日本はお盆を失って、ハロウィンを手に入れた?

お盆はどんな行事で、本来の風習は続いているのだろうか?
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夏休みシーズン真っ只中。お盆休みも始まり、実家に帰省する人も多いだろう。

男30歳。オフィスでお盆の話になった時、お盆についてほとんど知らないことに気付いた。

「8月の2週目ぐらいに、先祖が帰ってくるのに合わせて墓参りをする」--。この程度の知識しかない。

神奈川県出身で、母の実家は東京都。毎年お盆に実家へ帰り、墓参りするという習慣は、中学生以降はなくなった。

テレビでは連日お盆の渋滞を伝えるニュースが流れているが、本来の風習が国民的な行事として続いているのだろうか?

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■お盆とは、いつどんなことするの?

Weblioなどによると、お盆は正式には盂蘭盆会(うらぼんえ)と呼ばれ、旧暦7月13日から16日までの期間を指す。この期間に生前過ごした家に帰ってくるとされる先祖の霊を迎え、供養する仏教の行事だ。

現在では、1カ月遅れの8月13日から16日に行われるのが主流となっている。

初日の13日には「迎え火」を焚いて死者の霊を迎え、14、15日には仏壇の前にお供え物で飾った精霊棚(しょうりょうだな)を供養し、16日には浄土への道しるべとなる「送り火」を焚いて送り出すという習わしになっている。

いわゆる「大文字」で知られる、京都の「五山の送り火」がその代表格に当たる。

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2011年の五山の送り火
Sankei via Getty Images

ナスやキュウリにつまようじなどを刺して作る馬・牛型の人形「精霊馬(しょうりょううま)」を、お供え物として精霊棚に飾り付ける風習もある。

一方、祖先の霊を祭る宗教上の行事だけではなく、国民的な休暇としての側面もある。多くの企業で8月15日を中心に3〜5日間を夏季休業としており、夏休み(お盆休み)として広く浸透している。

全国的に墓参りするのが恒例とされている。

■お盆に墓参りする人「5人に1人」

とはいえ、実際にどのぐらいの人がお盆に帰省し、墓参りをしているのだろうか。お盆に関するこんなデータがある。

楽天リサーチの「山の日とお盆休みに関する調査」(2016年6月30日、全国の20代から60代の男女1000人を対象)によると、お盆休みに「お墓参り」をすると答えたのは、5人に1人で約20パーセント。

◇今年のお盆休みの予定について(全体)(n=1,000)複数選択 単位:%

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年代に比例して高くなる傾向があり、一番低かった30代では11%まで落ち込むなど、次のような結果が出ている。

60代(30.9%)、50代(20.8%)、40代(17.5%)、30代(11.1%)、20代(19.7%)

調査では、お盆休みにお墓参りをしない理由も聞いた。主な回答は多かった順に、お盆休み以外にお墓参りをしている(27.8%)、お墓が遠すぎる(13.2%)、お墓参りをする習慣がない(12.0%)だった。

◇お盆休みにお墓参りをしない理由について(n=798)複数選択 単位:%

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他の同様の調査でも、墓参りなど従来の「お盆」の過ごし方をする人は、2〜3割程度で、国民的な宗教行事としての意味合いは薄れつつある。

■ハロウィン、実は欧州の「お盆」?

同じ宗教上の行事で、ここ数年日本で盛り上がりを見せているのがハロウィンだ。渋谷、六本木などで大規模な仮装イベントが開催されるなど、若者を中心に定着し始めている。

2016年の当日は、渋谷のスクランブル交差点が歩行者天国になったほか、関連商品やサービスの市場規模が拡大するなど、社会的な影響も広がっている。

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楽天リサーチの調査によると、ハロウィンがどんなイベントが知っている(「正確に知っている」、「なんとなく知っている)と答えたのは82.8%で、認知度の高さが表れている。

ヨーロッパ発祥のハロウィン、実はお盆と似ている。

コトバンクによると、10月31日に行われる、古代ケルトが起源とされる祭りで、収穫を祝い悪霊を追い出す宗教的な行事。

古代ケルトの大みそかに当たる10月31日に、死んだ人の魂が家族の元に戻ると信じられており、かがり火を焚いた。また、11月1日はカトリック教会の祝日でもあり、協会でミサをし、墓参りに行く風習もある。ハロウィンはこの前夜祭に当たる。

現在では、本来の宗教的な意味合いは失われつつあり、アメリカでは子どもたちが近所を回ってお菓子もらったり、仮装したりするイベントとなっている。

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ハロウィンがアメリカなどでイベント化しているように、日本におけるお盆も、宗教的な行事であるという意識は時代とともに薄れている。

■働き方が変わればお盆も変わる?

お盆に帰省し、墓参りをするという習慣が失われつつあるのは、働き方の変化も影響している。

そもそもお盆休みのない業種が数多くある。

例えば、テレビや新聞などを中心としたメディアの多くは、365日稼働しているため、お盆が休みの人は一部に限られる。社会人6年目の私も、5年間の通信社勤務の中で、お盆が休みだったことは1度もない。

アパレルなどのサービス業はむしろ繁忙期で、役所や銀行でも、がんばって働いている人が少なくない。

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こうした職種の人たちは、お盆に勤務する代わりに、それぞれの社員が時期をずらして「夏休み」を取ることもある。

先ほどの楽天の調査では、お盆の過ごしかたの予定で最も多かった答えは「外出しない」(32.6%)で、その半数以上が混雑を理由にあげた。多くの人が一斉に休むため、ごみごみした街に出るのが嫌になってしまう。

日本人の休みをバラバラの日に「分散」させることは政治の場でも話し合われている。さらに、働きかたが多様化する中で、「お盆」の時期に社員が一斉に休むという昔ながらのスタイルをやめる会社も増えていくのではないだろうか。

働きかたと休みかたが、人それぞれになって、ハロウィンなど楽しくて新しい風習もどんどん入ってくる。

どちらも「良いこと」ではある。しかし、お盆は古くから日本にある、伝統的な行事だ。時代の変化で、何か大切なものも失われるのだろうか。

■関連画像集「日本のハロウィン【2016年】」

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