オバマ大統領、シリア軍事介入を決断「目をつぶることはできない」

アメリカのオバマ大統領は8月31日、ホワイトハウスで声明を発表し、対シリア軍事行動を決断したことを明らかにした。軍事行動には議会の承認を求めるとも語った。具体的な行動開始時期は明言しなかった。
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アメリカのオバマ大統領は8月31日、ホワイトハウスで声明を発表し、対シリア軍事行動を決断したことを明らかにした。軍事行動には議会の承認を求める方針も示したが、これは極めて異例。休会中の米国議会は9月9日から再開するため、武力行使は9月中旬以降にずれこむ可能性が強まっている。47NEWSが伝えた。

NHKによると、この中で、オバマ大統領は「シリアで、アサド政権が化学兵器を使用し、女性や子どもなど1000人以上が虐殺された。アメリカの安全保障を危険にさらすだけでなく、イスラエルやトルコなど周辺国をも脅かすもので、目をつぶることはできない」と述べた。

そのうえで、オバマ大統領は「軍事行動に踏み切るべきだと決断した。地上部隊は派遣せず、短期間の限定的なものになるだろう」と述べた。ただ、「議会の承認が必要だ」と述べ、議会が再開される今月9日以降に、承認を求めていく考えを示した。

アメリカ議会は夏季休暇が明ける9月9日から軍事介入の是非を審議し、投票にかける見込み。そのため対シリア介入に踏み切る場合でも、攻撃開始は9月中旬以後にずれ込む公算となった

■ プーチン大統領「途方もないたわ言だ」

ロシアのプーチン大統領は31日、シリアのアサド政権による化学兵器使用を断定したアメリカに「証拠があるなら提示すべきだ」と迫り、軍事介入に向けた動きをけん制した。また9月5、6両日のサンクトペテルブルクでの20カ国・地域(G20)首脳会議時にオバマ大統領らとシリア問題を協議したい意向も示した

プーチン大統領はアメリカ政府の報告書公表を念頭に、シリアのアサド政権が化学兵器を使用したとの見方は「途方もないたわ言だ」と述べ、「シリア政府軍は攻勢に転じていた。しかも国連調査団が到着した日に(化学兵器が)使用された」と指摘。政権が使用したとの主張は「常識では道理に合わない」とし、報告書の信ぴょう性に疑問を投げ掛けた

■ 国連調査団がシリア出国、国連職員も国外退避

シリアでの化学兵器使用疑惑で、現地入りして検証作業をしていた国連調査団が31日、シリアを出国し、隣国レバノン経由でオランダに到着した

国連調査団が収集した証拠の最終分析結果は、用意が整うまでに2週間を要する可能性がある

また、シリアで活動していた国連関係の職員数十人が31日までに国外に退避した

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や国連児童基金(ユニセフ)などの外国人スタッフらで、中堅職員らの多くは29日に既に出国したという。

■ 首都ダマスカスから避難民大量流出

アメリカなどがシリアへの軍事行動に踏み切る構えを見せるなか、シリアの隣国レバノンの国境の検問所では、首都ダマスカスなどから大勢の人たちが避難してきている。

シリアとトルコの国境地帯にあるシリア側の検問所は、激しい戦闘が続く北部のアレッポから60キロあまり離れている。この検問所にもトルコに入国を求めるシリア人が大勢詰めかけているが、パスポートを持っていないため国境を越えてトルコ側に避難することができず、検問所周辺で避難生活を余儀なくされている。

NHKによると、家族でダマスカスから避難してきたという女性は、「アメリカの攻撃が始まると聞いて恐ろしくて逃げてきたんです。多くの人が攻撃を恐れています」と話していた。また、子ども3人を連れてレバノンに脱出した男性は「いまのシリアはどこから砲弾が飛んでくるか分からないし、誰が敵か味方かも分からない状況です。外国の介入でも何でもいいので、この内戦を止めてほしい」と話していた。

一方、避難してきた多くの人たちが「シリアには何の問題もなく、政権は盤石だ」と話しアサド政権を支持していたほか、政権による監視の目を恐れてテレビカメラによる取材を拒否する人も多く、首都ダマスカス周辺でアサド政権の影響力が今も大きいことがうかがえた。

■ アサド政権、軍施設に「人間の盾」?

産経新聞によると、ロイター通信は8月30日、シリアの反体制派側の話として、アサド政権が反政府運動に関わった市民や政権への忠誠が疑わしい兵士らを「人間の盾」として軍などの施設に抑留していると伝えた。

人権団体や脱走兵の話によると、複数の軍や情報機関の施設が民間人の「監獄」として使用されている。また、階級の低い兵士が反体制派と同じイスラム教スンニ派であることを理由にアラウィ派中心の軍上層部への忠誠を疑われ、基地からの退避を認められない事例もあるという。

トルコのイスタンブールに拠点を置く反体制派の統一組織「シリア国民連合」の報道官は「アサド政権はこの3日間で、多数の囚人を軍施設に、兵士を病院や学校に、それぞれ移動させている」と同様の動きを確認していることを明らかにした。アメリカ政府高官経験者は、これらの施設が攻撃を受けた場合「アサド政権が『罪のない人々が殺された』と主張する恐れがある」と述べた。

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