京都大学吉田キャンパスの学食で、ついたてが付いた「おひとりさま」用の席が人気だという。
京都大学の学生食堂にできた1人用席が静かな人気だ。大きなテーブルについたてを立てただけ。それでも、ひとりぼっちへの周囲の目線を気にせず食事できることから「ぼっち席」と呼ばれ、定着。神戸大学でも採用された。
食堂を運営する京都大学生活協同組合によると、ぼっち席を設けたのは昨年4月。京都市左京区の吉田キャンパスにある中央食堂(約480席)の改修に合わせ、天板の真ん中に高さ約50センチのついたてを取り付けた6人用テーブル10台を特注したという。
(朝日新聞デジタル「視線気にせずおひとりさま 京大学食「ぼっち席」人気」より 2013/07/29 12:28)
神戸大学の学食でも「ぼっち席」は好評で、4月に60席が増設された。「ぼっち席」は、単に“おひとりさま”が気楽に食べられるように、という心理面だけでなく、限られた座席の有効利用という側面もある。
「ぼっち席増えてるやん!」。国文食堂に入ってきた学生たちは驚きの声を上げた。これまで同食堂のカウンター席は47席。今回8つのテーブルに仕切りが設置され、48席が新たにカウンター形式となった。六甲台食堂では従来のカウンター席が撤去されたものの、国文食堂と同じ方法で60席が新設された。
学生からは「1人ぼっちで食事をする席」という意味から「ぼっち席」と呼ばれるカウンター席。国文食堂マネージャーの長谷川唱さんによると、増設の背景には混雑時の満席率をアップさせる狙いがあるという。
(神戸大NEWS NET「2013年4月前半のニュース」より)
■Twitter上では好意的な評価が多数
他の人とのコミュニケーションが取れなくなる、といった批判も想像されるが、Twitterでは、「ぼっち席」を好意的に捉える人が多いようだ。
「ぼっち席」にいるところを見られるのが恥ずかしい、という意見も。
普段から一人で食べているので別に不要、という人もいる。
■「“おひとりさま”向けビジネスはこれから伸びる」と識者
“おひとりさま”向けのサービスは、何も学食だけではない。一人でカラオケ、一人で焼肉など、“おひとりさま”向け消費を狙ったサービスは年々増えている。
経営コンサルタントの大前研一さんや、消費文化に詳しい三浦展さんも“おひとりさま”市場の発展を予測している。
今や日本で最も多いのは一人暮らし世帯です。
2010年国勢調査によれば、日本の全世帯数5184万世帯のうち一人暮らし世帯は1679万世帯で32.4%を占め、夫婦と子供から成る世帯の1444万世帯(27.9%)を上回りました。一人暮らし世帯が増えたのは「未婚化」「晩婚化」と「熟年離婚」「夫婦の死別」が増加したからで、これは構造的な問題です。
さらには夫婦でも二人一緒に行動しない(できない)ケースが非常に増えています。昔は夫婦は常に行動を共にしたものですが、今は共通の話題や趣味嗜好がなくなったり、晩婚化によって一人で行動することが普通になったりしているため、夫婦が一緒に行動するというライフスタイルではなくなってきているのです。
(BBT大学院「【大前研一メソッド】おひとりさま向けビジネスは新たなチャンス」より 2012/09/24)
つまり男女とも近年需要が増加したのは、そして今後需要が増加すると思われるのも、 「おひとりさま」の需要なのである。コンビニエンスストアも外食も旅行も、おひとりさまを相手にしなければ売り上げの拡大はないのだ。
(「おひとりさま市場の拡大」より)
■一人でカラオケ「ヒトカラ」はすでに市民権を得つつある
“おひとりさま”用のサービスとしてもっとも受け入れられているのは、一人でカラオケ、「ヒトカラ」だろう。ヒトカラ専用の店舗「ワンカラ」は渋谷、新宿、池袋など6店舗を展開する。通常のカラオケ店舗の売上が頭打ちになったことから、新業態として開発された。
カラオケ店舗数で日本一(国内317店舗)の株式会社コシダカは、業界唯一の1人カラオケ専門店「ワンカラ」を11年11月、東京・神田に出店した。ワンカラはこれまでのカラオケ店とは何もかも違う。一部屋は2平方メートル程度しかない。防音完備の部屋でヘッドフォンを付けてカラオケを歌い、1時間600円から利用できる(店舗により異なる)。
「従来のカラオケ店でも2割ほどお一人でご利用されるお客様があり、ワンカラの構想が生まれました。お一人様ブームもあり、神田店を出してすぐに話題になり月商も24室で600万円を超え、想像以上の反響でした。現在は6店舗を展開しています」と、首都圏事業本部の矢野斉氏は言う。
(Digital Experience!「気遣い不要「一人カラオケ専門店」が大人気 | Digital Experience!」より 2012/10/31)
さらにヒトカラを手軽にできるよう、ゲームセンターなどに置く筐体型のヒトカラマシーンまで登場した。一曲100円で歌える。
「ちょいKARA」は、電話ボックスのような箱型の概観で、最大3人まで入ることが可能。1人だと割と広々とした印象を受ける内部には、上部2か所にスピーカー、そしてカラオケ最新機種が設置されている(※機種・装備仕様は店舗により異なる)。DAMシリーズの電子目次本「デンモク」や、JOYSOUNDシリーズの多機能リモコン「キョクナビ」といった付加コンテンツにも対応していて、採点機能なども使えるので通常のカラオケ店と全く同じようにカラオケを楽しむことができる。
(ニュースウォーカー「1曲100円!ゲームセンターに“ヒトカラ”用カラオケボックス登場」より 2013/03/23 19:27)
実際に使った人の感想もある。
■“おひとりさま”ラーメンも人気
“おひとりさま”向けのラーメン屋として有名なのが、国内外に40店舗以上を展開する「一蘭」だ。ついたて付きの「味集中カウンター」を設け、店員とも顔を合わせずに済むよう店舗設計を徹底。特許を取っている。
人は本来、本物の美味しさを見極める時には、味覚だけに集中するものではないでしょうか。「味」に対する自身から本当に美味しくお召し上がりいただきたいという思いを形にしたこだわりの環境です
(一蘭「天然とんこつラーメン お品書き」より)
■“おひとりさま”専用焼肉店は閉店
“おひとりさま”専用でも、成功しなかった例もある。
“おひとりさま”専用の焼肉店もかつては存在した。上野にあるその名もズバリ「1人焼き肉専門店 ひとり」だ。開店した2011年当初はメディアに多く取り上げられたが、年末には“おひとりさま”専用をやめ、鍋の店に。今はこの店も閉店している。
普通の焼肉店は1人前ごとに注文するが、この店では1枚ごとに注文する。つまり、カルビを注文するときはオーダーシートに枚数を書くことになる。肉を1枚単位で注文する行為はなかなか新鮮である。
(ロケットニュース24「一人専用焼肉店『ひとり』に行ってみた! 何度も行きたくなるほど肉がウマい | ロケットニュース24」より 2011/05/06)
今年4月にオープンし、日本初の1人焼き肉専門店としてさまざまなメディアで話題となった。以前は全席が1人用のブースで仕切られていたものの、全体のおよそ半分の席で仕切りを取り払い、複数人での来店にも対応できるようにした。席数は22席、店舗面積は23坪。
(上野経済新聞「1人焼き肉専門店が1人鍋専門店「ひとり」に-焼き肉復活も検討中」より 2011/12/26)
次にヒットする「おひとりさま向け消費」はいったいなんだろうか。