オバマ前大統領の「2017年に読んでよかった本リスト」 正月休みにあなたもどう?

オバマ氏は、小説の形式をとりつつも、社会問題に関するメッセージを内包した作品が好みのようだ。
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アメリカ前大統領のバラク・オバマ氏(撮影=2017年12月5日)
Kamil Krzaczynski / Reuters

アメリカのバラク・オバマ前大統領が1月1日(アメリカ時間2017年12月31日)、自身のFacebookページに「2017年に読んでよかった本」を投稿した。

オバマ氏は本好きで知られ、大統領在任中の2016年にはホワイトハウスの公式ブログで「夏に読んだ本リスト」が公開されていた。

今年のリストを下記に紹介する。リストを見てみると、小説の形式をとりつつも、社会問題に関するメッセージを内包した作品が好みのようだ。

あなたは何冊知っていただろうか。残念ながらすべて未邦訳だが、気になった本があれば、正月休みに挑戦してみては?(解説は筆者による)

"The Power" by Naomi Alderman

イギリスで出版されたSF小説。世界各地に突然、超能力をもった10代の少女が現れたことを端に発し、男性優位社会が揺らいでいくさまが描かれる。

2017年、女性作家による優れた作品に贈られるイギリスの小説賞「ベイリーズ賞」を受賞。作者のナオミ・アルダーマンは宗教や権力をテーマに活動してきた作家で、SF仕立ての作品はこれが初めて。

"Grant" by Ron Chernow

南北戦争で北軍の将軍として活躍し、その後第18代アメリカ大統領となったユリシーズ・グラントの伝記。

『アレグザンダー・ハミルトン伝』や『モルガン家』などの伝記作品を多く手がけてきたロン・チャーナウが、あまたのスキャンダルを起こし「アメリカ最悪の大統領」の一人とされることも多いグラントに対する誤解を解こうと筆をとった。

"Evicted: Poverty and Profit in the American City" by Matthew Desmond

ハーバード大学の社会学者マシュー・デズモンドによる、ウィスコンシン州ミルウォーキー市の最貧困地区で暮らした1年半の生活を描いたノンフィクション。"Evicted"は「住居の強制立ち退き」を意味する単語だ。

2017年のピューリッツァー賞を受賞した。ビル・ゲイツも2017年の読書リストに挙げている。

"Janesville: An American Story" by Amy Goldstein

ウィスコンシン州ジェーンズビルにおけるGM(ゼネラル・モーターズ)の工場閉鎖、そしてそこで働いていた人々の苦悩を通じて、アメリカの労働者階級が陥っている現状を描写する。

ワシントン・ポスト紙のベテラン記者でありピューリッツァー賞受賞歴もあるエイミー・ゴールドスタイン氏の処女作。

"Exit West" by Mohsin Hamid

移民や難民であふれる名もなき街で暮らしていたカップル。彼らが住んでいた街でテロが発生し、人々はドローンの監視下に置かれ、暴動が起こる。そして、ふたりは脱出を余儀なくされる。

自らもパキスタン生まれの作家モーシン・ハミッドが、国際的ベストセラーになり映画化もされた『コウモリの見た夢』(映画の邦題は『ミッシング・ポイント』)に続き、若者の視線を通じてテロや現代社会を描いた。

"Five-Carat Soul" by James McBride

ジャズミュージシャンであり著名なアメリカ人作家でもあるジェームズ・マクブライドの小説。4つのストーリーからなるが、そのストーリーはある仕掛けで相互連関している。

ヴィンテージおもちゃのセールスマン、アフリカ系アメリカ人向けの孤児院に住み、父親をリンカーンだと信じる男の子...魅力的なキャラクターを通じて、人種や戦争、歴史などの問題を洒脱に表現している。

"Anything Is Possible" by Elizabeth Strout

ピューリッツァー賞作家エリザベス・ストラウトの前作『My Name Is Lucy Barton』(『私の名前はルーシー・バートン』として早川書房から翻訳が出版されている)の姉妹篇ともいうべき、9編の短編小説集。

前作に「噂話」の登場人物として現れた年齢も性別もバラバラな主人公たちが、人生に傷つき、癒される瞬間を緻密な筆致で描き出す。

"Dying: A Memoir" by Cory Taylor

メラノーマという皮膚がんとその脳転移を宣告されたオーストラリアの女性作家コーリー・テイラーが、死の直前に最後の作品として遺した、彼女の闘病経験や人生について綴った自伝。

出版以来、同じくがんと闘う読者の強い支えになったという声が世界中であがっているほか、一般読者にも死や生を考えさせる作品として評価されている。

"A Gentleman in Moscow" by Amor Towles

ロシア革命後、高級ホテルの一室で暮らし、外に出ることを禁じられる「軟禁」刑を受けた貴族がいた。彼が過ごした32年間のホテル生活と、そこで貫いたジェントルマンの規範を描いた小説。

この作品が2作目となる作家エイモア・タウルズは、投資の専門家としてウォール街で活躍した人物だ。恋愛・歴史・サスペンスなどの要素を兼ね備え、2016年に出版されると、2017年もベストセラーチャートに長く残り続けるロングヒットとなった。

"Sing, Unburied, Sing" by Jesmyn Ward

白人と黒人との間に生まれた少年ジョジョを主人公に、囚獄されている父親、常に葛藤を抱えドラッグを使う母親などの状況や、母親とともに父親との生活から逃げた先で出会った幽霊との語らいなどを通じて、家族の問題や暴力、愛、ひいては現代社会などを書いている。

ジェスミン・ワードが書いたこの小説は、詩的な文体もあって高い評価を受け、全米図書賞の小説部門で受賞した。

"Coach Wooden and Me" by Kareem Abdul-Jabbar

NBAで活躍した名選手、カリーム・アブドゥル=ジャバーが、出身校であるUCLAのコーチだったジョン・ウッデンとの50年に及ぶ交流を軸に執筆した自伝。

ウッデン自身もアメリカの大学バスケットボール史に残る名コーチとして知られるだけに、バスケファンの中で大きな話題となった。

"Basketball (and Other Things)" by Shea Serrano

NBA史上最高のダンクシュートの名手は誰か?マイケル・ジョーダンはいつが全盛期か?

ファンの間で発議すればケンカになりそうなテーマたちを、作者シー・セラーノの丹念な調査と軽快な筆致、そして楽しいイラストとともに料理する本。発売後、「10代の子供に読ませたらハマっていた」などのレビューが続出している。