「震災前から働く原発作業員の方々が抱える問題」:福島第一原子力発電所の廃炉に取り組む作業員の方々についての理解(その2)

福島第一原発の早期廃炉は一地方の課題ではありません。日本の課題です。それゆえ彼らを社会全体が支えることが必要です。社会が彼らを支えるには、彼らが個人で解決することの出来ない問題を知り、解決へ働きかけることが必要です。
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時事通信社

※記事には福島県の地域名、避難状況に関する記述が出てきます。

 過去の投稿にまとめてありますので参照ください。

震災以前から働く作業員の方々が抱える共通の問題を列挙します。

■震災前から働く作業員の方々が抱える問題

(1)原発事故直後から復旧にあたった為被爆線量が高い

(2)生活の拠点を双葉郡においていた方が多く原発事故の被災者

(3)原子力産業で働くことで偏見を受けている

(4)業務内容が点検業で主体であったため、震災後ほとんど仕事がない。

 初期被爆線量の高さは健康不安へと繋がっています、ですが彼らにとっては積算線量が5年間で100mSvに達した場合、現場に入ることができないことが身近な問題になっています。これは職を失う事態に繋がるケースもありますし、廃炉を支える熟練者が仕事を続けられなくなる事態にもつながっています。

 生活の拠点が原発事故により避難区域となりました。現在は仮設住宅や民間仮上げ住宅(みなし仮設)から通勤されています。震災後の混乱により通勤に適した場所に住まわれていません。通勤に2時間、3時間は当たり前になっています。

 原子力事故への批判は原子力産業批判へと繋がり、そこで働く人達への偏見へと繋がっています。自身の職業を隠す方もいらっしゃいます。「底辺労働者」といった誤ったイメージもあります。

 震災後の廃炉作業では点検業が震災以前に比べ激減しました。そこへ追い討ちをかけるように現場へのコストダウンもひかれています。点検業を失った彼らは、現在の廃炉作業を行う方々の放射能スクリーニングや、避難区域に入域される方々への対応業務などを行っています。震災前に比べ所属する会社の経営は厳しくなっています。

震災当時、世界中が固唾を飲んで見守っていた「福島原発作業員」の方の現在の実情(悩み)です。生活の場を失い、生計を立てる職そのものが否定され将来を設計するにも仕事が激減している。原子力産業を辞めていくには十分な内容です。

そしてこれらは彼らの個人の努力では解決することができません。

 廃炉への道のりはスタートを切ったばかりです。現在においては原子炉中枢へのアプローチが確立もされてもいない状況です。

現在の廃炉作業は建設業が主体となっています。ですが建設業が落ち着いた先には設備の保守管理を行う「震災前から働く方々」が必要になります。

また現在起きているトラブルの多くはヒューマンエラーが原因です。ヒューマンエラーは長い安全教育の元培われた安全意識により防がれるものです。

彼らは原子力産業を支えるため長年働かれていました。それ故、放射能を扱うための知識、技術、安全管理に長けた方々です。

無用なトラブルを防ぎ、廃炉を早期に達成するために「保護されていく必要がある方々」と言えます。

 福島第一原発の早期廃炉は一地方の課題ではありません。日本の課題です。それゆえ彼らを社会全体が支えることが必要です。

 社会が彼らを支えるには、彼らが個人で解決することの出来ない問題を知り、解決へ働きかけることが必要です。