イギリスに続き、アメリカでもファイザーとビオンテックが開発した新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が始まった。
ワクチンの必要性を伝えるため、最初に接種した医療従事者らが自らの接種の様子を公開したが、看護師の1人が倒れたことでインターネット上にはワクチンの安全性を危惧する声も投稿された。
しかし、これはワクチンの副作用によるものではなかった。倒れた本人が説明した。
痛みで倒れることがある
気分が悪くなって倒れたのは、17日に接種を受けたテネシー州チャタヌーガにあるCHIメモリアル病院の看護師、ティファニー・ドーバー氏だ。
ドーバー氏はワクチン接種後、記者のインタビューに答えている最中に「すみません、ちょっとめまいが」と述べてその場に倒れこみ、近くにいた医師に支えられた。
この部分だけを切り取った動画がネット上で拡散され、反ワクチンを掲げる個人らが拡散。「ワクチンは安全なはずではなかったのか」「なぜ接種を受けるのか」といったワクチン批判が起きた。
しかし、その場に居合わせた地元テレビ局WTVCの記者によると、ドーバー氏はすぐに回復して立ち上がり、レポーターと話をした。
ドーバー氏によると、めまいを感じて倒れたのは「血管迷走神経反射」と呼ばれる症状のせいで、ドーバー氏はこれまでにささくれのような痛みで何度も気を失ったことがあるという。
「これまでも血管迷走神経反射を経験してきました。ささくれや足先を突き刺してしまった時など、痛みを感じた時に気を失うんです」と説明している。
<倒れた後に質問に答えるドーバー氏>
日本救急医学会によると、血管迷走神経反射は「刺激が迷走神経求心枝を介して脳幹血管運動中枢を刺激し、心拍数の低下や血管拡張による血圧低下などをきたす生理的反応」だ。
針をさすことで迷走神経が刺激されて、血圧低下や気分不良、失神などが起きる人もいる、と日本赤十字社は説明している。
痛みを感じてめまいがしたり気分が悪くなり倒れることは、ドーバー氏にとって珍しいことではなく、「この6週間のうちに6回くらい気を失っています。よく起きることなんです」と同氏は話している。
CDC(アメリカ疾病対策センター)のウェブサイトには、約3%の男性と3.5%の女性が、一生のうちに一回はめまいや失神を経験したことがあると説明されている。
CHIメモリアル病院のジェッシー・タッカー医師も、血管迷走神経反射は「どんなワクチンや注射でもよく起きること」で「新型コロナワクチンによるものではと心配する必要はない」と話す。
ドーバー氏と同じように痛みによってめまいや失神を経験したことがある人には、ワクチン接種後に10分間椅子に座って安静にしておくことをタッカー氏は勧めている。
ドーバー氏の症状はワクチンによるものではないと考えられるが、これまでに新型コロナワクチンを接種した後に強いアレルギー反応が出た人たちもいる。
そのためCDCは、過去にアレルギーの症状が出たことがある人も、接種後しばらくその場にとどまって経過を観察するよう勧めている。