日米両政府は5月10日、アメリカのオバマ大統領が27日、安倍晋三首相と共に広島を訪問すると発表した。現職のアメリカ大統領が広島を訪問するのは初めて。平和記念公園を訪れ、原爆死没者慰霊碑に献花する予定。
アメリカ国内では、日本への原爆投下が戦争終結を早めたなどとして正当化する意見が根強くあるため、大統領の広島訪問については、反対する声も少なくなかった。しかし、オバマ氏らが「アメリカで大きな政治的反発を招くことはなく、戦争の犠牲者に哀悼の意を捧げることはできると自信を持っている」などと意欲を見せており、国家安全保障会議(NSC)もアメリカの世論が大統領の広島訪問を「前向き」に受け止めていると判断。ベン・ローズ大統領副補佐官はブログで、「大統領がこの都市を訪れるのに、適切な時期だと思う」などと綴った。ホワイトハウスは「オバマ大統領が続けてきた、核兵器のない平和で安全な世界を追求する取り組みを強調するため」としている。
各国メディアは、オバマ大統領の広島訪問を以下のように速報した。
■CNN「オバマ大統領の広島訪問は歴史的」
CNNはオバマ大統領の広島訪問は「歴史的」だとしたうえで、「アメリカ側は訪問で公式な謝罪はしないものの、オバマ大統領の訪問で、核兵器が恐ろしい破壊をもたらすということを再び思い出させるものになる」と報じた。
記事は、オバマ氏が核不拡散に努めているとしたうえで、日本は、ミサイル発射テストを続ける北朝鮮に最も近い国のひとつだと説明した。
さらに、オバマ氏が過去3回、日本を訪問していることも紹介。初回の2009年の訪問では、日本を去る際に、自分が大統領でいる間に、広島か長崎を訪問したいと述べたと伝えた。
■ワシントン・ポスト「ドナルド・トランプは日本に核を保有しろと言っている」
ワシントン・ポストは訪問について、「第2次世界大戦末期に、アメリカが原爆使用を決定したことを再考するためではない」とする、ベン・ローズ氏のブログを引用。大統領訪問は、「私たちが共有すべき未来についての、前向きなビジョンを示すでしょう」と、紹介した。
さらに、「ホワイトハウスは、オバマ氏が大統領就任時に掲げた核軍縮の目標のシンボル的なことをするのは、就任最後の年となった今だと確信している」と解説。「大統領選の候補者選びで共和党から指名されることが確実となっているドナルド・トランプ氏が、北朝鮮の脅威に対抗して日本に核兵器を持てと言っている今、オバマ氏の訪問は世界的な注目を集めることになる」とする、ホワイトハウス高官の言葉を伝えた。
■イギリス、フィナンシャル・タイムズ「共和党が批判することが困難」
フィナンシャル・タイムズは日米関係の専門家・ジェニファー・リンド氏の話として、共和党がオバマ大統領の広島訪問を批判することは困難だとの見方を伝えた。アジア地域で中国の軍事力を強化していることがその理由で、共和党も、同盟国との関係を強化する必要性があると認識しているのだという。
このためアメリカ側は、今回の訪問では日本と韓国の関係をより改善するよう働きかけるとしている。
■イギリス、BBC「永遠の誇りとなる」
BBCはアメリカの報道官が「歴史的訪問だ」と述べたと報じた。また、ローズ氏のブログを引用。訪問によってアメリカは、「私たち市民の、そして、第2次世界対戦で犠牲となった軍の男女の、永遠の誇りとなる」という一文を紹介した。
■フランス、AFP通信「地域的な反響を呼ぶ可能性」
AFP通信も北朝鮮の核弾頭とミサイル開発について言及。オバマ大統領の訪問が「地域的な反響を呼ぶ可能性」と報じた。北朝鮮の党大会についても触れ、同国が今後も兵器の開発を続けるという主張を紹介した。
■中国、新華社通信「日本は原爆が投下された背景に触れてこなかった」
NHKによると、中国国営の新華社通信は、原爆の投下が第2次世界大戦の終結を早めたと強調して報じた。
「広島と長崎への原爆投下は、侵略戦争をした日本をできるだけ早く降伏させるよう促したものだ」としたうえで、「日本は、みずからを第2次世界大戦の被害者だとして、原子爆弾が投下された歴史的背景にほとんど触れてこなかった」としています。
(オバマ大統領広島訪問へ 米国内や海外の反応 | NHKニュースより 2016/05/11 05:37)
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