループで「追い出し部屋」と呼ばれるキャリア開発チームの実態が、リアルに描かれている。
所属する40代の男性は毎日出勤すると、ひたすらネットで社内や他社の「求人」を探す。忙しいほかの部署の「応援」にも入る。先月は1日10時間、部屋にこもってモニターに映る番組の画像に乱れがないかチェックした。「本来なら解雇だが、ここで給料をもらえるだけありがたいと思え」。上司にこう言われたことがある。
(朝日新聞デジタル 勝ち組企業にも「追い出し部屋」 新たに複数で)
さらに、他社に出向させて過酷な業務で退職に誘導する「教育出向」のパターンもあるという。7月14日の朝日新聞デジタルでは、マンション分譲大手の大京の社員のケースを次のように報じている。
「とても売れそうにない商品を売るように言われて」。希望退職への応募の打診を断ったあと、営業代行会社のセレブリックスに出向させられた中年の男性社員はこう振り返る。そこでの仕事も、さまざまな会社の営業代行だった。長机に出向社員ら約200人が肩がくっつくほどびっしりと座らされた。「お世話になっております。○○と申します」から始まる電話営業の「台本」が渡され、電話を1日200件かけるノルマが課された。
(朝日新聞デジタル 出向という名の「追い出し部屋」 退職拒めば過酷な業務)
こうした「追い出し部屋」について危惧する人も多い。人事コンサルティング会社「トランストラクチャ」の代表取締役の林明文氏も、その一人だ。「近年突然出現した手法ではなく、過去20年以上も前から、ある意味定番の人員削減手法でした」と分析した上で、以下のように書いている。
社員の退職施策は難易度が高く、社会的常識や法律的な制約の範囲内で行うとことが成功の絶対的要因です。現在報道されているような、悪意ある追い出し部屋的手法は、決してよい結果がでるものではなく、逆にトラブル発生、他の社員のモチベーションダウン、社会的な信用の失墜などが発生します。追い出し部屋的手法を取るのであれば昔の良識的な追い出し部屋的手法ではありませんが、ある意味雇用を大事にする思いやりのあるスタンスでなくてはうまくいかないということです。
(コラム「追い出し部屋」2013年07月04日)
【※】こうした中高年を退職に追い込む「追い出し部屋」について、読者の皆様はどのように感じましたか?コメント欄にご意見をお寄せください。